2021年07月19日号

(2021年07月12日~2021年07月16日)

先週の為替相場

振幅を見せる展開に

 7月12日からの週、ドル円は振幅を見せる展開となった。

 13日発表の米消費者物価指数(CPI)は連邦準備制度理事会(FRB)による早期テーパリング(金融緩和の段階的縮小)観測に影響する材料として注目された。6月の上昇率は前年比5.4%(5月は5.0%)と事前予想(4.9%)に反して上昇。変動の激しい食品・エネルギーを除いた「コア」も予想や前回値を超える4.5%とかなり強く、物価上昇の加速を受けて週半ばまではドル高が優勢だった。やや低調だった米30年債入札結果が米長期債利回りを押し上げ、ドル買いを強めた面もある。

 ドル円は110円70銭前後まで上値を伸ばした後、一転してドル売りが強まった。14、15日の半期議会証言でパウエルFRB議長は「さらなる重要な進展はまだ先」「最大雇用までの道のりは長い」などと金融緩和の長期化を示唆。物価について向こう数カ月は高いが、その後は穏やかになる可能性が高いとして、現状の高インフレを一時的なものとする従来の認識を維持した。

 直近の物価上昇や地区連銀総裁などを中心とした「タカ派」シフトの中、パウエル議長も金融引き締めに前向きな姿勢を示すと一部で期待されたが、議長は慎重姿勢を継続。早期テーパリング期待は後退し、ドル売りを誘った。

 米10年債利回りが節目の1.3%を下回る中でドル売りの流れが強まり、ドル円は一時109円70銭台まで値を落とした。

 その後、110円00銭を挟んでの振幅を経て、16日発表の米小売売上高の好結果を受けて110円30銭台までドルが値を戻す場面も見られた。しかし、同日のミシガン大学消費者信頼感指数(用語説明1)が予想を大きく下回ると、ドルは110円00銭台まで軟化した。

 米消費者物価指数(CPI)発表後のドル高もあり、ユーロドルは1.18台後半から1.1770割れまで値を落とした。その後は値を戻し、1.18台半ばを付けた。週末にかけては1.18ちょうど前後で推移した。

 その他通貨ではNZドルの動きが目立った。14日のNZ中銀金融理事会では、大規模資産購入プログラム(LSAP・用語説明2)での追加購入を23日までに停止すると発表。NZ中銀による利上げ時期の市場予想は、直近の消費者物価指数の高さから2022年中から今年11月へ前倒しされていたが、今回の発表を受けて最速今年8月へさらに前倒しされ、NZドル買いが広がった。

 NZドルは0.6910台から0.7040まで上値を伸ばした後は0.70を挟んで高値圏で推移した。

今週の見通し

 ドル円は次の方向性を探る展開に。コロナ変異株感染の拡大を受けた世界的なリスク警戒の動きやパウエル米FRB議長のハト派姿勢維持などを受けて、市場の早期テーパリング期待が後退。これまでのドル高の流れに調整が入った。

 ただ、ドルが下がると買いが入る流れは継続した。米景気は力強い回復傾向にあり、中期的なドル買い基調が続いている。今週から本格化する米主要企業の第2四半期決算も力強い内容が期待されており、ドルを支える材料となりそうだ。

 ドル円は次の方向性を探る展開が予想される。目先のサポートラインである109円台半ばを割り込むと、もう一段のドル売りが出る可能性はあるが、109円00銭手前では買いが入る流れか。

 ドル高方向は110円台半ばから111円にかけての水準が重い。

 米企業の決算や米国債利回りなどをにらみながら、次の方向性を見極める展開が予想される。

 欧州中央銀行(ECB)理事会を受けたユーロドルの動きも大きなポイントになりそうだ。ECBは7月、18年ぶりに金融政策の戦略点検を発表し、インフレ目標の引き上げなどを示した。戦略点検の結果発表後で初となる理事会では、金融引き締めに対して慎重な姿勢の維持が見込まれている。

 ただ、新型コロナの感染拡大が比較的抑えられているドイツなど物価上昇を警戒してタカ派的な姿勢を示す加盟国もあり、足並みはそろっていない。ECBに出口戦略への動きが見られると、ユーロ買いドル売りからドル安が進む可能性がある。

用語の解説

ミシガン大学消費者信頼感指数 ミシガン大学のサーベイリサーチセンターによる消費者マインドに関するアンケート調査を基にした指標。全体の約40%を占める現況指数と、約60%を占める期待指数で構成する。調査対象は速報値が300人、確報値が500人。同様の指標であるコンファレンスボード消費者信頼感指数の5000人などと比べるとかなり少ないが、発表が早く速報性があるため注目を集めている。
大規模資産購入プログラム 大規模資産購入プログラム(LSAP: Large Scale Asset Purchase programme)は、NZ中銀がパンデミック対応として2020年3月に当初300億NZドル規模で導入を開始した量的緩和策。同年5月に600億NZドル、同11月に1000億NZドルに拡大された。利上げを実施する前に、こうした量的緩和策について調整する必要があるため、早期利上げ期待の強いNZでは、大規模資産購入プログラムの終了時期が注目されていた。

今週の注目指標

ECB理事会
7月22日
20:45
☆☆☆
 6日に約18年ぶりとなる金融政策戦略の見直しを発表したECB。これまで「2%を下回るがそれに近い水準」としていたインフレ目標を2%に引き上げた。一時的な物価上昇率の上振れを容認したことで、当面は超緩和的な金融政策の維持が可能になった。今回の理事会では政策金利やコロナ対応のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)は現状維持が濃厚(購入ペースについては市場流動性が8月に低下するため、減額の可能性)。ECB声明文でも緩和姿勢の維持が示されるとみられる。米国の早期テーパリング期待も一服する中で、米欧どちらが先にテーパリングに向かうかは、今後の相場の流れを決める重要なファクターとなる。ドイツなどのタカ派姿勢が影響し、前向きな姿勢が強く見えるようだとユーロ買いも。ユーロドルは1.18台半ばを目指す可能性。
米新規失業保険申請件数(7月11日~17日)
7月22日
21:30
☆☆
 米国のテーパリング開始のカギを握るということもあり、米労働市場への注目度がいつも以上に高まっている。毎週木曜日に発表される新規失業保険申請件数の中でも、雇用統計と調査期間のかぶる12日を含む週の数字は特に注目度が高い。予想は35万件と、36万件まで低下した前回をさらに下回る好結果が見込まれる。予想通りもしくはそれ以下の好結果が見られると米雇用市場への期待感につながり、ドル買い円売りに。ドル円は110円台後半を試す動きも予想される。
ユーロ圏製造業PMI(7月)
7月23日17:00
☆☆☆
 23日にユーロ圏及び加盟主要国の製造業・非製造業PMI速報値が発表される。非製造業のPMIは製造業に比べて回復が鈍いが、ワクチン接種の拡大からユーロ圏、独、仏いずれも改善する見込み。製造業はすでにかなりの水準まで回復済みということもあり、ユーロ圏などでやや鈍化する可能性はあるが、水準的にはしっかりとした数字が見込まれる。米英や新興国などに比べてコロナ変異株の影響が穏やかな国は多いが、警戒感は出てきている。予想ほど強い数字にならなかった場合、いったんユーロが大きく売られ、ユーロドルは1.16台を試す可能性もある。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。