2021年07月26日号
先週の為替相場
当初のドル売りから一転してドル買いに
7月19日からの週、ドル円は前半のドル売りから一転してドル買い円売りが優勢な展開となった。
先週初めはリスク警戒感から円買いが優勢だった。デルタ変異株による新型コロナ感染拡大が広がり、世界的な景気回復ムードを後退させるとの懸念が警戒感につながった。
16日の米ミシガン大学消費者信頼感指数の弱い結果を受けたドル売り円買いの流れが継続する形でドル円は値を落とした。株価下落に加え、リスク回避から安全資産とされる米長期債に資金が流入して米長期債利回りが低下(債券価格が上昇)。米10年債利回りが1.20%を割り込む動きを見せる中、109円10銭前後までドル売り円買いが進んだ。
ドルは安値から少し値を戻した後、もみ合いを経て週半ば以降はドル買い円売りが優勢となった。米国株高などがリスク警戒感の後退を誘った。
ドル円は先々週末も意識された110円40銭前後の上値抵抗水準手前でいったん頭を抑えられたが、米企業の好決算などを受けて株高が進む中で110円台半ば超えまで上値を伸ばして週の取引を終えた。
欧州中央銀行(ECB)理事会は事前予想通り金融政策の現状維持を決定。「政策戦略」見直し後で初の理事会でガイダンス(指針)変更が注目された。ガイダンスは「見通しが進展を示すまで金利は現状かそれを下回る水準。行動のかなり前にインフレ見通しが2%に達している必要ある」と、事前予想通り緩和策の長期化を示唆するハト派的な内容だった。具体性に欠けるとの見方から発表後はユーロが1.1790前後から1.1830前後まで買われた後、1.1750台へ値を落とすなど、ハト派姿勢を意識したユーロ売りが優勢となった。
その後は週末まで1.17台後半で推移し、ユーロはやや頭の重い展開が続いた。
その他目立ったのは週前半の豪ドルの売り。対ドルで先々週末の0.7450手前から豪ドル売りドル買いの流れが強まり、0.7290割れまで一時値を落とした。豪ドル円に至っては82円手前から一時79円80銭台まで値を落とした。シドニーなどでのロックダウン延長(用語説明1)を受けて、豪景気の回復に対する警戒感が広がった。また、テーパリング(金融緩和の段階的縮小)開始が従来見通しより後ずれするとの思惑が広がったことに加え、金融緩和強化の可能性があるのではとの思惑が豪ドル売りにつながった。
もっとも週後半にかけては世界的な株高からリスク警戒感が後退し、豪ドルも対ドル対円でともに値を戻し、豪ドル円は81円台後半を付ける動きに。
今週の見通し
ドル円は早期のテーパリング期待が後退した後も底堅い展開が続いている。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、声明やFOMC後のパウエルFRB議長会見で慎重姿勢が強調される可能性が高い。カンザスシティ連銀(用語説明2)が来月26日から28日に開催する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でテーパリング開始を示唆するとの期待が市場に根強いが、今回のFOMC声明やパウエル議長会見の姿勢次第では期待が大きく後退しそう。
ただ、物価上昇に対する一部メンバーの警戒感もかなり強い。FOMCは多数決による合議制とはいえ、議長提案が否決されたことは歴史上一度もない。議長の姿勢が議論にかなり大きな影響を与えるため慎重姿勢でのFOMCメンバーの協調が見込まれているが、物価上昇への対応にある程度配慮する形となる可能性もある。
29日に発表される米第2四半期GDPが相当強い数字になると見込まれていることもあり、ドル買いの流れが強まる可能性もある。この場合、短期ではなくある程度の期間の上昇トレンドが始まることも意識される。
先週22日のドル売り局面で110円台を維持したことも買いが入りやすい流れにつながりそうだ。ただ、イベントが多いだけに、逆に行くリスクも大きい。パウエルFRB議長が慎重姿勢を強調し、FOMC声明でテーパリングに前向きな姿勢が見られず、翌日のGDPが予想を下回るなど弱い材料が続くと、ドル売りが一気に進む可能性も。
上方向のターゲットは111円台半ば。中期的にもう一段上を試す可能性がある。下方向は110円を下回ると109円ちょうどを試す可能性もある。
用語の解説
シドニーのロックダウン | 豪州最大の都市シドニーを含むニューサウスウェールズ州は、6月26日から生活必需品購入など一部の例外を除いた外出禁止などロックダウンを実施した。シドニー全域でのロックダウンは昨年12月以来。当初2週間の予定だったが、新規感染が収まらないため、その後も延長されている。豪州では当初主力として予定していたアストラゼネカ製ワクチンの利用を血栓症のリスクから60歳以上に制限したこともあり、全体の接種が22日時点で約12%とかなり遅れており、ロックダウンのさらなる延期が見込まれている。 |
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カンザスシティ連銀 | 米国の中央銀行システムであるFRS(連邦準備制度)は、米国を12地区に分けて各地区の連邦準備銀行が(NY連銀が対応する公開市場操作などの金融政策オペレーションを除く)中央銀行業務を行う。カンザスシティ連銀は第10地区を担当している。担当地域はコロラド、カンザス、ネブラスカ、オクラホマ、ワイオミング、ニューメキシコの各州とミズーリ州の一部。本店はミズーリ州カンザスシティにある。 |
今週の注目指標
米連邦公開市場委員会(FOMC) 7月29日 03:00 ☆☆☆ | 前回6月のFOMCで公表された参加メンバーによる政策金利見通しでは、2023年末までに2回の利上げが中央値だった。また2022年中の利上げを見込むメンバーも増えるなど、利上げに前向きなタカ派姿勢が目立っていた。市場はこの結果を受けて利上げの前に行われるテーパリングの早期開始期待を強めていたが、今月行われたパウエルFRB議長の議会証言において、慎重姿勢が維持されたことで期待感が後退した。今回のFOMCでも慎重姿勢が強調される可能性が高い。ただ、物価上昇が顕著なため、タカ派のメンバーからの突き上げは厳しいものとなる可能性がある。FOMC声明やFRB議長会見を受けて8月のジャクソンホール会議でのテーパリング開始示唆期待が後退するようだとドル売りに、期待が残るようだとドル買いの材料になる。ドル売りにつながる可能性がやや高そうで、ドル円は110円割れトライも。 |
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米第2四半期GDP速報値 7月29日 21:30 ☆☆ | ワクチン接種の進展や行動制限の緩和を受けて、米第2四半期GDPは前期比年率+6.4%となった第1四半期GDPを超える伸びが期待されている。第1四半期に前期比年率+11.4%と伸びた個人消費は、今回も2けたの伸びが期待されており、GDP全体を支えるだろう。設備投資も伸びが期待されており、GDPの事前予想は+8.5%。GDPの規模としては新型コロナ前の水準を回復する見込みで、事前予想通りかそれ以上の成長率ならドル買いに対する安心感につながり、ドル円は111円台を試す動きも。 |
米PCEデフレータ(6月) 7月30日21:30 ☆☆☆ | パウエル米FRB議長はインフレが一時的なものである可能性が高いとして、直近の物価上昇をそれほど重視しない姿勢を示しているが、地区連銀総裁などを中心に物価高を警戒する動きが広がっている。13日に発表された6月の米消費者物価指数は前年比+5.4%、食品とエネルギーを除いたコアの前年比が+4.5%と、ともに予想を超えるかなりの高水準だった。インフレ目標の対象であるPCEデフレータも前年比+4.0%、コア前年比+3.7%と予想され、インフレ目標の2%をはるかに超える水準が見込まれている。地区連銀総裁などからの警戒姿勢が強まる可能性が高く、FOMC内で早期テーパリングへの圧力が強まる可能性がある。事前予想通りかそれ以上でドル買い材料となり、ドル円は111円台に向けた動きも予想される。 |
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