2021年08月02日号

(2021年07月26日~2021年07月30日)

先週の為替相場

FOMC受けてドル売り強まる

 7月26日からの週はドル売りが優勢だった。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場の事前予想通り政策金利と量的緩和の現状維持を決定。声明文で「経済は資産購入ペース縮小基準の目標に向け進展」とテーパリング(金融緩和の段階的縮小)に前向きな姿勢が見られ、いったんドル買いが入る場面もあった。しかし、今後にわたって議論は続くとしてテーパリングを急がない姿勢も並列されたことから、ドルの上昇は続かなかった。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、インフレは一時的なものとの見解を繰り返し、デルタ変異株による新型コロナウイルス感染拡大にも警戒感を示すなど慎重姿勢が目立った。これらを受けてドル売りが広がり、対円で109円30銭台まで値を落とす場面があった。

 FOMCを前に先週前半からドル売り円買い。中国当局の規制強化を嫌気した香港株の連日の大幅安がリスク警戒の円買いにつながった面もある。

 決算動向などを受けた欧米株安もあり、ドルは対円で週初の110円40銭台から109円50銭台まで下落。その後はFOMCを前にしたポジション調整もあって値を戻し、FOMC声明でのテーパリングに前向きな姿勢から110円台を回復した。しかし、週後半にかけて109円30銭台まで一時値を落とした。

 週末を前にしたポジション調整もあり、その後はいったん値を戻し、ドル円は109円台後半で週の取引を終えた。

 ドルは対ドル以外でも売りが目立ち、ユーロは対ドルで一時1.19台を回復。週前半は株安を受けたリスク警戒での円買いもあってユーロは対円で上値が重く、ユーロドルも1.1800を挟んでの振幅となっていた。FOMC後にドル売りが強まると、ポイントとなっていた1.1850を超えて上値トライの勢いが強まり、金曜日ロンドン市場午前に1.19台まで上昇した。

 週末を前にドル売りに調整が入って1.1850台を付けるなど、上昇は一服したが、下値はしっかり。

今週の見通し

 今週は目白押しで続く重要指標の結果次第の面が強い。米国関連では、2日のISM製造業景気指数(7月)(用語説明1)、4日の同非製造業景気指数(7月)、6日の米雇用統計(7月)の注目度が特に高い。

 ISMは前回、製造業・非製造業ともに事前予想を下回った。ともに雇用部門が好悪判断の基準となる50を下回り、全体を押し下げた形。ただ、雇用自体はその後も伸びており、今回は前回よりもしっかりとした数字が期待されている。

 6日は米雇用統計が発表される。前回は非農業部門雇用者数(NFP)が85万人と事前予想の+72万人を大きく上回った。ワクチン接種による行動制限緩和で、小売りやレジャー&ホスピタリティ(劇場・カジノなどの娯楽部門、ホテルなどの宿泊部門、レストラン・バーなどの飲食部門からなるグループ)などが伸びたほか、学校の対面授業再開で教育やヘルスケア部門が上昇。バイデン政権の積極的な景気対策もあり、政府部門、中でも連邦政府(国防除く)部門が大きく伸びて全体を押し上げた。

 カリフォルニア州とNY州という人口の多い2州で前回の調査期間終了後、ほとんどの行動制限が解除された。今回も小売業やレジャー&ホスピタリティといった部門のさらなる雇用増が見込まれる。

 レジャー&ホスピタリティの中でも前回特に雇用が伸びた外食部門(前月比+19.43万人)はここ5か月連続で10万人を超える伸びを示している。パンデミック前と比べると依然として130万人以上雇用が少なく、今回さらに大きく伸びる余地は十分にあるとみられる。

 こうした状況を受けて、事前予想は+90.0万人と前回以上の伸びが期待されている。予想通りかそれ以上の強い伸びが示されるとドルが買われるだろう。特に100万人を超える大きな伸びだと、ドル円は111円に向けた動きを強めると期待される。

 懸念材料がないわけではない。一つが新型コロナ変異株の感染拡大。米国の1日の新規感染者数は一時30万人を超えた1月初めがピーク。その後はワクチン接種の進展もあって、6月ごろには1万人を割り込む日があり、7日間平均でも1.1万人程度まで新規感染者の伸びが弱まっていた。しかし、7月後半には新規感染者が1日10万人超えを記録する日があり、7日間平均でも6万人を上回るなど一時の5倍以上の感染者が記録されている。ワクチンの効果で死亡者数が低下傾向を続けていることもあり、すぐに厳しい行動制限再開とはならない見込みだが、カリフォルニア州の主要都市ロスアンジェルスで、室内のマスクを着用が再び義務化されるなど制限強化の動きが広がっており、雇用にも悪影響が見込まれる。

 サプライチェーン(部品供給網)問題も懸念材料だ。前回6月の雇用統計では、半導体不足で部品供給に支障が出ている自動車製造部門で雇用が減少していた。今回こうした動きが他業種にも広がっているようだと、雇用は事前予想ほど回復しない可能性ある。雇用者数の伸びが事前予想を下回った場合、ドルは対円で109円割れも視野に入ってくる。

 米国以外では5日の英中銀金融政策理事会(MPC)が注目される。今回は結果と議事要旨の発表に加え、四半期金融政策報告と総裁会見が重なる「スーパーサーズデー」にあたっている。金融政策は現状維持が見込まれるが、物価上昇を受けてMPC委員の一部は早期の引き締めを求めており、警戒が必要だろう。早期の引き締め期待が強まるようだとポンド買いも予想される。ただ、前回まで債券購入プログラムの最大枠減額を求めていたホールデン・チーフエコノミストが任期満了で退任。今回は全会一致での据え置きとなる可能性がある。この場合はポンドが売られ、対ドルで1.38割れが意識されるだろう。

用語の解説

ISM製造業景気指数 全米供給管理協会(Institute of Supply Management :ISM)が300を超える製造業に対して、新規受注、生産、雇用、入荷状況、在庫などの項目に対するアンケート調査を行い、その結果をもとに発表している指標。翌月の第1営業日に製造業、第3営業日に非製造業の景気指数が発表される。好悪判断の基準は50で、同水準を超えると拡大、割り込むと縮小と判断される。
MPC委員 英中銀(BOE)の金融政策を決定するMPC(Monetary Policy Committee:金融政策会合)のメンバー。英中銀総裁、副総裁を含む内部委員5名と外部委員4名の9名から構成される。内部委員であるチーフエコノミストを除く8名は財務省が指名する。チーフエコノミストは英中銀総裁が指名する。前チーフエコノミストのホールデン氏が前回会合後に任期満了で退任しており、新任者がまだ選ばれていないため、現在は8名。投票が同数となった場合、中銀総裁が決定権を持つ。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(7月)
8月2日
23:00
☆☆☆
 前回6月のISM景気指数は製造業・非製造業ともに事前予想を下回った。雇用指数が好悪判断の基準となる50を下回る弱い結果となり、全体を押し下げた。製造業の雇用は49.9と昨年11月以来の50割れ。サプライチェーン問題が深刻化している状況を印象付けた。その他の内訳を見ると仕入価格が92.1と過去最高を更新。物価の上昇傾向が確認された。
 今回は60.9と前回の60.6から小幅上昇の見込み。水準的にも60超えを維持して堅調な動きが見込まれている。ただ、新型コロナ感染の拡大が広がる中で、企業景況感が予想以上に悪化しているケースに要注意。事前予想や節目の60を下回るとドル売りが強まる可能性も。ドル円は109円割れトライも。
英中銀金融政策会合(MPC)
8月5日
20:00
☆☆☆
 今回のMPCは結果及び議事要旨に加え四半期金融政策報告も表され、総裁が記者会見するいわゆる「スーパーサーズデー」。政策変更を実施しやすい回だが、政策金利や量的緩和は現状維持が見込まれる。英国の消費者物価指数は最新6月が前年比+2.5%とインフレ目標の+2.0%を超えてきており、通常であれば金融緩和策の後退観測が強まる。ただ、新型コロナ変異株の感染拡大が広がっており、いったん現状で様子を見たいという思惑が強い。ただ、一部委員からは量的緩和の縮小などの金融引き締めを早期に行うべきだと主張が見られる。前回まで量的緩和縮小に票を入れていたホールデン・チーフエコノミストが退任した後のMPCで、他の委員から縮小票が入るかどうかが注目される。緩和姿勢の後退が見られるようだとポンドが買われ、ポンドドルは1.40を目指す動きも予想される。
米雇用統計(7月)
8月6日21:30
☆☆☆
 米国のテーパリング開始時期を見極めるうえでも注目度が高い米雇用統計。前回6月分は非農業部門雇用者数が事前予想の前月比+72万人を大きく上回る前月比+85万人を記録。失業率は5.9%と事前予想の5.6%を上回ったものの、全体に好結果という印象が強かった。非農業部門雇用者数の内訳を見ると、小売業、レジャー&ホスピタリティなどの雇用が伸びており、コロナの打撃から回復してきた状況が印象付けられた。こうした状況は7月にさらに強まると期待されており、今回の事前予想は+90.0万人とさらに強い数字が期待されている。予想通りかそれ以上の好結果が出てくると、市場の早期テーパリング期待の高まりがドル買いにつながりそうだ。対円で1ドル110円台をしっかりと回復する動きが期待される。

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