2021年08月23日号

(2021年08月16日~2021年08月20日)

先週の為替相場

ドル円は下げ一服も、戻りも慎重

 8月16日からの週、序盤にドル売り円買いの動きが強まったが、その後買い戻しが入る展開。もっとも上値では売りが出て、上下ともにやや慎重な動きを見せた。

 13日のミシガン大学消費者信頼感指数が予想を大きく下回り、パンデミック直後の最低水準をも下回る約10年ぶりの弱い数字を示したことでドル売りが進み、週明けもドル円は頭の重い展開となった。デルタ株による新型コロナ染拡大が米国でも深刻化しているが、重症者数や死亡者数が1月のピーク時に比べて少ないこともあり、行動制限の再強化は目立っていない。今月発表された米雇用統計など米国の重要指標に感染拡大の影響は大きく出ていないこともあり、市場に楽観論が広がっていた。

 しかし、ミシガン大学消費者信頼感指数の弱い結果を受けて、消費者マインドの悪化を改めて認識。早期のテーパリング(金融緩和の段階的縮小)開始期待が後退し、ドル売りが一時強まり、16日海外市場で109円11銭前後までドルが値を落とす動きに。

 その後安値圏でのもみ合いを経て、週後半にかけてドル買いが優勢だった。18日の海外市場でいったん110円台を回復。7月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、早期のテーパリング開始に向けた明確な方向性が見られなかったことで、109円70銭台まで一時調整したが、翌日に110円20銭台まで上値を伸ばすなど、ドル高の勢いを感じさせる展開となった。

 しかし、新型コロナの感染拡大が世界的に広がる中、需要減退懸念などからNY原油安が進行。米国をはじめとする世界の株式市場も軟調地合いが目立ち、リスク警戒の動きが強まる中で、ドルは対円で109円台に値を落とした。

 目立った動きを見せたのはNZドル。同国最大都市オークランドで半年ぶりの市中感染者が確認され、17日にNZ政府は全土にロックダウン(用語説明1)を発令。NZ経済への警戒感が強まる中でNZドルが急落した。NZドルは0.7020前後から0.6950割れまで下落。さらに翌日のNZ中銀金融政策理事会は、大方の予想に反して政策金利を据え置いた。声明ではロックダウンを受けて様子を見たことが明らかにされ、NZドル売りが加速して一時0.6860台まで急落。その後はすぐに値を戻したが、週後半にかけて再びNZドル売りが再び強まり0.6800台を付けた。NZドル円も76円80銭台から17日に75円30銭台まで下落。週後半には74円50銭台を付けた。

 ポンドの売りも目立った。新型コロナの感染拡大の影響が懸念されたことに加え原油安が売りを誘い、対ドルだけでなく、対円、対ユーロなどでもポンド安が進行。ポンドは対ドルで週初の1.3870台から1.3600台に下落した。対円ではリスク警戒の円買いも加わり、週初の152円前後から149円10銭台へポンドが下落した。

今週の見通し

 ジャクソンホール会議をにらむ展開となっている。米ワイオミング州ジャクソンホールで当初26~28日に開催予定だったカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」。27日一日の短縮開催となったが、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長によるオンライン講演が27日に予定されており、世界の注目を集めている。ほとんどの年でFRB議長が講演している。2010年に当時のバーナンキ議長がQE2(用語説明2)の実施を同会議で示唆し、同年11月のFOMCで正式決定したことで、同会議へのマーケットの注目度が一気に高まった。2016年にも当時のイエレン議長が追加利上げを示唆し、同年12月に利上げを実施しており、FRBが方針変更を決める際、市場へ事前通知する場の一つとして認識されている。

 注目は米国の早期テーパリング開始に向けた示唆があるかどうか。米国の消費者物価指数が3か月連続で前年比プラス5%台となるなど物価上昇が著しい中、雇用統計などが好調で、FOMCメンバーの中にもテーパリング開始に向けた準備が整っているとの考えが出てきている。このところ金融引き締めに向かうべきとの姿勢をはっきり示しているダラス連銀のカプラン総裁は、今月行われた米メディアのインタビューで、9月のFOMCで10月のテーパリング着手を発表するべきだと発言。その他地区連銀総裁を中心に早期のテーパリング開始を期待する声が上がっており、その場合、事前告知の場としてジャクソンホール会議が重要な場として意識される。

 ただ、デルタ株による新型コロナの感染拡大が広がる中で、慎重姿勢も見られる。パウエルFRB議長がもともと慎重派ということもあり、今回は従来通りの慎重姿勢を維持してくるという見方が若干優勢のようにも見える。

 ジャクソンホール会議で前向きな姿勢が示されるとドル買いの動き、慎重姿勢を維持するとドル売りの動きか。ドル買いの場合110円台後半の売りを崩せるかがポイント。ドル売りの場合、目先下値を支えている109円台前半を割り込み、4日に付けた108円70銭台を試す動きか。

用語の解説

NZロックダウン NZのアーダーン首相は、17日に同国最大都市オークランドで約半年ぶりに新型コロナの市中感染者が確認されたことを受けて、同日から全土でロックダウンを実施した。オークランド市及び感染者の訪問が確認された沿岸部のコロマンデルでは1週間、その他地域は3日間の実施となった。その後、感染者と接触した人を中心に感染者が増え、首都ウェリントンでも20日に3名の感染者が確認されたこともあり、全土でのロックダウン延長が発表されている。
QE2 米FRBによる量的緩和(Quantitative Easing)第2弾。FRBはリーマンショック後の2008年11月に実施した量的緩和(QE1・2010年6月まで)に続いて、2010年11月のFOMCでQE2の実施を決定。2011年6月まで1か月あたり約750億ドル、合計6000億ドルの米国債購入を実施した。なお、2012年9月から2014年10月までQE3が実施されている。

今週の注目指標

ユーロ圏製造業PMI(8月)
8月23日17:00
☆☆☆
 23日にユーロ圏及び加盟主要国の製造業及び非製造業購買担当者景気指数(PMI・8月)が発表される。ドイツ製造業PMIの予想は65.3、同非製造業の予想は61.5で、ともに前回から若干の低下見込み。ユーロ圏製造業PMIの予想は61.5、非製造業は60.0で、製造業は前回から若干鈍化見込み、非製造業は若干の上昇見込みとなっている。総じて水準的には60前後のかなり強めの数字が見込まれている。ユーロ圏内は米国や英国などと比べるとデルタ株による感染拡大がまだ落ち着いているものの、増加傾向はしっかりとみられ、警戒感が広がっている。こうした警戒感がPMIに大きな影響を与え、予想を明確に下回る弱めの数字が出てくるとユーロが売られ、対円で126円に向けた動きも予想される。
米PCEデフレータ(7月)
8月27日21:30
☆☆☆
 米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータが27日に発表される。同系統の指標である米消費者物価指数(CPI・7月分は11日に発表済)は前年比+5.4%と6月と同水準だった。食品とエネルギーを除く「コア」は前年比4.3%上昇だった。PCEデフレータは計測方法の違いもあってCPIよりもやや低く出ることが多い。インフレ目標である2%を大きく超える状況が続き、今回の予想は前年比+4.1%、コア前年比+3.6%と6月から上昇する見込み。地区連銀総裁を中心に物価上昇への警戒感が強まる可能性が高く、市場予想通りかそれ以上の数字が出てくるとドル買いが強まり、対円で110円台後半に向けた動きも予想される。
パウエルFRB議長講演(ジャクソンホール会議)
8月27日23:00
☆☆☆
 27日一日の短縮開催となったジャクソンホール会議では、目玉となるパウエルFRB議長講演は、オンライン形式で日本時間27日午後11時からの予定。テーマは経済見通しについてとやや抽象的で、テーパリング開始時期の手掛かりが得られるか不透明な状況。物価上昇傾向からテーパリング開始が示唆される可能性は十分あるが、ここにきて新型コロナの感染拡大への警戒感が一気に強まっており、先行き不透明感から慎重姿勢を維持する可能性も高い。現行の金融緩和策の長期化見通しを改めて表明するとドル売りが進み、対円で108円台に向けた動きとなる可能性がある。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。