2021年08月30日号

(2021年08月23日~2021年08月27日)

先週の為替相場

ジャクソンホール会議後はドル売りやや優勢

 8月23日からの週、27日のジャクソンホール会議でのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長講演が注目された。当初はテーパリング(金融緩和の段階的縮小)開始に前向きな姿勢への期待感が強かった。しかし、13日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)の衝撃的な弱さから警戒感が広がり、その後の米経済指標もさえない結果だったこともあり、議長が慎重姿勢を示すとの思惑も広がっていた。

 

 先週前半はドル売りがやや優勢だった。週明け23日の海外市場で110円台を一時回復したが、ドル買いは続かず109円台後半に値を落とす展開。当初26~28日の日程で2年ぶりに対面での開催を予定していたジャクソンホール会議が、27日だけのオンライン開催に変更されたことで、議長の慎重姿勢維持に向けた流れが強まったとの思惑もドル売りにつながった。

 規制強化懸念から先々週に売りが目立った中国本土株や香港株の買い戻しが週明けから目立ち、リスク選好の動きが広がった。ドルに関してはリスク選好のドル売りが優勢だった。ドル円は一時109円台半ばを割り込む動きが見られた。

 その後、ジャクソンホール会議本番に向けてドルは買い戻し優勢に転じた。109円台半ば割れからすぐに値を戻したことで、下値しっかり感が出た面もある。もっとも110円台での買いには慎重な姿勢が見られ、上値は110円台前半まで。

 アフガニスタン情勢が緊迫化し、26日に首都カブールの空港での爆破テロ(用語説明1)で米軍に大きな被害が出たことなどもドルの重石となったとみられる。

 注目されたジャクソンホール会議ではパウエルFRB議長が年内のテーパリング開始を示唆。しかし、利上げには慎重な姿勢を示し、テーパリングは利上げ開始時期を示す直接的なシグナルではない、利上げにはより厳しい基準が必要だとの表現で、利上げに慎重な姿勢を強調。雇用の順調な回復についても、過度なインフレを招くような賃金上昇はほぼみられていない、雇用市場には依然としてスラック(潜在的な需給の緩み)があるなどと言及して慎重な姿勢を崩さず、全体として緩和的な金融環境を志向する「ハト派」な印象を与えた。講演後はドル売りが強まって109円台後半の円高・ドル安に動き、ユーロは対ドルで1.1730台から一時1.18台に乗せるドルは全面安となった。

 NY原油の買い戻しもあって上昇が目立っていた豪ドルなど資源国通貨も、FRB議長講演でもう一段高。豪ドルは対ドルで先週初めの0.71台前半から週後半に0.7280前後に上昇。その後少し調整が入って0.7250前後で講演を迎え、講演後のドル売りに0.73台を付けた。80円台を一時回復していた豪ドル円が週末、先週の高値を更新して80円30銭台を付けるなどの動きもあった。

今週の見通し

 8月の米雇用統計が9月3日、発表される。8月27日のジャクソンホール会議の講演でパウエルFRB議長は債券購入プログラムの縮小・停止の年内開始を示唆し、ドル売りがやや優勢となった。ただ、利上げには慎重な姿勢を堅持し、テーパリングが利上げの直接的なシグナルではないことや利上げの基準がテーパリングよりも厳しいものとなることなどを示し、全体としては慎重姿勢を維持する形をとった。

 今週から9月が始まり、ISM製造業・非製造業景気指数や雇用統計など米国の重要経済指標が発表される。特に雇用統計などの結果はパウエル議長が年内と示唆したテーパリング開始が、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)か、11、12月か、来年まで持ち越されるかなど開始時期に影響する。特にFRBの二大命題である「雇用の最大化」と「物価の安定」に直接かかわる雇用統計への注目度はいつも以上に高くなっている。

 前回7月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が事前予想の前月比87万人増に対して、94.3万人増となった。6月の数字が速報時点での前月比85万人増から93.8万人増に上方修正された上で7月は94.3万人増だったため、かなりの好結果という印象を与えた。失業率も6月の5.9%から5.7%へ低下するとの事前予想を超えて5.4%まで低下した。

 非農業部門雇用者数の内訳を見ると、新型コロナ感染拡大に伴う行動制限の緩和を受けてレジャー&ホスピタリティ部門が38万人増と大きく回復した。同部門は2月以降、毎月平均で30万人を超えるペースで雇用者が増え、全体の雇用回復を支えている。

 レジャー&ホスピタリティ部門と同様に直近の雇用回復を支えてきた小売業は0.55万人減と小幅ながら雇用が減少した。小売業は6月に7.25万人増、5月に5.39万人増と、夏を前に雇用の回復を前倒しで進めてきたことの反動とみられた。

 政府部門が24万人増と一気に増えている。これは教職員雇用が関連したもの(用語説明2)。

 今回の予想は非農業部門雇用者数が75万人増。前回から伸びが少し鈍化するが、民間部門に限ると70万人増の見込みとなっており、前回の70.3万人増とほぼ同水準。前回は政府部門が特殊要因で増加したことを加味すると、ほぼ前回と同じような雇用の回復状況と言える。失業率は5.2%と前回からさらに下がる見込み。

 事前予想通りかそれ以上の雇用の回復が確認されると、9月のテーパリング開始もあり得そうだ。パウエル議長は講演で、テーパリングが利上げの直接的なシグナルではないとの姿勢を示しており、テーパリング開始のハードルは下がっている。

 直接的なシグナルではないにせよ、利上げ前にテーパリングを完了している必要があるとの認識が広がっている分、早期のテーパリング開始期待はドル買いに働く。

 雇用統計の結果次第で110円台後半から111円台に向けた円安ドル高となる可能性もある。

用語の解説

カブール空港爆破テロ アフガニスタンの武装勢力タリバンが約20年ぶりに国土を掌握。これを受けて、国外脱出を目指す人々が集まった首都カブールのカブール国際空港で26日、自爆テロが発生し、米軍関係者13名を含む110名以上が死亡した。イスラム国ホラサン支部(IS-K)が犯行声明を出した。イスラム国とタリバンは同じイスラム過激派だが、イスラム国はタリバンの対応が穏健すぎると非難し、対立している。
教職員雇用 パンデミックの影響が収まり、米国の多くの州・市町村の学校で対面式授業が再開された。これにより教員や学食の職員、スクールバスの運転手など学校関連スタッフの雇用が一気に拡大した。7月は地方自治体の教育関連雇用が23.6万人増となっている。

今週の注目指標

米コンファレンスボード消費者信頼感指数(8月)
8月31日23:00
☆☆☆
 13日のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が予想を大きく下回ったことを受けて、米国の消費者マインドや企業景況感の悪化が懸念された。16日のNY連銀製造業景気指数、19日のフィラデルフィア連銀景況指数、24日のリッチモンド連銀製造業指数がともに事前予想値や前回値を下回る弱いものとなり警戒感が拡大。27日のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)も予想ほどの回復を見せず、速報値からわずか0.1%ポイントの改善にとどまった。こうした中、ミシガン大学消費者信頼感指数と同様の指標で、調査対象が約5000人とミシガン大学消費者信頼感指数(速報値300人、確報値500人)より多く、信頼性が高いとみられている米コンファレンスボード消費者信頼感指数への注目度が高まっている。前回は129.1とパンデミック直前の昨年2月以来の好結果だった。今回は123.0と若干の悪化が見込まれている。悪化が進むとドルが売られ、109円台前半に向けた動きとなりそうだ。
ISM製造業景気指数(8月)
9月1日23:00
☆☆☆
 NY連銀製造業景気指数など景気指数の悪化が目立つ中、ISM製造業景気指数がどこまで低下するかが注目される。同系統の指標である製造業PMI速報値(23日発表)は7月の63.4から事前予想の62.0を下回る61.2まで低下したが、60を超えるかなりの高水準を維持している。ISM製造業景気指数の15分前に発表される製造業PMI確報値でも同水準が見込まれており、製造業の景況感はまだまだ強いという印象になるだろう。ISM製造業景気指数は58.6と前回の59.5から悪化が予想されるが、水準的にはかなり強いという印象だ。事前予想を下回った場合や雇用部門の数字が弱く出た場合、3日の雇用統計への警戒感にもつながってドルが売られ、1.18台半ばのユーロ高ドル安を目指すなどの動きも予想される。
米雇用統計
9月3日21:30
☆☆☆
 8月の米非農業部門雇用者数(NFP)は前月比75万人増が見込まれている。7月の94.3万人から伸びは鈍化するが、前回は政府部門が24万人増と全体を押し上げており、民間部門はほぼ前月並みの雇用の伸びが見込まれている。
 直近の大幅な雇用増加を支えるレジャー&ホスピタリティ部門は、パンデミック前と比べて依然として173.7万人も雇用が少なく、回復余地がかなりあるとみられる。
 また、雇用統計の計測期間である8月8日から14日の週(12日を含む週)の新規失業保険申請件数は34.9万件(速報時点では34.8万件)と昨年3月中旬以来、約1年5か月ぶりの低水準だった。雇用の回復傾向は続いているとみられ、事前予想前後の強い数字は十分に期待できる。ドルは対円で110円台後半から111円に向けた動きを期待している。

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