2021年09月06日号

(2021年08月30日~2021年09月03日)

先週の為替相場

米雇用統計は非農業部門雇用者数が衝撃的な弱さ

 8月30日からの週は、9月3日発表の8月の雇用統計など米経済指標をにらみながらの取引となった。

 8月27日のジャクソンホール会議でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は年内のテーパリング(金融緩和の段階的縮小)開始を示唆。ただ、テーパリングと利上げを切り離して考えることが強調されると、市場は現行のゼロ金利政策が長期化するとの見通しを強め、週初はドル売りが優勢だった。27日のパウエル議長講演後、ドルは110円台前半から109円台後半に下落した流れを引き継ぎ、一時109円60銭割れまで売られた。

 週半ばにかけてドル買いが優勢に転じた。月末で実需がらみのドル買いが入ったとみられ、31日NY市場では対円で110円台を回復し、その後は110円40銭台まで上値を伸ばした。

 ドル安基調の中、1.1840台まで上昇していたユーロの対ドル相場が1.18割れまで下落するなどドルが買い戻された。

 しかし、1日のADP全米雇用報告では雇用の増加が事前予想を下回り、ドル売り基調に転じた。ADP雇用統計の発表後に110円割れを付けたドル円は、その後も110円00銭を挟んでもみ合い、3日に8月の米雇用統計の公表を迎えた。

 欧州中央銀行(ECB)のデギントス副総裁(用語説明1)が9月のECB理事会でテーパリング開始を決定すべきだと発言すると、ユーロ高ドル安基調が強まり、ユーロは対ドルで1.1850を超え、1.18台後半で米雇用統計の発表を迎えた。

 8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が事前予想の73.3万人増をはるかに下回る23.5万人増にとどまった。7月の105.3万人増(速報値の94.3万人増を上方修正)から伸びが急速に鈍化した。

 NFPの内訳は、小売業で2か月続けて雇用が減少、ここ半年、雇用回復を支えてきた飲食業も雇用が減り、コンスタントな雇用増が全体を支えていた介護部門の減少などが目立った。いずれもデルタ株による感染拡大の影響を受けやすい部門だけに、市場の警戒感を誘った。

 失業率は事前予想通り大きく低下、平均時給の予想外の上昇もあり、ドル円は109円50銭台を付けた後で発表前の水準近くまで戻すなど振幅が見られた。しかし、その後は再びドル売り円買いが優勢となった。

 パウエル議長は講演で年内のテーパリング開始を示唆した。早ければ今月21、22日のFOMCで開始決定との期待もあったが、今回の低調な雇用統計を受けて後退。年内という計画自体に修正が入るとの思惑もあり、ドル売りが出やすい地合いとなった。

 ユーロドルは一時1.19台を回復したが、大台超えで売りが出て、1.18台後半での推移。

 NY原油の上昇もあって買いが目立っていた豪ドルは、米雇用統計後も上昇基調を保ち、豪ドルの対ドルレートは先週初めの0.7280台から0.7470台まで大きく上昇。豪ドル円も80円割れを付けた先週初めの水準から、一時82円台乗せまで豪ドルが買い進まれた。

今週の見通し

 米雇用統計の弱さを受けて今月のFOMCでのテーパリング開始決定期待が後退。ただ、ジャクソンホール会議でパウエル議長が年内開始の見込みと述べたこともあり、もともと9月という期待は高くなかっただけに、影響は限定的になりそうだ。

 ジャクソンホール会議でテーパリングと利上げがはっきりと分けられ、利上げ実施のハードルを高くすることが示されたため、市場には現行のゼロ金利政策が長期化するとの見通しが広がっていた。金融緩和政策の長期化見込みが今回の雇用統計を受けて強まったため、中期的にはドル売りの流れか。

 非農業部門雇用者数の内訳から、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が米国の雇用市場にかなり強く出ていることが示され、ドルの売り材料になった。

 株高がドル円、クロス円の下支え材料となっているが、世界的なリスク警戒の動きに株式市場が変調してくるようだとドル安円高の流れが強まる可能性がある。

 基本的には109円台後半でのレンジ取引を中心に、リスクはドル安方向か。

 なお、今週は米国以外に豪中銀金融政策会合、カナダ中銀金融政策会合、ECB理事会が予定されている。いずれも政策金利は現状維持の見込み。

 もっとも注目度が高いのはECB。新型コロナウイルス感染拡大を受けて昨年3月に始めたPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)について、月額の購入ペースを縮小するテーパリングの開始が議論される見込みだ。実際に決定するかどうかは見方が分かれ、物価上昇を受けて開始決定にかなり前向きな参加者が見られる一方、慎重な意見もある。

 PEPPは来年3月で期限を迎える。今回の理事会でテーパリング開始が決まると、3月に向けて減額が続き、期限通りの終了となりそうだ。この場合、現在割り当てられている1兆8500億ユーロの全額を利用する可能性はほぼなくなる。こうした状況はユーロにとってかなりの買い材料となり、ユーロは対ドル、対円ともに上値トライの期待が広がるだろう。 

用語の解説

デギンドスECB副総裁 ルイス・デ・ギンドス(Luis de Guindos)ECB副総裁。スペイン、マドリッド出身。欧州経済委員会副議長、スペイン経済相などを経て、コンスタンシオ前副総裁(ポルトガル出身)の後任として、2018年よりECB副総裁。就任までECBやスペイン中銀など中央銀行での職務経験がなくECB副総裁となった。
PEPP PEPP(パンデミック緊急購入プログラム:Pandemic Emergency Purchase Programme)は、ECBがユーロ圏各国で新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンなどの行動制限が進んだことを受けて、2020年3月に導入が決まった臨時資金供給プログラム。当初は7500億ユーロ規模で2020年末までとなっていた。その後二度の期間延長と増額により、2022年3月まで1兆8500億ユーロとなっている。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
9月7日13:30
☆☆☆
 政策金利は0.1%での据え置きが確実視されている。注目は声明内容。豪中銀は7月の会合で量的緩和の一環として実施する債券購入を9月上旬よりペースダウンするテーパリング開始を決定。その後、豪州内で新型コロナウイルス感染拡大の深刻化を受けて、先月の会合では計画延期が検討されたが見送られ、今月からのテーパリング実施となっている。その後さらに感染者が増加する中、豪州はシドニー、メルボルン、キャンベラなどでのロックダウンを延長中で経済への影響が懸念される。今回の会合でのテーパリング実施の先送りは難しいと見られるが、声明の内容がより慎重なものになる可能性がある。慎重ながら前向きという従来の姿勢が後退すると豪ドルが売られ、豪ドルは対ドルで0.7350を試す可能性も予想される。
カナダ中銀政策金利
9月8日23:00
☆☆☆
 政策金利は現行0.25%の据え置きが確実視される。カナダ中銀は7月の会合で量的緩和策に伴う毎週の国債の純買い入れを30億カナダドルから20億カナダドルに縮小するテーパリングの開始を決定。今後さらなる買い入れペースの縮小が見込まれているが、今回は現状維持の見込みで、景気・物価見通しを示す次回10月27日会合が有力視されている。注目は声明で前向きな姿勢を維持してくるかどうか。経済的な結びつきの深い米国で、新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明感が広がっており、カナダ経済への影響が懸念される中、声明を慎重なものに修正する可能性もある。この場合はカナダ売りが強まり、カナダは対円で87円割れを試す可能性も。
ECB理事会
9月9日20:45
☆☆☆
 8月のユーロ圏消費者物価指数(概算値速報)が、前年比3.0%と約10年ぶりの高水準を記録した。ECBは一時的な物価上昇という姿勢を崩さないが、量的緩和策であるPEPPの縮小(テーパリング)に向けた議論が強まると見込まれている。金融引き締め志向の強い「タカ派」として知られるホルツマン・オーストリア中銀総裁やクノット・オランダ中銀総裁などが今会合でのテーパリング決定を支持する姿勢を示している。一方、今回は様子見との見方も強く、テーパリング決定の場合はユーロが買われ、対ドルで1.19台にしっかりと乗せて1.20を意識する動きが期待される。

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