2021年09月13日号

(2021年09月06日~2021年09月10日)

先週の為替相場

方向性を探りながらの展開に

 9月6日からの週は、週半ばに向けてドル買いが強まった後はドル安に転じ、一方向の動きにはならなかった。

 9月3日に発表された8月の米雇用統計では、最も注目度が高い非農業部門雇用者数の伸びが事前予想を大きく下回ったためドル売り円買いが進行。109円60銭台で先週の取引が始まった。

 その後110円00銭手前で上値が重くなる場面もあった。しかし、米国債利回りの上昇などから7日の海外市場でドルが全面高となって1ドル=110円台に乗せると、8日には8月12日以来の高値となる110円45銭前後までドル高が進んだ。

 その後は円買いが優勢となった。先週は米ダウ工業株30種平均が5日連続で下落する一方、週前半のドル買い円買いから後半にかけてドル売りが広がり、対円でのドル売りと円買い両面から109円60銭台まで円高ドル安に振れた。

 週末にかけてはドルが対円で買い戻された。日経平均の堅調が支えとなって週末10日に1ドル=110円手前まで上昇した後、109円90銭前後で推移した。

 ユーロは対ドルで軟調だった。週半ばまではドル全面高基調に押されてユーロ売りドル買いが優勢だった。9日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、事前予想通り政策金利が据え置かれた。焦点となったPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)は総額と期間を従来通り維持する一方、買い入れペースを緩やかに縮小すると発表した。規模などは示さず、ラガルドECB総裁は記者会見でテーパリング(金融緩和の段階的縮小)ではないと発言し、引き締め色を出さないように配慮していた。ユーロは対ドルで振幅後に下落したが1.18台を維持したこともあり、その後はいったん買い戻された。

 10日のアジア市場からロンドン市場での取引序盤にかけて株高を受けた対円でのユーロ買いもあって、ユーロは対ドルで1.1850台を一時回復した。しかし、その後は再び売りが強まり、ユーロは軟調な地合いが続いた。

 ドル高円安に支えられて130円70銭近くまで上昇したユーロの対円相場は、その後のユーロ売りで129円60銭台まで下落。10日のアジア市場での株高から一時130円20銭台を回復した後は海外市場で上昇分を解消した。

 豪中央銀行は7日の金融政策理事会で、政策金利や3年物国債利回り目標の現状維持を決定。7月会合で9月上旬実施を決定した債券購入ペースの縮小(週50億豪ドルから40億豪ドル)は一部で先送りも予想されたが、予定通りの実施を決めた。債券購入は、減額後の40億豪ドル規模を少なくとも来年2月中旬まで維持する方針とし、従来11月中旬までとしていた適用期間を延長。これを受けて豪ドル売りが強まった。

 豪ドルは対ドルで0.7440前後で金融政策理事会の結果発表を迎え、予定通りの債券購入の縮小実施で0.7460台まで上昇したが、その後は一時0.7340台まで下落した。

今週の見通し

 14日の米消費者物価指数(CPI)、16日の米小売売上高と、重要指標の発表をにらみながらの展開が予想される。

 ただ、CPIや小売売上高のプラス幅が相当大きくても、21、22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始が決まる可能性は低いだろう。8月27日開催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が年内のテーパリング開始の見込みを示した。FOMCは来週を含め年内あと3回あり、FOMC参加メンバーによる経済見通し(SEP)が公表される11月FOMCでのテーパリング開始決定が市場予想の本線。来週のFOMCは11月に向けた地ならしが見込まれ、経済指標に対する市場の反応は限定的なものになりやすい。

 そうした中、弱めの数字には注意しておきたい。米国では新型コロナ感染拡大が依然深刻だ。直近で1日15万人前後(7日間平均・米保険福祉省(用語説明1)調査)の新規感染者が確認される中、これまで順調に回復してきた米経済の先行きに警戒感が広がっている。

 ドルの対円相場の地合いは堅調で1ドル=111円台に向けた動きが意識される。ブラックアウト期間(用語説明2)で要人発言が少ないこともあり、経済指標の発表などで相場の流れに変化が見られなければ、ドルはじりじりと上値を試す可能性がある。

 目先のターゲットは先週の上昇局面で上値を抑えた110円50銭手前。110円台半ばにしっかり乗せてくるようだと、7月初めに付けた111円台後半への動きが見えてくる。

用語の解説

米保険福祉省 米保険福祉省(United States Department of Health and Human Services)は、米国民の健康保護などを目的とした米政府機関。本部はワシントンD.C.にあり、全米各地で約8万人の職員が働いている。新型コロナウイルス関連で対応を行う米疾病管理予防センター(CDC)、国立衛生研究所(NIH)、食品医薬品局(FDA)などは同省に所属する機関となる。
ブラックアウト期間 市場の混乱などを防止するため、米FOMCや日銀金融政策決定会合といった中央銀行の政策決定会合に出席するメンバーが会合の前後、金融政策に関連する発言を禁じられる期間。米国ではFOMC開催の前々週の土曜日からFOMC終了までが該当する。日銀の場合、金融政策決定会合開始の2営業日前から会合終了後の総裁会見終了まで。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・8月)
9月14日21:30
☆☆☆
 パウエルFRB議長が8月のジャクソンホール会議で、年内のテーパリング開始を示唆した。9月3日発表された8月の米雇用統計が事前予想を大幅に下振れしたため、年内あと3回のFOMCのうち、9月会合でのテーパリング開始見通しは後退。11月か12月の実施が予想されるが、雇用の弱さが続けばFRBは戦略の立て直しを図るとの思惑が広がるだろう。雇用と並ぶFRBの2大命題である物価の安定も注目され、早期テーパリング見通しが強まる一因である物価上昇傾向の持続性も焦点。8月のCPIは前年比+5.3%の予想で、7月の5.4%からやや鈍化するが3か月連続の5%台と高止まりが見込まれる。予想外に5%を割り込むような弱さを見せると、テーパリングを急ぐ必要が薄れるとの思惑からドル売りが強まり、ドル円は108円台に向けて下落する可能性がある。
豪雇用統計(8月)
9月16日10:30
☆☆☆
 今月の豪中銀理事会で7-9月期の豪GDPが著しく減速するとの予想が示された。コロナ感染拡大からシドニーやメルボルンなど主要都市でロックダウンが延長されており、豪経済に大きな悪影響が出ている。雇用市場もかなり厳しい状況とみられ、雇用者数は7月の0.22万人増から8万人減へ落ち込むと見込まれている。失業率も7月の4.6%から4.9%に悪化する見込み。予想通りかそれ以上に厳しい数字が出てくると、豪ドルには重石となり、1豪ドル=80円割れが視野に入ってくるだろう。
米小売売上高(8月)
9月16日21:30
☆☆☆
 3日発表された8月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が弱く出たことを受けて、個人消費の動向が注目されている。コロナ感染拡大の影響を受けやすい飲食店、小売りなどの雇用が減少しており、個人消費が落ち込んでいる可能性がある。事前予想は前月比0.8%減と前回の1.1%減に続いて売り上げが減る見込み。個人消費は米GDPの約7割を占め、事前予想通りかそれ以上に売上(個人消費)が減少すると、米景気回復への期待感が後退。108円台に向けてドル売り円買いが強まる展開が見込まれる。

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