2021年09月27日号

(2021年09月20日~2021年09月24日)

先週の為替相場

週後半はドル高円安に

 9月20日からの週は、中国の不動産大手・恒大集団の債務問題に絡んで神経質な動きを見せた。恒大が23日に迎える社債の利払いが難しいとの見方が広がり、先週前半はリスク警戒でのドル売り円買いが強まり、ドルは対円で109円12銭前後まで下落した。

 週明けの香港株式市場でハンセン指数が一時4%を超える急落に見舞われ、欧州株や米国株先物も大幅に下落した。米ダウ平均先物は下げ幅が一時500ドルを超えた。

 しかし、22日には恒大が翌23日付の人民元建ての社債利払いを実施すると発表し、警戒感が後退。ドルは対円で買い戻された。

 21、22日開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果もドル買いに寄与した。FOMCは市場予想通り政策金利と量的金融緩和政策の現状維持を決定。声明文では資産購入ペースの縮小(テーパリング)が「近く正当化される」との表現で、国債など資産購入による資金供給規模の縮小を年内に開始する方針を示唆。参加メンバーによる政策金利見通し(ドットプロット)では、2022年中の利上げが18名中9名に増加した。FOMC後にパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見し、来年半ばのテーパリング終了を適切とする見解を示すなど、事前の市場予想よりも利上げに積極的な「タカ派」寄りの内容が目立った。

 社債利払いの履行宣言で恒大への懸念が一服したところに、FOMCのテーパリングや政策金利の引き上げに前向きな姿勢がドル買いを強め、週末に110円80銭近くまでドル高円安が進んだ。

 ドル高より円安の流れが目立った。FOMC後にいったん1.1680台までユーロ安ドル高が進んだ後、1.17台半ば前後までユーロが値を戻すなど下値進行に慎重な姿勢が見られた。

 ドル以外の通貨と日本円のクロス円取引では、他通貨が軒並み上昇して円が下落。ユーロ高円安の流れが強まり、週半ばの127円90銭台から週末に129円80銭前後へユーロが上昇した。

今週の見通し

 市場の最大の懸念材料だった中国不動産大手・恒大集団の債務問題への警戒感が一服した。債務が大きいため先行き不透明感は残るが、同社は資産も大きく、どちらかというと資金繰りの問題が大きかった。中国当局が債務再編など恒大問題に対応する姿勢を示唆したため、警戒感はいったん大きく後退した。ただ、年内だけでも大規模な利払い予定日が残っており、状況の変化には要注意。

 米FOMCはテーパリングや利上げに対して予想以上に前向きという印象を市場に与えた。新型コロナ感染拡大を受けた雇用回復の減速が懸念され、先行き見通しがより慎重になるとの見方もあったが、政策金利見通しは前向きな姿勢が強まり、市場に安心感を与えた。

 基調はドル高円安か。株高も期待され、7月2日に付けた111円60銭台のドル高円安が意識する展開が予想される。

 ユーロは26日の独連邦議会選挙を受けて様子見ムードがやや強まりそうだ。メルケル首相の所属するドイツキリスト教民主/社会同盟(CSU/CDU:用語説明1)は第1党の座を連立与党のドイツ社会民主党(SPD)に譲る形となったが、直前で支持率が盛り返して議席数の差を縮めた。

 SPDと緑の党の連立政権が予想されるが、2党では議会の過半数に届かず、中道右派の自由民主党(FDP:用語説明2)の取り込みが必要だ。ただ、SPD・緑の党連合とFDPでは政策に隔たりが大きく、連立交渉は難航が必至だ。SPD・緑の党・FDPによる再度の大連立のほか、SPDを外してCDU/CSU・緑の党・FDPの3党が手を組み、各党のシンボルカラーを国旗に見立てた「ジャマイカ連立」が生まれる可能性があるなど情勢は不透明で、市場は様子見ムードを強めるだろう。

 ユーロの対ドル相場は1.17台を中心に、ドル高基調の中で1.16台のユーロ安ドル高を試す動きか。

用語の解説

CDU/CSU ドイツキリスト教民主同盟(CDU)は、メルケル首相が所属するドイツの中道右派政党。連邦議会ではバイエルン州のみが地盤のキリスト教社会同盟(CSU)と統一会派を組む(CDUはバイエルン州では基本的に活動しない)。シンボルカラーは黒。ドイツ社会民主党と二大政党の一角をなし、メルケル首相の前にも、1982年から1998年にかけて16年間首相を務めたコール氏など多くの首相を輩出している。現在の党首は首相候補であるラシェット氏。同氏は今年夏に洪水地帯を視察した際、側近と談笑していたことなどが批判され、支持率低下の要因となった。
FDP ドイツ自由民主党。1948年に結成されたドイツの中道右派政党。1990年にドイツの自由民主党と統合している。シンボルカラーは黄色。第3政党として戦後の多くの期間CDU/CSUもしくはSPDと連立を組んで政権に参加してきたが、2002年に緑の党に抜かれて第4党に転落。その後党勢が回復に向かう時期もあったが、2013年の連邦議会選挙で最低必要得票率の5%に届かず、全議席を失った。2017年に議席を回復し、2021年選挙では第4党となっている。FDPは増税をせず、政府借入に対する制限の復活を公約とするが、この主張はインフラ投資拡大と富裕層増税を公約とするSPDと緑の党にとって厳しい条件となるため、連立交渉の行方が注目されている。

今週の注目指標

米コンファレンスボード消費者信頼感指数(9月)
9月28日23:00
☆☆
 前回8月分は7月の129.1(125.1に下方修正)から123.0に低下するとの市場予想に対して、113.8と予想を大きく超える低下となった。同指標に先行して発表された8月のミシガン大学消費者信頼感指数がパンデミック後の最低水準を下回り、約10年ぶりの低水準を記録。新型コロナ感染拡大を受けた消費者マインドの悪化が懸念されていたところに、同系統のコンファレンスボード消費者信頼感指数が弱く出たことで、市場の警戒感が強まった。9月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想に届かない小幅な改善にとどまり、警戒感が継続。コンファレンスボード消費者信頼感指数も114.6と若干の回復が見込まれるが、水準的には今ひとつ。事前予想を下回る弱めの結果が出ると、消費者マインド悪化が警戒されて109円台のドル安の可能性もある。
米PCEデフレータ(8月)
10月1日21:30
☆☆
 14日に発表された8月の米消費者物価指数は前年比こそ市場予想通りだったが、前月比、エネルギーや食料品を除いた「コア」の前月比・前年比が予想を下回った。いずれも7月の伸びを下回り、市場では米国のインフレがピークを過ぎたとの見方が広がった。米国のインフレ目標の対象であるPCEデフレータは7月と前年比で同水準が予想されるが、コアデフレータは前月比と前年比がともに7月の伸びを下回る見込み。消費者物価指数の低調を受けてある程度は織り込み済みとみられるが、予想を下回る弱さを示すと物価のピークアウト観測が強まり、109円台のドル安円高が予想される。
米ISM製造業景気指数(9月)
10月1日23:00
☆☆☆
 前回8月分の米ISM製造業景気指数は7月の59.5から58.5に低下するとの市場予想を覆して59.9に上昇した。新規受注が66.7と3か月ぶりに上昇。新型コロナ感染拡大で先行き不透明感が広がる中、景気の先行きに期待感が強まった。ただ、雇用指数は49.0と節目の50を割り込んで昨年11月以来の低水準を記録。その後の米雇用統計の弱さもあり、警戒感を生んだ。9月分は59.5と前回からやや鈍化するが水準的には強めを維持すると予想されている。市場予想通りかそれ以上の水準を示し、内訳のうち雇用指数が50以上に回復すると、米国経済への安心感につながり、1ドル=111円台半ばを目指してドルが買われる可能性がある。

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