2021年11月08日号

(2021年11月01日~2021年11月05日)

先週の為替相場

ドル高円高の流れに

 先週(11月1-5日)のドル円相場は方向感なく推移した。対ユーロや対ポンドなどでドル高の動きがみられる一方、ドル以外の対他通貨全般では円買いも入り、ドル買いと円買いが交錯して方向感がつかみにくかった。ただ、週末にかけてはドル売りの勢いが勝り、1ドル=113円台前半の円高水準で先週の取引を終えている。

 先週初めは先々週末のドル高の勢いが残り、ドルは対円で堅調だった。11月1日には1ドル=114円44銭前後と先週の高値を付けた。

 その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした調整と、豪準備銀行(中央銀行)金融政策理事会後の豪ドル売り円買いなどに押されて、1ドル=113円台半ば割れのドル安円高となった。

 もっともFOMCを前に積極的なドル売りは手控えられ、一時114円台まで買い戻された。米ISM非製造業景況指数(10月)やADP雇用統計(10月)などの好結果もドル円の支えとなった。

 4日は米国の長期金利の指標となる10年債利回りが1.6%前後から1.53%台へ低下する中、一時1ドル=113円50銭台までドルが売られた。FOMC前にドルがやや値を戻して113円80銭前後で5日の米雇用統計(10月)を迎えた。

 米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、前回値も大きく上方修正された。失業率の低下も市場予想以上に進んだ。

 このため、雇用統計発表の直後はドル買いが優勢となり、1ドル=114円台に乗せる場面が見られた。しかし、短時間のうちにドル売り優勢に転じた。

 米10年物国債の利回りが4、5日と続けて低下し、ドル売りにつながった。米10年債利回りは節目の1.5%をあっさり割り込むと、一時1.43%まで低下している。

 1ドル=113円30銭前後までドル安円高が進み、113円台前半で先週の取引を終えている。

 豪準備銀行は2日の金融政策理事会で、3年物利回り目標の廃止を正式に決めた。もっとも10月28、29日と2営業日連続で対象国債の買いオペを見送り、利回りが上昇していたため、利回り目標廃止は織り込み済みだった。政策金利(OCR)の引き上げには慎重な姿勢を示したこともあり、金融政策理事会の結果発表後は豪ドル売りが出た。

 英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)は一部で期待のあった利上げを見送った。金融政策の据え置きが決定(用語説明1)の採決結果は7対2と、市場予想以上に据え置き主張が強かったこともあり、発表後はポンドが売られた。記者会見でベイリー総裁(用語説明2)は市場の利上げ期待をけん制し、慎重な姿勢を崩さなかった。

 ユーロは対ポンドで買われる一方、対ドルで軟調だった。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が来年に利上げの条件が整う可能性は極めて低いと述べ、市場の利上げ観測をけん制したことも重石となった。しかし、1ユーロ=1.15ドルの大台割れには慎重な姿勢が見られた。

今週の見通し

 ドル円は次の方向性を探る局面に入りそうだ。これまで米国債利回りの上昇がドル高円安基調を支えてきたが、先週後半に急速な調整が入っており、ドル円相場は方向性をつかみにくいだろう。

 5月発表された米雇用統計(10月)の力強さもあり、流れはまだドル高円安方向との期待もある。しかし、米国債の利回りが不安定なため、積極的なドル買いには慎重は雰囲気が強くなりそうだ。

 ドル安方向では1ドル=113円00銭手前の買いが依然として意識されている。10月11日に113円台に乗せてから、113円台前半~114円台後半のレンジ取引が続いており、113円台前半ではドル買いが出る流れが予想される。

 ただ、米雇用統計が強く出たにもかかわらずドルが114円台を維持できずに下落した先週末の動きから、短期的にはドル安方向に目が向く流れとなっており、今週大台割れを試す可能性が十分にありそう。

 大台を割り込んだ場合、いったんはストップロス注文を巻き込んで大きな値動きになる可能性もある。ただ、上述したように中長期的な流れはまだドル高方向とみられ、調整一服後にドル高へ反転の動きも予想される。

 おおむね1ドル=113円台のレンジ取引を中心に、112円台前半程度までのドル安円高も視野に入る。ただ、中長期的には115円超えを試すというドル高の見方は変わらない。

用語の解説

7対2での据え置き決定 英中銀金融政策委員会(MPC)は英中銀の正副総裁を含む5人の内部委員と4人の外部委員の計9人による投票で金融政策を決定する。ほとんどの先進国が投票制による政策決定を採用しているが、実際には事前協議によって意見が収束するケースが多く、米FOMC、日銀金融政策決定会合、ECB理事会で議長提案が否決されたことはない。米FOMCでは、明文化されていないものの議長提案が否決された場合、議長はその場で辞任するという話まである。一方、英MPCの投票は比較的自由な投票だ。キング総裁(当時)が2013年2月から退任前の6月まで計5回のMPCで量的緩和策拡大の提案を否決され続け、金融政策は現状維持が続き、規模縮小を経ず2016年に緩和策が終了している。
ベイリー総裁 アンドリュー・ベイリー。2020年3月16日にカーニー総裁の後を継いで英中銀総裁に就任。任期は2028年3月15日まで。2016年7月から英中銀総裁就任前まで英金融行動監視機構(FCA)の長官を務めていた。英ケンブリッジ大学クィーンズカレッジで博士号を取得後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)研究員を経て1985年に英中銀入り。2013年4月から2016年のFCA長官就任までは英中銀副総裁を務めるなど、30年以上の英中銀でのキャリアを持つ。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・10月)
11月10日22:30
☆☆☆
 米国の物価は上昇傾向が続いている。米国のインフレ目標の対象はPCEデフレーターであり、CPIではないが、同系統の指標であり、発表が2週間ほど早いCPIが注目される傾向がある。CPI前年比は直近で5か月続けて5%台、食料品やエネルギーを除く「コア」前年比は4か月連続で4%台とかなりの高水準。エネルギー価格上昇が物価全体を押し上げる中、10月はガソリン価格がさらに上昇(全米全種平均で前月比3.4%上昇)しており、強めの数字が見込まれている。市場予想は前年比+5.9%、コア前年比は+4.3%と大幅上昇の見込み。上昇率が予想通りか予想を上回ると、慎重なパウエルFRB議長も早期利上げに舵を切るとの思惑からドルが買われ、1ドル=114円台にしっかり乗せてくるだろう。
豪雇用統計(10月)
11月11日09:30
☆☆
 前回9月分は新型コロナ感染拡大の影響などから雇用者数は前月比13.8万人減と、8月分の14.63万人減に続く大幅減となった豪州。今回は直近2回の反動もあって5万人増が見込まれている。ただ、前々回と前回の減少を勘案すると回復幅は小さく、コロナ禍による雇用への打撃が意識される状況だ。失業率も4.8%への悪化が見込まれている。雇用の回復度合いが市場予想をさらに下回れば1豪ドル=83円台前半を試す豪ドル安も予想される。
英第3四半期GDP速報値
11月11日16:00
☆☆
 先週の英中銀金融政策委員会(MPC)は一部の期待に反して政策金利を据え置いた。ベイリー総裁は市場の早期利上げ期待をけん制し、ほぼ確実視されていた12月の利上げ観測期待も後退しているが、金利市場では依然として利上げ予想が据え置き予想を上回っている。ただ、新型コロナ感染拡大やサプライチェーン問題などによる景気回復の鈍化が確認されると、市場に警戒感が広がるだろう。市場予想は前期比+1.5%、前年比+6.8%。前期より弱いが、水準的にはしっかりした伸びが期待されている。予想通りかそれ以上の伸びが見られると、利上げ期待を高めてポンドが買い戻され、1ポンド=1.36ドル台を試す展開も予想される。

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