2021年12月13日号

(2021年12月06日~2021年12月10日)

先週の為替相場

オミクロン株への警戒感後退も上値追いに慎重

 12月6日からの週、ドルは対円で比較的しっかりとした値動きだったが、114円00銭手前の売りがドルの上値を抑えた。

 オミクロン株について、感染者の症状が比較的軽いとの報告が相次いだことが市場の安心感につながり、リスク警戒ムードが後退した。

 米国の早期利上げ観測などに伴うドル買いが優勢だったが、欧州などでのデルタ株感染拡大の深刻化やウクライナ問題、北京オリンピックの外交的ボイコットによる米中関係悪化といった懸念材料が重なり、ドルの大幅な上昇を阻んだ。

 先週前半に1ドル=113円台後半までドルが上昇。その後は中国・恒大集団の債務不履行への警戒感から113円台前半のドル安円高となったが、米製薬大手ファイザーがブースター接種がオミクロン株に高い効果を発揮する可能性があると発表したことが安心感を誘い、114円をうかがう水準までドルが上昇した。

 もっとも114円台には乗せられず、いったんは調整色が強まった。10日発表の米消費者物価指数(11月)の上振れ期待がドルを支えたが、上値トライには慎重だった。

 米消費者物価指数は前年比+6.8%と約40年ぶりの高水準を記録したが、市場予想通りだった。ドルは発表までは期待感から上昇したが、発表後は一転して売られた。

 ユーロの対ドル相場は週前半に軟調な動きを見せた。米国の早期利上げ観測などがドル買いを誘い、1ユーロ=1.13台から1.12台前半のユーロ安ドル高となった。

 しかし、その後は調整の動きもあって1.13ドル台半ばまでユーロが上昇。リスク選好のドル売り円売りもユーロを押し上げた。対円では1ユーロ=127円台から129円10銭台までユーロ高が進んだ。

 その他通貨ではカナダドルの動きが目立った。週半ばまでドル売りカナダ買いが進行。NY原油の上昇期待が先進国で唯一の純産油国(輸出>輸入:用語説明1)であるカナダの買いを誘った。8日のカナダ中央銀行金融政策理事会が前向きな景気認識を示し、10月27日理事会のフォワードガイダンス(金融政策の指針)で示した2022年4~9月の利上げ開始見通しの前倒し観測がカナダ買いを呼んだ。

 しかし、カナダ中銀が政策金利とともにフォワードガイダンスの現状維持も決定すると、1ドル=1.2600カナダ台から1.27カナダ台へ、ドル高カナダ安に動いた。

今週の見通し

 今週は14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、16日の英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)と欧州中央銀行(ECB)理事会、16、17日の日銀金融政策決定会合と、四大通貨の中銀会合が続く。ロシアやトルコなど新興国の中銀も定例理事会を予定し、各国中銀の動向が注目される。

 この中でもっとも注目度が高い米FOMCをにらむ展開が予想される。直近の米国の物価上昇を受けて、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は11月30日の上院銀行委員会の議会証言で、12月FOMCでのテーパリング(量的緩和の段階的縮小)前倒し終了の是非を議論すると述べた。

 あくまで議論だが、パウエル議長はインフレに対する「一過性」との表現を外す時が来たなどと発言しており、テーパリングの前倒しがほぼ確実視されている。

 なお、FOMCは合議制が建前だが、議長の意向がかなり強く反映され、議長提案が否決されたことはない。

 市場の注目はテーパリングの前倒しがどの程度か、その後の早期利上げ観測がどこまで強まるかに移っている。今のところ資産購入の削減規模を現行の月150億ドルから300億ドルに広げ、来年3月終了との見方が広がっている。

 この場合、短期金利市場で織り込みが進みつつある来年6月FOMCまでの利上げはスケジュール的な無理がなくなり、ほぼ確実視されるようになる。来年5月FOMCでの利上げ観測も本格化してくるだろう。

 ただ、5月FOMCは参加メンバーによる経済見通し(SEP)が発表される回ではないことを理由に、大きな政策変更には向いていないとして6月FOMCが利上げ予想の本命として残る可能性もある。

 FOMC後の金利市場の動向にもよるが、利上げ前倒しや複数回の利上げ観測がさらに顕著になると、ドル買いが強まる可能性がある。

 一方、ECB理事会では金融緩和政策の継続が示される可能性がある。ECBは来年3月が期限のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を期限通りに終える見通しを示している。PEPP終了後については、コロナ流行前からあるAPP(資産購入プログラム:用語説明2)の拡大について議論するとみられる。PEPP終了後も金融緩和姿勢を維持するとの姿勢をECBが明確に示すとユーロ売りにつながるだろう。

 ECBと同日の英イングランド銀行金融政策委員会(MPC)では据え置き見通しが大勢で、先月まで強く見られた利上げ観測は後退している。ユーロ、ポンドともに対ドルで売りが強まる可能性が意識される。

用語の解説

カナダの純産油国 シェールガスなどの生産拡大もあり、2020年の世界の原油生産は米国が日量1951万バレル(米エネルギー情報局[EIA]調査)と、2位のサウジアラビアの1181万バレルを抑え、圧倒的な1位。ただ、米国は消費が生産を上回り、原油を輸入しているため、純産油国ではない。カナダの原油生産量は世界4位。米国を中心に多くを輸出し、先進国で唯一、原油の輸出が輸入より多い純産油国となっている。
APP ECBが2015年1月の理事会で導入を決定し、同年3月にスタートした資産購入プログラム(Asset Purchase programmes)。現状の資産購入は月200億ユーロで期限を設けていない。基本的には利上げの直前までの継続が見込まれている。PEPPではキャピタルキー(各国のECBへの出資比率に基づく資産購入比率の規制)や、発行体ルール(1銘柄の購入上限を残高の33%までにする規制)がある。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
12月16日04:00
☆☆☆
 連邦公開市場委員会(FOMC)が14、15日に開催される。米国の物価上昇は著しく、12月10日に発表された11月の米消費者物価指数(CPI)は、前年比+6.8%と1982年6月以来およそ40年ぶりの高水準だった。米国のインフレ目標制の対象であるPCEデフレータも最新10月時点で前年比+5.0%、同コアデフレータが前年比+4.1%と、ともにインフレ目標の2%を超過している。パウエルFRB議長は議会証言で、物価上昇について「一過性」との表現を外す時が来たと表現しており、物価上昇の長期化に警戒感を示している。11月から始まったテーパリングについて議長は、今回のFOMCで前倒し終了の是非を議論すると発言した。従来のペースでは来年6月にテーパリングを終え、利上げはそれ以降となるが、前倒し終了で、早期利上げが可能になる。市場では、現状の月150億ドルから300億ドルに減少ペースを上げ、来年3月終了とする案が有力。テーパリング終了=利上げスタートではないが、利上げ準備が整うと市場の利上げ観測が高まりやすい。短期金利市場で早期利上げの織り込みが進めば、1ドル=115円台に向けたドル高円安が予想される。
英中銀金融政策会合(MPC)
12月16日21:00
☆☆☆
 当初は直近の物価上昇を受けて、12月の英中銀金融政策委員会(MPC)での利上げが予想されていた。10月の英消費者物価指数は前年比+4.2%とインフレ目標の2%や許容上限とされる3.0%も大きく超えるている。今週15日に予定されている11月の消費者物価指数は+4.7%と上昇幅がさらに拡大する見通し。米国や日本に比べて欧州はインフレへの警戒感が強く、市場は一時、利上げを大幅に織り込む動きを見せていた。ただ、ここにきて英国内で新型コロナ感染者が増加してきたこと、先週発表された10月の月次国内総生産(GDP)が低調だったことなどから利上げ期待は急速に後退。英中銀総裁も慎重な姿勢を示したため、大方の政策金利予想は利上げから据え置きに変化してきた。もっとも一部の大手金融機関が依然として利上げ見通しを維持するなど見方は分かれている。前日の米FOMCでのテーパリング前倒し決定を前提とすれば、大方の予想通り英国の政策金利が据え置きが決まれば、米国と英国との温度差から1ポンド=1.3100ドルを割り込むポンド安ドル高も予想される。
ECB理事会
12月16日21:45
☆☆☆
 新型コロナ対応で2020年3月に始まったPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)はこれまで延長が続いてきたが、来年3月終了がほぼ確実。市場はその後のECBの姿勢を注目している。2015年から続く従来のAPP(資産購入プログラム)が強化されるかが焦点になる。当初、APP拡充は不要だとの意見もあったが、ユーロ圏内で新型コロナ感染拡大が深刻化しているため、一時的な買い入れ拡大を決める可能性が高い。ただ、将来の政策面での柔軟性を確保するため、見直しへの言及も想定される。金融緩和の長期化が強調されれば、11月に付けた1ユーロ=1.1180ドル台を試すユーロ安ドル高が予想される。

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