2021年12月20日号

(2021年12月13日~2021年12月17日)

先週の為替相場

イベント目白押しの週を終え、クリスマスウィークに

 12月13日からの週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)、英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)、欧州中央銀行(ECB)理事会と重要イベントが連続し、各イベントが相場に大きな影響を与えた。

 14、15日の米FOMCは11月から始まったテーパリング(金融緩和の段階的縮小)について、資産購入額の削減額を150億ドルから300億ドルへ増額。量的金融緩和政策の終了めどを従来の2022年6月ごろから3月ごろへ前倒しした。FOMC参加メンバーによる経済見通し(SEP)では、各メンバーの政策金利水準見通しを示すドットプロット(用語説明1)で、来年中3回の利上げが中央値となり、早期利上げ見通しが強まった。前回(9月21、22日FOMC)のドットプロットは据え置きと1回利上げが拮抗していた。

 1ドル=114円台前半に乗せ、ドルは堅調だった。

 16日の英MPCは大方の予想に反して0.15%の利上げを決定。同日のECB理事会は22年3月のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)終了を確認。PEPP終了後については次回(22年2月3日)以降のMPCに判断を先送りするとの見通しが大勢だったが、既存のAPP(資産購入プログラム)拡大を発表し、先行きの姿勢を明示した。ただAPPの拡大幅は市場見通しに比べて小さかった。英中銀、ECBの比較的前向きな姿勢を受けて、欧州通貨は堅調だった。

 欧州通貨は週の後半に下落に転じた。米国が中国の複数の機関に制裁を科すとの報道をきっかけに、米中関係の悪化懸念から円買いが入った。米政府は中国のドローン大手DJIなどを含む企業・団体への制裁を発表した。

 ウクライナ問題、欧州でのオミクロン株などによる新型コロナ感染拡大もリスク警戒感を増し、1ドル=113円10銭台までドル安円高が進んだ。

 米FOMC後に1ユーロ=1.1220ドル台を付けた後、ECB理事会後に1.1360ドル前後までユーロ高ドル安に動いた。週末にはリスク警戒のドル買い円買いや欧州でのコロナ感染拡大への警戒感から1.12台半ばを下回るユーロ安となった。ユーロの対円相場はECB理事会後に1ユーロ=129円60銭台だったが、週末には127円台後半のユーロ安に振れた。

 トルコリラもその他非常に激しい動きを見せた。週初の1ドル=14リラ超えからトルコ中央銀行による利下げ前後でリラが下げ幅を拡大。週末にはさらにリラ売りが加速し、17リラを超えるドル高リラ安となった。9月初めと比べて対ドルでリラの価値が半減した。

今週の見通し

 今週はクリスマスウィークのため、海外勢を中心に取引参加者が極端に少ない。

 米中関係悪化、欧州を中心に広がる新型コロナ感染拡大などリスク材料が重なっている。しかし、積極的な売買を手控える雰囲気が強く、レンジ取引が中心となりそうだ。

 1ドル=113円台を中心にレンジ取引が見込まれる。積極的な取引を手控える参加者が増え、年明けまで値動きは限定的だろう。

 米国の早期利上げ観測がドルを支える一方、米中関係悪化への懸念がドルの上値を抑えそうだ。

 主要通貨は軒並み落ち着いた動きが予想される。しかし、欧州の新型コロナ感染拡大が深刻なため、景気回復への懸念が強まるとユーロ売りが強まりそうだ。積極的な下値トライは難しいが、ユーロが値を戻す場面では売りが出そうで、やや頭の重い展開が続くだろう。

 資源国・新興国通貨も全般に売り優勢が予想される。値幅は限定的とみられるが、リスク警戒感の強まりで資源国や新興国通貨からドルへ資金が逃避しやすい状況だ。

用語の解説

ドットプロット 年8回の米FOMCのうち、3、6、9、12月のFOMCでは参加メンバーによる経済見通し(SEP)が示される。この中で各メンバーの年末時点での政策金利水準の予想を点(ドット)で示したチャートをドットプロット(ドットチャート)と呼び、SEPの中でも特に注目度が高い。今回のドットプロットは2021、2022、2023、2024年の各年末時点と長期の政策金利水準の予想を示す。2023年末時点で1.00~1.25%から2.00~2.25%の間で予想が分かれている。
DJI 2006年にフランク・ワン氏によって創業された中国深センにあるドローンの世界的大手企業。グローバルな社員数は1万1千人を超える。同社の発表によると、民生用ドローンの世界シェアは約7割。

今週の注目指標

米PCEデフレータ(11月)
12月23日22:30
☆☆☆
 米国のインフレ目標の対象であるPCEデフレータは10月時点で前年比5.0%、コア前年比4.1%。ターゲットの2.0%をともに大幅に超過している。12月10日発表された11月の米消費者物価指数がかなり強く出たこともあり、同系統の指標であるPCEデフレータも強めの数字が見込まれている。市場予想は前年比5.7%、同コア前年比4.5%。すでにこうした物価上昇を織り込んで早期利上げ観測が強まっているが、改めて物価上昇の深刻さが認識されると1ドル=114円に向けてドルが買われる可能性がある。
米耐久財受注(11月)
12月23日22:30
☆☆
 前回10月分は市場予想に反して前月比0.5%減と落ち込んだが、これは月ごとの変動が大きい民間航空機の受注が前月比14.5%減と大幅に減少したことの影響が大きい。設備投資の先行指標とされる航空機を除く非国防資本財の受注は速報時点で前月比0.6%増(その後0.7%増に修正)と、米製造業の力強さを示している。今回は耐久財受注全体で2.0%増、非国防資本財も0.6%増とともにしっかりした数字が見込まれている。予想以上の数字が出てくると、同時に発表されるPCEデフレータ次第ではあるが、1ドル=114円超えのドル高円安も十分ありそうだ。
米新規失業保険申請件数(12月12日から18日分)
12月23日22:30
☆☆
 米PCEデフレータや米耐久財受注と同時に週間ベースの新規失業保険申請件数も発表される。前々回の同指標は18.4万件と約52年ぶりの低水準を記録。前回は少し増えたものの、それでも20.6万件とかなりの低水準。今回は12月の雇用統計と計測期間がかぶり、特に注目度が高い。市場予想はほぼ前回並みの20.5万件。20万件を割り込むとインパクトがありそうで、PCEデフレータや耐久財受注とともにすべて強めに出た場合は大きなドル買いになり、1ユーロ=1.11ドル台のユーロ安ドル高を試す可能性がある。

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