2021年12月27日号

(2021年12月20日~2021年12月24日)

先週の為替相場

年始のイベントに注目

 12月20日からの週は、オミクロン株による新型コロナ感染拡大が世界的に広がったが、感染者の多くは比較的軽症だとの報道からリスク警戒感が後退した。

 先週前半に1ドル=113円台前半を付けた後はドル買い円売りが優勢となり、24日朝に114円台半ばを超えるドル高となった。

 対円を除けばドル売りが目立った。先週初めの1ユーロ=1.1230ドル近くから週後半に1.1340ドル台までドルが下落。1.1350ドル手前のユーロ売りがドルの上値を抑え、その後は1.13ドル台前半で推移した。

 ユーロ高ドル安とドル高円安を支えに、先週初めの1ユーロ=127円台半ば近くから129円70銭台までユーロが対円で上昇した。ユーロ圏内での新型コロナ感染拡大からオランダなどがロックダウン再開を発表する中、先週初めごろはリスク警戒感が強かったが、その後は世界的な警戒感後退がユーロを支えた。

 ポンドは先週初めの1ポンド=1.31ドル台後半から1.3430ドル台まで買い進まれた。短期金利市場で英イングランド銀行(中央銀行)が2022年第1四半期にも追加利上げするとの観測が強まりポンド買いの材料となった。

 トルコリラの急反転も目立った。物価高騰下での利下げ路線への警戒感から先週初めまではリラ売りが継続。一時1ドル=18.40リラ前後と、リラの過去最安値を大きく更新した。しかし、トルコ政府が20日に為替差損分を補償する預金保護(用語説明1)の方針を発表すると、数時間で25%超のドル安リラ高となり、翌日には一時は1ドル=11.00リラに迫るリラ高となった。

 対円でも1リラ=6円10銭台から8円50銭前後までリラが急騰。週後半には11円台までリラが上昇した。

今週の見通し

 28日まで英国市場が休場のため、海外の取引参加者が本格的に戻るのは週半ばとなりそうだ。ただ、年末にかけて取引の材料となりそうな大型イベントはほとんどなく、積極的な売買は年明けまで手控えられるだろう。

 2022年は米連邦準備制度理事会(FRB)が3月にテーパリング(金融緩和の段階的縮小)を終え、市場予想通りなら6月の利上げサイクル入りとなる。欧州中央銀行(ECB)も3月にPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を終了。既存のAPP(資産購入プログラム)を拡大するが、かなりの規模縮小が見込まれ、量的緩和の縮小への流れが鮮明になる。英イングランド銀行(中央銀行)は12月16日の金融政策委員会(MPC)で利上げを決めた。2022年第1四半期にも追加利上げの可能性があり、日本などごく一部を除いた多くの国で金融引き締めに向けた動きが進むとの見方が強い。

 金融政策の緩和から引き締めへの世界的な転換が想定され、政策決定に影響を与える経済指標が相場に与える影響も大きくなる。年明けは7日に12月の米雇用統計の発表が予定されている。

 米国では23日に発表されたPCEデフレータが前年比5.7%と1982年以来の高水準に上昇。物価と並ぶ二大命題(用語説明2)である雇用情勢が堅調を保てば、利上げに向けた条件が整うことになり、米雇用統計の注目度は一段と高まりそうだ。

 前回11月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が21万人増と、事前予想の55万人増を大幅に下回った。ただ、NFPの基となる事業所調査ベースの数字に対して、失業率計算の基となる家計調査ベースでは雇用者数が113.6万人増と、大幅な乖離も注目された。

 ここまでの大きな乖離が出た理由は不明。ただ、セントルイス連銀のブラード総裁がおそらくNFPに上方修正が入るだろうと発言するなど、雇用はNFPの発表ほど弱くないとの見方が広がっている。

 NFPの内訳は、製造業のうち自動車・同部品部門が1.01万人の減少。サプライチェーン問題が残る中で10月分が1.93万人増と伸びた分の反動が出た。

 サービス業では9、10月と好調だった小売業が2.04万人の減少。10月は17万人増だったレジャー&ホスピタリティ部門が0.57万人増にとどまるなど、これまで好調だった分野で調整が目立った。新型コロナの影響が出やすい業種という点は注意が必要だ。ただ、欧州では11月ごろから新型コロナの感染が再拡大していたが、米国でオミクロンなど株の影響が出て感染が本格的に広がったのは12月。このため、前回調査の時点でコロナ再拡大の影響が強く出ていたとは考えにくく、これまでの雇用増の調整が入ったとみられる。

 今回はNFPが45.0万人増と雇用回復の再加速が予想され、失業率はさらに低下して4.1%が見込まれる。

 市場予想以上の雇用者増加が確認されると、米国の利上げ観測がさらに強まり、1ドル=115円台乗せの可能性もある。

用語の解説

トルコ預金保護 トルコ国民の個人のリラ建て定期預金(3カ月物から12カ月物)が満期を迎えた際、為替変動による預入時の利息と元本の目減りを政府が補填する措置。 
FRBの2大命題 デュアルマンデート(2つの使命)とも呼ばれる米FRB の果たすべき目標。1946年の雇用法を原点とし、1977年の連邦準備改革法によって使命として定められたのは雇用の最大化、物価安定、低い長期金利の3点。低い長期金利は安定した経済環境によって達成されると位置付けられ、雇用最大化とインフレ抑制が二つの使命として認識されている。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(12月)
1月5日00:00
☆☆☆
 前回11月分は61.1と10月分の60.8から上昇し、3カ月連続で60を超える堅調な数字だった。雇用部門が53.3と3カ月連続で改善し、好悪判断の境である50も超えていることも米経済の堅調さを意識させた。今回は60.4と前回からやや鈍化する見込みだが、60台と堅調な水準だ。雇用や新規受注など注目度の高い項目にもよるが、市場予想通りの高水準ならドル買いが強まり、1ドル=115円台をうかがう動きも予想される。
米ADP雇用者数(12月)
1月5日22:15
☆☆☆
 前回11月分は53.4万人増と、3カ月連続で50万人を超える力強い内容だった。今回は42.5万人増と、伸びがやや鈍化するとの予想だが、前回のNFPが21万人増にとどまったことを考えると、水準的にはかなり強めと言える。市場予想以上に雇用が増加していれば、7日公表予定の米雇用統計(12月)への期待から、1ドル=115円台を意識するドル高
が予想される。
米雇用統計(12月)
1月7日22:30
☆☆
 前回はNFPの伸びが予想を大きく下回る21万人増だった。ただ、失業率の好結果などから米国の雇用情勢は好調を維持しているとの見方が大勢。今回のNFPは45万人増が見込まれ、力強い雇用の伸びに戻ると予想されている。ただ、12月の雇用統計では影響が軽微だったとみられるオミクロン株の影響は不透明だ。労働者の多いレストランや小売業などに悪影響が強く出ていれば、市場予想ほど雇用が伸びず、1ドル=113円台を試すなどドルは頭の重い展開になりそうだ。

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