2022年01月17日号

(2022年01月10日~2022年01月14日)

先週の為替相場

ドル高調整が進む

 10日からの週は、ドル売りの動きが優勢だった。年明けに一時1ドル=116円台とドルは対円で高値を付けた後、じりじりと調整の動きが広がった。

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が11日、上院銀行住宅都市委員会の議長再任指名公聴会に臨み、追加利上げに言及。年内のバランスシート縮小開始(用語説明1)の可能性にも触れるなど金融引き締めに前向きな姿勢が目立ったが、想定内の発言としてドル買いの材料にはならなかった。ドルは上値が重い中、12日に発表された12月の米消費者物価指数をきっかけにドル売りの流れが加速した。

 米消費者物価指数は前年度同月比7.0%増と市場予想通り強めの数字だった。しかし、大幅な上振れが市場の一部で予想されていたことや、昨年後半からのドル高基調でドル買いポジションが積み上がり、調整のきっかけを探していた市場の思惑などもあり、一気にドル売りが強まった。

 先週末14日朝のNY市場では一時113円50銭割れまでドルが売られた。その後は買い戻され、114円台前半にドルが値を戻して先週の取引を終えた。17日は米国がキング牧師生誕の日で休場のため、3連休を前にしたポジション調整が入りやすい地合いだった。

 オミクロン株への警戒感が強まる中、先月から先週半ばまで1ユーロ=1.13ドル前後でユーロの上値は重かった。しかし、米消費者物価指数の公表後のドル売りを受けてユーロは上値を試し、14日には1.1480ドル台を付けた。その後は週末を前に調整的なユーロ売りが出て1.14ドルを割り込んだ。

 ユーロは対円で1ユーロ=130円台から131円台前半までのレンジ内で推移した後、週後半にかけてユーロ売りが広がり、一時129円70銭台のユーロ安円高となった。

 2月3日開催の英中銀金融政策委員会(MPC・用語説明2)での追加利上げ観測が強まり、先週半ばからポンドは対ドルで堅調だった。先週初めの1ポンド=1.3530ドル台から米消費者物価指数発表前に1.3650ドル近くまで上昇。同指数発表後はドル売りの強まりを受けて、週後半に1.3750ドルに迫った。その後は週末を前にポンド高の調整が入り、1.3650ドル台にポンドが下落した。

今週の見通し

 年明けのドル高進行後は、行き過ぎたドル高に対する調整が目立つ。ただ、3月にも米FRBが利上げに踏み切る可能性が強まり、年内3回ではなく4回の利上げ観測が強まるなどFRBの金融引き締めに対する前向きな姿勢が予想される。中長期的なドル高の流れが続き、調整一服後はドル高の流れに復帰する可能性が高いだろう。

 ただ、目先のドルは対円で上値が重そうだ。1ドル=116円台からのドル売りの勢いが強かったほか、大幅下落後の反動高を狙ってドルを買い下がってしまった市場参加者があり、ドルの下落過程でも売りポジションはそれほど積み上がっていないと推察されるためだ。

 1ドル=114円台中心のレンジ取引を脱して上値トライの機会をうかがう展開が予想されるが、上値トライより先に113円台までの調整が入ってもおかしくない。

 今週は米国発の材料に乏しく、勢い不足になる可能性もある。しかし、こうした局面に限って大相場の出現が多いもので、方向性をしっかり見極めたい。

 利上げ観測の高まりから米債券利回りの上昇が顕著になれば1ドル=115円台のドル高円安に傾き、4日に付けたドルの直近高値116円35銭前後が視野に入る展開も想定される。

 不透明材料はオミクロン株による新型コロナ感染拡大か。米国の新規感染者数は7日間平均での1日80万人を超え、状況は依然として深刻だ。ただ、増加ペースが鈍化しつつあるとの観測や、米国より先に感染が拡大した南アで新規感染者が一時の1/4以下に収まっていることからリスク警戒感の後退が予想される。感染沈静化観測は対円でのドル買い材料になりそうだが、感染再拡大リスクは否定しきれず、状況をしっかり見極めたいところ。感染拡大の勢いが再び強まると、ドルは対円での直近安値を割り込んで下落する可能性が強まるだろう。

用語の解説

バランスシート縮小 米FRBは新型コロナ感染の流行を受けて量的緩和政策を再開。FRBは米政府昨年発行した国債約1.8兆ドルのうち約9600億ドルに加え、住宅ローン担保証券(MBS)も約5700億ドル購入し、保有資産が急膨張した。金利上昇局面では債券価格が下落し、FRBが保有する債券も値下がりして信用力の低下につながりかねず、FRBはどこかのタイミングで資産を圧縮する必要がある。
英中銀金融政策会合(MPC) 年8回開催される英イングランド銀行(中央銀行)の金融政策会合。正副総裁を含む内部委員5人と外部委員4人で構成する。前回昨年12月のMPCでは大方の予想に反して0.15%の利上げを決めた(投票は8対1)。英中銀は米国や日本などに比べて物価上昇に対する対応が厳しい「インフレファイター」として知られる。昨年12月15日発表された11月の消費者物価上昇率は前年同月比5.1%とインフレ目標値2%の2倍以上あり、金利上昇圧力が強い。

今週の注目指標

独ZEW景況感指数(1月)
1月18日19:00
☆☆
 ドイツの民間調査会社である欧州経済研究センター(ZEW)による景況調査に基づく指標。独Ifo景況感指数の先行指標としても知られる。10月分が22.3まで低下した後、11月は31.7まで改善したが、12月は29.9と再び悪化し、ドイツ経済の厳しい状況を意識させた。今回は改善が予想されるが、市場予想は32.0と低水準。発表値が予想通りでも欧州経済の先行きに対する安心感を高めるには至らないだろう。市場の改善予想に反して前回以下となれば欧州経済への警戒感が増し、1ユーロ=1.1300ドルに向けたユーロ安ドル高となりそうだ。
日銀金融政策決定会合
1月17日・18日
☆☆☆
 年8回の会合のうち4回で発表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が注目される。世界的に金融引き締めに向けた動きが強まる中、日銀は金融緩和政策を長期継続する姿勢を崩していない。ただ、今回の展望レポートでは物価見通しの上方修正が予想され、海外勢を中心に金融政策の正常化観測から円買いが強まり、1ドル=112円台に向けてドル安円高が進む可能性がある。政策金利などは現状維持の見込み。
トルコ中銀政策金利
1月20日20:00
☆☆☆
 トルコ中央銀行は昨年12月の前回会合まで4回連続で利下げした。前回会合の声明文には限られた余地の利用は完了したとの表現があり、利下げ打ち止め観測が広がった。ただ、1月3日に発表された昨年12月の消費者物価指数は前年同月比36.08%と驚異的な水準に上昇していた。利下げが物価を抑えるという経済学の一般的な認識に反する自説を展開するエルドアン大統領が利下げ圧力を強める可能性がある。今回の会合で金利据え置きが決まっても、声明文などで示唆する今後の姿勢には要注意。利下げ再開が示唆されるとリラ売りが急速に進み、対円では今年に入って下値を支える1リラ=8円20銭台を割り込む可能性もある。

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