2022年02月07日号

(2022年01月31日~2022年02月04日)

先週の為替相場

週半ばにかけてドル売りもその後戻す

 1月31日からの週は、週の半ばにかけてドル売りが優勢だった。英紙のインタビューで0.5%の利上げの可能性に言及していたボスティック・アトランタ連銀総裁(用語説明1)が、次回3月15、16日のFOMCでの0.5%利上げに「自分の望む政策ではない」と否定的な見解を表明。今年のFOMCで投票権を持つ地区連銀総裁の中で、積極的な利上げを志向する「タカ派」として知られるジョージ・カンザスシティ連銀総裁(用語説明2)も3月FOMCでの0.5%利上げに「好ましいとは思わない」と消極的な姿勢を示したことで、一部で広がっていた22年ぶりの0.5%利上げ予想が後退。ドル売りにつながった。

 3日の英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)での追加利上げ観測も週前半からのドル売りを誘った。週初の1ポンド=1.33ドル台後半から2日に1.3580ドル台までポンド高ドル安が進んだ。

 3日の英MPCは大方の予想通り0.25%の利上げを実施した。サプライズとなったのは投票の内訳。0.25%利上げの採決は5対4で、反対票を投じた4人は0.50%の利上げを主張していた。この採決結果を受けて追加利上げ観測が急速に高まり、1.3620ドル台までポンド高が進んだ。ドルは対円で頭が重かったが、ポンドの対円レートは週初の1ポンド=154円台半ばから英MPC前に115円台前半に上昇し、MPC後は156円台半ばまでポンド高が進行した。

 その後はイングランド銀行のベイリー総裁が今後数か月で緩やかな引き締めの可能性があると発言。追加利上げには前向きながら大幅利上げには慎重な姿勢を示し、ポンド買いは落ち着いた。

 英MPCが開催された3日、サプライズとなったのは欧州中央銀行(ECB)理事会。金融政策の現状維持は市場予想通りだったが、理事会後の記者会見でラガルドECB総裁はこれまでの会見で繰り返してきた2022年内の利上げを否定する発言をしなかった。さらに、物価上昇に強い懸念を示したことで年内利上げ観測が台頭し、ユーロは急騰した。

 先週は週初の1ユーロ=1.1150ドル割れからユーロはじりじりと上昇し、1.1300ドル前後でECB理事会を迎えた。ラガルドECB総裁発言を受けて1.1450ドルに迫った後もユーロ買いが続き、週末には1.1480ドル台まで買い進まれた。対円では1ユーロ=129円台半ば前後でECB理事会を迎え、理事会後は131円台半ば近くまで急騰。その後も買いが続き132円台を付けた。

 4日発表された1月の米雇用統計もビッグサプライズとなった。2日の米ADP雇用者数が30.1万人の雇用減と、市場予想から50万人近い乖離を見せたこともあり、下振れへの警戒感が強まる中で統計公表を迎えた。

 非農業部門雇用者の増加幅は先週前半の前月比15万人前後の予想から、統計公表直前には12.5万人前後まで見通しが下方修正された。ADP同様に前月比マイナスの可能性も意識される中、結果は46.7万人の増加と市場の下振れ予想を覆して上振れした。昨年12月の雇用増加幅も速報時の19.9万人から51.0万人へ大幅に上昇修正され、労働市場の力強さが意識された。

 この結果を受けて1ドル=115円40銭台までドル高円安が進んだ。その後は週末を前にしたポジション調整に115円20銭前後へドルが軟化した先週の取引を終えた。

今週の見通し

 先週末の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく上回り、一時後退した3月FOMCでの0.5%利上げ観測が再び強まっている。短期金利先物からみた市場の金利予想を示すCME FedWatchでは、3月の0.5%の利上げ見通しが3割を超えてきた。米国の金融引き締め観測が一段と強まり、年内の利上げ見通しは5回と6回が拮抗。5回以上の割合は8割を超えている。FOMCメンバーが経済見通しを示す3、6、9、12月の各FOMCに加えて、5、7、11月のうちいずれかのFOMCでの利上げも織り込まれつつある。

 金融引き締めペース加速の見通しは米株安と米債券利回り上昇につながる。米債利回り上昇はドル買い材料となるが米株安が進めば円売り材料となるだけに、ドル円相場は難しい局面にある。

 ただ、先週1ドル=114円10銭台までドル高の調整が入ったため、ドル買いが入りやすい地合いにある。米長期債の利回り次第でドルは上値トライの可能性が十分にある。10日発表予定の1月の米消費者物価指数は、39年半ぶりの高水準だった前回(前年同月比7.0%増)を上回ると予想される。米国の利上げ観測が継続し、1ドル=116円台に向けたドル高円安が予想される。

 ユーロは対ドル、対円とも上昇が予想される。これまで金融政策の引き締め方向への転換に慎重だったラガルドECB総裁がタカ派姿勢を示しており、中長期的な流れが変わる可能性がある。1ユーロ=1.11ドル台から大幅高となったため1.14ドル台後半での買いにはやや慎重な姿勢が見られるが、ユーロの押し目は限定的で、1.15ドル台を試す可能性が高そうだ。対円は対ドル以上にユーロが大きく上昇していだけに132円台での買いはやや慎重な雰囲気がある。しかし、株安の中でも131円台が維持されれば、ユーロ高円安が一段と進む展開が予想される。

用語の解説

ボスティック・アトランタ連銀総裁 ラファエル・ボスティック(Raphael Bostic)アトランタ地区連銀総裁。NY市出身。ハーバード大学を出た後、スタンフォード大学で修士号・博士号を取得。FRBのエコノミストを務めた後、米住宅都市開発省などを経て南カリフォルニア大学で教鞭を取っていた。2017年より現職。政策スタンスは比較的中立と見られていたが、1月に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで0.5%の大幅利上げの可能性に言及した。FOMCでは昨年投票権を持っており、次は2024年になる。
ジョージ・カンザスシティ連銀総裁 エスター・ジョージ(Esther George)カンザスシティ地区連銀総裁。ミズーリ州セントジョセフ出身。ミズーリ・ウェスタン州立大学を出た後、ミズーリ大学で修士号を取得。1982年にカンザスシティ連銀に入行し、2011年より現職。今年のFOMCで投票権を持つ。昨年5月時点で物価の上振れを一時的として軽視するべきではないと発言するなど、物価高を強く警戒する「タカ派」姿勢で知られている。

今週の注目指標

ラガルドECB総裁欧州議会公聴会出席
2月8日00:45
☆☆☆
 3日のECB理事会は市場予想通り現状維持を決定。声明でも従来の慎重姿勢を継続しているように見えた。しかし、ラガルド総裁は記者会見で記録的な高インフレへの強い警戒感を示し、従来強調してきた年内利上げを排除する発言がなかった。これを受けて市場では年内にECBが利上げに向かうとの見方が強まった。総裁就任以来、これまで慎重姿勢が目立ったラガルド氏の姿勢の変化が市場を驚かせた感がある。欧州議会公聴会では、総裁が物価高への警戒感をどこまで強く示すかが注目される。内容次第では次回3月10日開催予定の理事会で将来の金融政策の方針を示す「フォワードガイダンス」変更の思惑が強まり、1ユーロ=1.15ドル超えを目指すユーロ高となる可能性がある。
米消費者物価指数(1月)
2月10日22:30
☆☆☆
 米雇用統計が強く出たことで、市場では3月のFOMCでの0.5%利上げ予想が出てきたほか、年内5回以上の利上げも予想される。米消費者物価指数は1月発表の2021年12月分が前年比7.0%と1982年以来の高水準を記録した。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアでも5.5%と1991年以来の高水準だった。今年1月分は前年比+7.3%、同コア前年比+5.9%と物価上昇が加速する見込み。FRBの積極利上げ観測が一段と強まってドルが買われ、1ドル=116円台を意識する流れが予想される。
メキシコ中銀政策金利
2月11日04:00
☆☆☆
 メキシコ中央銀行は10日、金融政策理事会を開催する。メキシコ中銀は昨年6月から5会合連続で利上げを実施。前回12月は金利の引き上げ幅が0.5%と大きかっ。ただ、メキシコの物価上昇は衰えず、昨年11、12月は7.3%台と高水準だった。9日発表される1月の消費者物価指数は勢いこそやや鈍るが、7.01%上昇が見込まれており、水準はかなり高い。こうした状況を受けて今回は前回に続いて0.5%の利上げが予想されるが、今回は0.25%に利上げ幅を戻すとの見方もある。政策金利を0.5%引き上げ、今後の追加利上げ姿勢も示せば、1ペソ=5円60銭台に乗せる展開となるだろう。

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