2022年03月14日号

(2022年03月07日~2022年03月11日)

先週の為替相場

ウクライナ情勢にらみ不安定な展開

 ウクライナ南東部ザポリージャ原発をロシア軍が占拠したことや米政府がロシア産原油の禁輸を検討するとの報道に、先週初めはリスク警戒感が強まった。

 3月に入って下落基調をたどっていたユーロの対ドルレートは一時1ユーロ=1.0800台へ一段と下落。対円では1ユーロ=124円40銭前後までユーロ安が進んだ。

 先週は11日とほぼ同水準の1ドル=114円台後半のドル安円高でスタートした後、ドルの買い戻しが優勢となった。1ユーロ=1.08ドル台を維持してユーロが値を戻したこともドルを支えた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領が、北大西洋条約機構(NATO)加盟に消極的な発言をしたことが停戦への期待を生み、円売りの材料となった。9日の欧米市場に続いて10日のアジア市場で株価が上昇したことも円売りを誘い、1ドル=116円台に乗せるドル高円安となった。

 10日発表された2月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.9%と約40年ぶりの高水準だったこともドル買いを誘った。原油高騰から3月のCPIは8%を超えるとの見方が広がったこともドル買い要因。

 3月15、16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%利上げが確定的。次のFOMC(5月3、4日)での0.5%の大幅利上げ観測もドルを押し上げ、1ドル=117円台と2017年1月以来のドル高に振れた。

 10日に開かれた欧州中央銀行(ECB)定例理事会では、利上げに積極的な「タカ派」姿勢が鮮明となり、1ユーロ=1.11台のドル安ユーロ高となった。

 2月のECB理事会ではタカ派姿勢に傾いたが、ロシアのウクライナ侵攻で欧州経済の先行き不透明感が強まったため、金融引き締めに慎重な姿勢に戻るとの見方が広がっていた。しかし、毎月400億ユーロとしていた資産購入プログラム(APP)(用語説明1)を4月に400億ユーロ、5月に300億ユーロ、6月に200億ユーロと減額し、第3四半期は次回の経済予測に基づいて判断することを決定。中期的なインフレ率が低下しないと予想される場合、第3四半期にAPPを終了することとした。政策金利はAPP終了後しばらくして引き上げるとし、年内の利上げの可能性を残した。

 ECB理事会の方針を受けていったんユーロ買いドル売りに傾いたが、ドル全面高の勢いが勝って週末にかけて1.0900近くのユーロ安ドル高に動いた。

 対円では1ユーロ=128円台に乗せると、対円でのドル買いに支えられてユーロは高値圏でもみ合って一時129円台を回復した。しかし週末にかけてユーロ売りが強まり、127円台にユーロが下落している。

今週の見通し

 物価高への警戒感と、ウクライナ情勢と米連邦公開市場委員会(FOMC)などをにらみんだ展開が予想される。

 10日発表された2月の米消費者物価指数が前年同月比+7.9%と40年ぶりの高水準を記録。11日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(用語説明2)の中で示された1年先の期待インフレ率が5.4%と1981年11月以来の高水準となり、物価高の進行が相次いで確認されたことがドル買い要因になっている。

 今週15、16日のFOMCでは0.25%の利上げが確定的。エネルギー価格などの高騰から3月は2月の7.9%を上回る高いインフレ率が予想される、5月以降のFOMCでの大幅利上げ観測が強まっている。

 FOMC声明文やFOMC後のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長による定例記者会見で、今後の大幅利上げ示唆や物価高を強くけん制する発言があればドル高が加速する可能性がある。

 ウクライナ情勢では、今週予定されている4回目の停戦交渉への期待感が高まっているが、先行きは依然として不透明で、ユーロは不安定な動きが予想される。

 ユーロ次第の面もあるが、ドルは対円で基本的にしっかりとした値動きが予想され、1ドル=118円超えを試す展開。FOMCの結果次第で中長期的に120円を意識する動きとなる可能性もある。

用語の解説

資産購入プログラム(APP) ECBによる資金供給策の一つで、2015年3月に月額600億ユーロで開始。その後は金額の変更やほぼ実施されない期間(2019年1月から10月)を経て、2019年11月に月額200億ユーロで再開。新型コロナウイルス感染拡大を受けて実施されたパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)が2022年3月で終了したことを受けて、拡充が発表されていた。
ミシガン大学消費者信頼感指数ミシガン大学サーベイ・リサーチセンター(Survey Research Center - University of Michigan)が毎月発表する米国の消費者マインドを表す指標。1964年の水準を100として算出している。速報は300人を対象に毎月10日前後の金曜日に、確報は500人を対象に最終金曜日に発表する。調査対象人数が少ないため、毎月の指数のブレが比較的大きいとされる。

今週の注目指標

米小売売上高(2月)
3月16日21:30
☆☆☆
 前回1月分は昨年12月分が-2.5%と弱めに出た反動もあり、前月比+3.8%と事前予想の+2.0%を超えた。今回の予想は+0.4%と前回比で伸びは鈍化するが、前回が高水準だったため、プラス圏を維持するだけでも消費の堅調さを印象付けそうだ。自動車を除くコアは+0.8%と全体の数字よりも大きな伸びが予想される。半導体などの不足で自動車の供給が滞り、価格上昇が著しくなっていることの影響が意識される。予想前後かそれ以上の好結果だとドル買いに安心感が生まれ、自動車関連の弱さが目立つと警戒感を呼びそうだ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月17日03:00
☆☆☆
 2020年3月のパンデミック対応以降続いてきたゼロ金利政策の終了と0.25%の利上げが確実視される。2月16日発表のFOMCの議事要旨(1月25、26日開催)は、長引く物価上昇に強い警戒感を表明し、早期の利上げにも言及している。パウエルFRB議長は3月2日に米下院金融サービス委員会の議会証言で3月FOMCでの利上げ実施を表明し、ウクライナ危機に伴う不確実性に注意しつつ慎重に引き締めを実施していく姿勢を強調した。注目は声明文、パウエル議長による記者会見、年4回発表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)の3つ。声明文や記者会見では次回以降の利上げに向けた姿勢が注目される。パウエル議長は議会証言でインフレが高止まりを受けて大幅利上げを実施する可能性を示唆している。前回の昨年12月公表されたSEPでは、2022年末時点でのインフレ見通しについて、PCEデフレータを2.6%(9月時点で2.2%)、コアPCEデフレータを2.7%(同2.3%)と予測。SEPの中で示されるFOMC各メンバーによる年末時点での政策金利水準見通しの分布を示す「ドットプロット」では0.75-1.00%と、1回0.25%として年内3回の利上げ見通しが10名と最多だったが、これらの見通しは上方修正が濃厚だ。市場の今年末の政策金利予想は1.75-2.00%が中央値で、今年残っているFOMC全7回での0.25%利上げ実施に相当する。FOMCメンバーによる物価や金利見通しの大幅修正で大幅利上げの可能性が一段と強く意識されると1ドル=118円に向けたドル高も予想される。
英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)
3月17日21:00
☆☆☆
 英中銀は3会合連続で政策金利を引き上げる見込み。前回会合では委員9人のうち5人の賛成で0.25%の利上げを決定。顕著な物価上昇を受け、残り4人は現行制度上で初の0.5%利上げを主張したため、前回会合の直後に0.5%の利上げ観測が台頭した。もっとも、その後ロシアのウクライナ侵攻で先行き不透明感が高まり、今回も0.25%の利上げにとどまるという見方が大勢。予想に反して0.5%の利上げならポンド買いが強まり、0.25%利上げでも前回同様に0.5%を主張する委員が多ければポンド買いの材料となりそうだ。円安動向次第で1ポンド=155円超えが視野に入る。

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