2022年04月04日号

(2022年03月28日~2022年04月01日)

先週の為替相場

先週初に一時125円台のドル高円安

 3月28日にドル高円安が進み、2015年8月以来の1ドル=125円台を付けた。

 日銀は28日午前、指定した利回りで国債を無制限に購入する指値オペ(用語説明1)を通告した。前回2月の指値オペ通告では買い入れ対象とする10年国債の流通利回りが日銀の設定した0.25%に届かず、応札はなかった。しかし、今回は利回りが0.25%に達し、3年8か月ぶりに応札があった。午後には初の試みとなる同日2回目のオペ実施を通告。さらに29~31日の連続指値オペ実施も予告した。

 指値オペは長期金利上昇を阻んだが、国債の無制限購入が金融緩和の強化と受け止められた。米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げ観測の強まりもあって、ドル高円安が急加速した。28日午前の指値オペ通告後、122円台前半から123円を試すドル高となった。午後の同日2回目の指し値オペ通告と29日からの連続指値オペ予告で円売りが広がり、125円10銭前後までドルが買い進まれた。

 黒田ライン(用語説明2)と呼ばれる125円を超える円安への警戒感もあり、同日の海外市場では123円10銭台まで調整が入った。もっとも、東京市場の29日午前に124円30銭前後を付けるなどドル高円安の流れが続いた。

 市場は政府・日銀の円安けん制を警戒し、30日に黒田東彦日銀総裁が首相官邸に入ったと報じられると、ドル安円高に動いた。

 その後は年度末を前にした大口注文もあり、121円台前半から122円台半ばのレンジ取引が続いた。

 週末にかけては4月1日公表の3月の米雇用統計で雇用の改善傾向が確認されるとの見方からドルは対円でしっかりとした値動き。雇用統計は非農業部門の就業者数が市場予想を下回ったが、3月発表の2月データが上方修正されたほか、失業率が市場予想を下回り、想定内ではあるが雇用の順調な回復を印象付けた。

 雇用統計の発表後はドル買いが優勢となって123円台を回復。その後は米ISM製造業景気指数の下振れから調整が入り、122円台半ばで先週の取引を終えた。

 先週初めドル高円安を受けて1ユーロ=137円50銭台のユーロ高円安となった後、ユーロの対円レートはもみ合いに入った。ドル高一服とともに1ユーロ=135円10銭台までユーロが緩んだ後はウクライナとロシアの停戦協議が進展しているとの見方もあり、ユーロは対ドル、対円で買われた。ユーロは下がると買いが入り、振れ幅が目立った。

 先週初めの1ユーロ=1.0950ドル前後から一時1.1180ドル台までユーロ高ドル安となった後、調整が入り1.1050ドル前後で先週の取引を終えた。

今週の見通し

 米雇用統計は非農業部門の新規就業者数が市場予想を下回ったが、水準自体は高く、3月発表された2月分は上方修正された。同日発表された米ISM製造業景気指数は市場予想を下回ったが、物価高が需要を抑えた面があるとみられ、次回(5月3、4日)以降の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が継続している。

 今週の注目は6日(日本時間7日午前3時)に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(3月15日、16日開催分)。3月会合では、3年3カ月ぶりに政策金利の引き上げを決定。FOMCメンバーが予想する年末時点の政策金利を示すドットプロットは、年内すべての会合で0.25%の利上げし、2023年も3回から4回の利上げを行うとの見通しとなり、市場予想を超える利上げペースが示された。FOMC後にパウエルFRB議長が記者会見し、バランスシートの縮小を早ければ次回5月に決定する可能性を示すなど、金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢を強く印象付けた。議事要旨では、タカ派姿勢の背景や今後の0.5%利上げについてどこまで議論を深めていたかが注目され、大幅利上げ観測が強まればドルが買わるだろう。

 1ドル=125円台を付けた後はいったんドル高調整に傾いたが、中期的な流れはまだドル高円安の方向とみられる。

 ユーロはウクライナ情勢次第。ロシア軍が首都キーウ近郊から撤退し、情勢の改善が期待されているが、先行き不透明感は根強く、高値でのユーロ買いには慎重。

用語の解説

指値オペ 日銀が日々の金融市場調節で行う通常のオペ(公開市場操作)は買い入れ金額を明示して実施するのに対し、指値オペは日銀が指定した利回りで国債を無制限に買い入れる。日銀は現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で、長期金利の指標となる10年物国債の利回りをゼロ%を基準に上下0.25%の範囲内で維持するとしている。0.25%での指値オペは長期金利を0.25%以下に抑制する作用がある。
黒田ライン 「黒田バズーカ」とも呼ばれた2013年4月からの積極的な金融緩和政策でドル高円安が進み、2015年に1ドル=125円台を付けた。黒田総裁は2015年6月10日の衆議院財務金融委員会で、「ここからさらに円安に振れることは、普通に考えるとなかなかありそうにない」と答弁。この発言が円安警戒と受け止められて直後に円高が進んだため、125円が黒田ラインと呼ばれている。

今週の注目指標

豪準備銀行(中央銀行)政策金利
4月5日13:30
☆☆☆
 先月発表された2月の豪雇用統計は、失業率が4.0%と過去最低水準に並んだ。失業率は豪中銀の予想を超えるペースで低下し、政策金利の引き上げ観測が広がった。ただ、豪中銀は量的緩和の終了を決めた2月の会合で、消費者物価指数の動向を確認する意向を示している。豪州の基調インフレ率はインフレ目標の範囲(2~3%)に収まっているため、今回は金利据え置きが濃厚だ。夏ごろの利上げが予想される中、声明などで利上げに向けた姿勢が強調されれば、1豪ドル=93円台に向けた豪ドル高も。
米ISM非製造業景気指数雇用統計(3月)
4月5日23:00
☆☆☆
 1日に発表された3月のISM製造業景気指数は57.1と、市場予想(59.0、2月は58.6)に反して鈍化した。好悪判断の分かれ目となる50は上回ったが、2020年9月以来の低水準だった。注目度の高い新規受注が61.7から53.8まで8ポイント近く落ち込んだほか、生産も58.5から54.5に低下し、景況感の悪化が警戒されている。非製造業景気指数の市場予想は58.4(前回56.5)の見込みだが、製造業と同様に市場予想を覆して低下すれば先行きの景気停滞が警戒され、1ドル=121円台に向けたドル安円高も想定される。
米FOMC議事要旨(3月15日、16日開催分)
4月7日3:00
☆☆☆
前回(3月15、16日)のFOMCの採決では賛成8人で0.25%利上げが決まり、超タカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁は0.5%の利上げを主張した。ただ、その後のパウエルFRB議長らFOMCメンバーは講演会などで今後の大幅利上げに言及。金融緩和を指向する「ハト派」寄りとされるNY連銀のウィリアムズ総裁でさえ同様の見通しを示し、今後の大幅利上げの可能性が増しているように見える。議事要旨公表を受けて大幅利上げ観測が強まれば1ドル=124円台に向けたドル高円安も予想される。

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