2022年04月11日号

(2022年04月04日~2022年04月08日)

先週の為替相場

ドル高基調強まる

 4月4日からの週はドル買いが優勢となった。3月28日に2015年8月以来のドル高円安となる1ドル=125円台を付けた後、3月末に121円台前半に軟化。週末4月1日にかけて122円台まで買い戻された。週明けも同水準でスタート。いったんは123円00銭前後で足踏みの後、ドル買いが一段と強まった。

 ブレイナード米連邦準備制度理事会(FRB)理事(用語説明1)が次の連邦公開市場委員会(FOMC、5月3、4日)でバランスシートを急速に縮小すべきだと発言。投票権を持つFOMCメンバーでも金融緩和指向の強いハト派の代表格と目される同氏の発言を機に積極的な金融引き締め観測が広がった。

 1ドル=123円台に乗せた後もドルは騰勢を保って123円60銭前後に上昇。その後も押し目がほとんどないまま124円台まで買い進まれた。

 黒田東彦日銀総裁がかつて円安をけん制した「黒田ライン」の125円が意識される中、124円を超えるドルの上値追いに慎重な姿勢が見られる中、前回(3月15、16日開催)FOMCの議事要旨公表を123円台後半で迎えた。

 FOMC議事要旨で、FRBのバランスシート縮小について、総額950億ドル(国債600億ドル、住宅ローン担保債券350億ドル)を上限とすることが妥当とされたことが判明した。前回の縮小局面と比べてかなり急速な縮小だが、ブレイナード理事発言で市場の金融引き締め観測が強まっていたこともあり、議事要旨公表後はいったんドル売りに傾いた。もっともドル高調整は123円台半ば割れにとどまり、その後はドル高基調に復帰した。

 議事要旨では、3月のFOMCでウクライナ侵攻がなければ複数メンバーが0.5%の大幅利上げを支持していた状況が確認された。このため、5月以降の大幅利上げ観測が強まり、米債利回りの上昇を招く形でドル買いが勢いを増し、4月1日の海外市場では124円60銭台までドルが上昇した。

 ドル高基調の中、ユーロも対ドルで売られた。3月末の1ユーロ=1.1180ドル台からユーロの下落基調が続き、先週は1.10ドル台半ばで取引が始まり、週末には1.0830ドル台までユーロ安ドル高が進んだ。

 ウクライナの首都キーウ(用語説明2)近郊で多数の民間人が殺害されたことを受けて、欧米が対ロシア制裁強化に乗り出す一方、欧州経済への悪影響が懸念され、ユーロには売りが出やすくなっている。

 対ドルでのユーロ売りと円売りが交錯し、1ユーロ=135円00銭を挟んで推移している。

今週の見通し

 米国の大幅利上げ観測が強まり、5月のFOMCでの0.5%利上げはほぼ織り込まれた。年内にあと6回あるFOMCのうち複数回の大幅利上げも予想され、ドルの買い材料になっている。

 一方、世界的に金融引き締め圧力が増す中、日銀は「必要であれば躊躇なく追加緩和する」との従来からの姿勢を固持し、金融緩和を長期化する姿勢を貫いている

 日本と海外の金利差拡大から外貨買い円売り基調が鮮明となる中で、特にドル買い円売りの流れが顕著になりそうだ。

 前回のドル高円安局面では、2105年6月5日に付けた125円86銭をドルの高値に急速な円安の調整が進んだ。当時は黒田日銀総裁が衆院財務金融委員会で、「これ以上の円安はありそうにない」などと発言し、円安けん制と受け止められたことがドル高円安が調整に転じるきっかけとなった。

 最近の円安局面で黒田総裁は金融緩和を粘り強く続ける姿勢を強調。日銀は円安を容認するのか、今後けん制発言を繰り出すのか、市場は判断を迫られている。

 市場のトレンドはまだドル高とみられ、1ドル=135円前後にドルが上昇した2002年以来約20年ぶりのドル高円安が予想される。今後の展開次第では、130円の大台に向けたドル上昇も十分に視野に入ってくるだろう。

 日本や中国、スイスなど一部を除いて金融引き締め姿勢が強まる中で、ユーロやポンドなどドル以外の通貨も対円で堅調。ただ、欧州通貨はウクライナ情勢が不透明要因として残り、ドルの対円レートほどきれいな上昇とならない可能性もある。

用語の解説

ブレイナードFRB理事 ウェズリアン大学卒、ハーバード大学で経済学博士号取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)准教授を経てクリントン大統領副補佐官などを歴任。オバマ政権では2010~2013年、国際担当の財務次官を務めた。2014年にFRB理事に就任。現在FRB副議長に指名され上院銀行委員会で承認済み、上院本会議の承認待ち。FRB理事・地区連銀総裁らで構成するFOMCメンバーの中でも特に景気対策に熱心で、金融緩和指向の強いハト派の筆頭格として知られる。バイデン政権でアメリカ国家安全保障会議インド太平洋調整官及び大統領副補佐官を務めるカート・キャンベル氏は夫。
キーウ 日本政府は31日、ウクライナ政府の意向に応え、ウクライナの地名表記を従来のロシア語の発音由来から、ウクライナ語発音由来に変更するとを発表した。首都キエフはキーウに、主要都市ではハリコフがハルキウ、オデッサがオデーサなどに変更された。原発のあるチェルノブイリはチョルノービリとなる。

今週の注目指標

米消費者物価指数(3月)
4月12日21:30
☆☆☆ 
 前回2月分の消費者物価指数は前年比+7.9%に上昇し、1982年以来約40年ぶりの高い伸びを示した。1月分までと同様に、ガソリン価格が前年比+38.0%と大幅に上昇して全体を押し上げた。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰も寄与。部品供給網の寸断による自動車生産への影響から、中古車が前年比+41.2%、新車でも+12.4%と大幅に値上がりし、ガソリンと並んで消費者物価を押し上げた。
 雇用が堅調に推移する中、大幅な物価上昇が今後の大幅利上げ観測につながっている。今回の市場予想は前年比+8.3%、前月比も+1.1%と前回を超える伸びが見込まれている。予想と同水準または予想を超える高い伸びが確認されると、1ドル=127円に向けてドル買いが加速する可能性がある。
カナダ中銀政策金利
4月13日23:00
☆☆☆
 カナダ銀行(中央銀行)は前回(3月2日)の定例理事会で、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げた。利上げは2018年10月以来。3月16日に発表された2月のカナダ消費者物価指数が前年同月比+5.7%と1981年8月以来約30年ぶりの高水準に上昇。カナダ銀行のコジッキ副総裁が利上げペースと利上げ幅を次回理事会で活発に議論すると発言したこともあり、今回は0.5%の利上げが見込まれる。事前予想通り0.5%の利上げが決まり、今後の利上げ継続にも前向きな姿勢が示されると1カナダ=100円超えに向けたカナダ高が期待されることになるだろう。
米小売売上高(3月)
4月14日21:30
☆☆☆
 1月の米小売売上高は前月比+4.9%(速報値は+3.8%)と大幅に増加したが、12月分の前月比-2.5%(速報値は-1.9%)の反動が大きい。前回2月分は前月比+0.3%と伸びは鈍化したが、しっかりとした数字だった。今回は前月比+0.6%が見込まれ、堅調な雇用情勢が個人消費の継続的な伸びを支える構図となりそうだ。前回の内訳はガソリン高騰を受けたガソリンスタンド売上高が+5.3%、自動車の値上がりによる自動車・同部品の売上高が+0.8%と小売売上高を支えていた。米国で自動車は生活必需品であり、旺盛な個人消費より物価高の影響という面が大きい。3月は2月に比べてガソリン価格が大幅に上昇しており、小売売上高を押し上げるだろう。ただ、物価上昇が急速に進む中、その他の部門の売り上げ減少が全体の伸びを抑えると、景気の先行きに対する警戒感から123円台までドル高調整が進む可能性がある。

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