2022年04月18日号

(2022年04月11日~2022年04月15日)

先週の為替相場

ドル高円安が加速

 4月11日からの週はドル買い円売りが優勢だった。先々週の1ドル=122円台前半からドル高基調が継続し、先週は124円台前半で取引がスタート。日銀の黒田東彦総裁が同日の日銀支店長会議(用語説明1)あいさつで「必要があれば躊躇なく追加緩和」と金融緩和を粘り強く続ける姿勢を強調すると、円売りが加速した。

 米国の急速な金融引き締め観測を背景に米債利回りが上昇したこともドル買い材料となって節目の125円を明確に超えると125円70銭までドルが買い進まれ、2015年に付けたアベノミクス下でのドル高円安のピーク125円86銭前後が意識された。

 円はドル以外の幅広い通貨に対しても下落する全面安となり、1ユーロ=135円台前半から2018年1月以来の137円10銭台までユーロ高円安が進んだ。

 12日には鈴木俊一財務相が円安について「緊張感を持って注視している」と発言すると、一時125円11銭前後までドルが軟化した。しかし、米国債利回りの上昇を受けてドル買いが強まり、同日の海外市場で125円70銭台を付けるなどドルは対円で堅調だった。

 円の全面安はドル高が主導し、ユーロなど他通貨は円に対して上値がやや重かった。11日の1ユーロ=1.0930ドル台から1.0850ドル近くまでユーロ安ドル高となった。

 12日発表された3月の米消費者物価指数(CPI)は全体の数字が市場予想を上回る一方、エネルギー・食品を除いたコア指数は市場予想を下回った。5月11日発表予定の4月の消費者物価指数の見通しが3月分を下回り、物価上昇率のピークアウト観測が広がった。このため、いったんドル売りが優勢となって1ドル=125円を割り込み、短期投資家のストップロスを巻き込んで124円70銭台を付け、1ユーロ=1.09ドル台を回復するなどドルは全面安となった。

 しかし、ドルは売りが一巡した後、買い優勢に転じた。NY原油先物高がインフレ警戒感を強め、ドルが買い直された。米CPI発表前の水準を割り込んでユーロ安ドル高に振れるとドルは対円でも上昇し、125円台を回復した。

 週前半と同様に1ドル=125円86銭を意識する展開が続いたが、13日夕方に黒田総裁が現在の強力な金融緩和を粘り強く続けると発言したことで、ポイントを超えてドル買い円売りが加速。126円30銭台と2002年以来のドル高円安圏まで上値を伸ばした。

 ドルは対円で高値を付けた後、軟化。13日発表された米生産者物価指数の上昇にもかかわらず、米国債利回りは低下傾向が強まり、1ドル=125円00銭台、1ユーロ=1.0920ドル台までドルがそれぞれ下落した。

 ドル安が一服した後、14日の海外市場でドル買いが復活。米輸入物価指数の上昇がインフレ懸念につながったことや、欧州中央銀行(ECB)定例理事会後のユーロ売りドル買いがドル全面高を誘ったことが対円でのドル買いを呼び、1ドル=126円台を回復した。「グッドフライデー」で取引参加者の少ない15日は126円台後半までドル高が進んだ。

 ECB理事会後に1ユーロ=1.09ドル台から1.0750ドル台までユーロが急落した。ECBは声明文で、現行の資産購入プログラム(APP)を今後縮小していき、第3四半期に終了する可能性が強まったとした。終了の可能性が強まったとの表現はあるが、時期的にはこれまでの方針を踏襲した形。ユーロ圏の3月の消費者物価指数が前年同月比+7.5%と、2月の+5.9%から大幅に上昇したため利上げの前倒し観測が強まっていたが、前回声明文とほぼ変わらない金融引き締めペースが示されるとユーロが売られた。

 対円では、1ユーロ=137円手前までユーロが上昇した後、135円50銭台へ下落している。

 ユーロを買い戻す動きあったが、1ユーロ=1.08ドル台前半でユーロの上値は重くなった。対円では、ドル高円安もあって、ECB理事会前の水準までユーロが買い戻されている。

今週の見通し

 ドル高円安の流れ継続へ。

 2002年以来のドル高円安圏とあって、高値警戒感もある。ただ、米国の積極的な引き締め観測が一段と強まり、年内残り6回全ての連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げだけでなく、複数回の大幅利上げも織り込まれつつある。

 米国では物価上昇が約40年ぶりのハイペースで進み、賃金は堅調な雇用情勢を背景に上昇しているが、物価高に追い付いていない。1日発表された3月の雇用統計では失業率が市場予想を下回って労働需給の堅調さが再確認され、平均時給(用語説明2)は前月比+0.4%、前年比では+5.6%と2020年5月以来の大幅な伸びだった。しかし、インフレ率には届かず、実質的な収入減となっている。

 14日に発表された米小売売上高は前月比+0.5%と堅調だった。しかし、エネルギー価格高騰で増加したガソリンスタンドの売上高を除くと前月比-0.3%に落ち込んでいる。

 家計に悪影響を与える物価高にFRBは積極的な対応を迫られており、米国の金利上昇はしばらく続く可能性がある。

 一方、日本の金融当局は急激な円安に警戒感を示す一方、金融緩和政策を継続する姿勢を変えていない。米国にとどまらず世界的に引き締め姿勢が強まる中、日本は中国などごく一部の国と並んで緩和姿勢が目立つ数少ない国となっており、円売りが出やすい。

 急速なドル高への警戒感や当局による円安けん制を受けたスピード調整である程度の変動幅は見込まれるが、市場のトレンドは依然としてドル高円安方向とみられ、1ドル=129-130円に向けて上昇する可能性がある。

用語の解説

日銀支店長会議 日本銀行が3カ月ごとに開催する正副総裁、審議委員、支店長らが出席する会議。地元企業からの聞き取り調査などを基に地域経済や金融状況について日銀の各支店長が報告する。同会議に向けた本支店の地域経済担当部署による報告書がさくらレポート(地域経済報告)。
平均時給 米国の雇用統計は非農業部門雇用者数などを調べる事業所調査と失業率・労働参加率などを調べる家計調査で構成され、事業所調査の対象の1つとして平均時給がある。業種別の時給も発表される。

今週の注目指標

米ベージュブック
4月21日03:00
☆☆
 米FRBは20日、地区連銀経済報告(ベージュブック)を発表する。米国の大幅な物価高は家計や企業行動に大きな影響を与える。アフターコロナでの需要拡大も影響しているが、直近の物価高はエネルギー価格上昇の影響が大きく、ガソリンなどを除いた消費を萎縮させれば、物価高と景気停滞が併存するスタグフレーションへの懸念が強まる。各地区の経済状況も注目され、雇用の堅調さや物価高への警戒感などが強調されると、大幅利上げへ観測をさらに強めて1ドル=127円台に向けたドル高が予想される。
IMFパネル討論会
4月22日02:00
☆☆☆
 国際通貨基金(IMF)主催のパネル討論会にパウエル米FRB議長とラガルドECB総裁が出席し、パウエル議長が5月以降の大幅利上げについてどう発言するかが注目される。FRBが金融引き締めに前向きな姿勢を示す一方、ECBは先週の理事会で市場が予想したほどの積極性を見せなかった。ただ、ユーロ加盟国の物価高騰が深刻化する中、利上げ開始は従来想定されていた9月理事会ではなく、7月理事会を見込む動きが出つつある。ラガルド総裁が利上げ開始に慎重な姿勢を見せ、パウエル議長が利上げに前向きな姿勢を強調すれば、ユーロ売りドル買いが強まり、ユーロは先週の安値を下回って1.0750ドル割れを試す可能性もある。
フランス大統領選挙決選投票
4月24日
☆☆☆
 10日実施されたフランス大統領選挙第1回投票では、再選を目指す現職のマクロン大統領が得票率1位で27.84%を獲得し、急進右派の国民連合のルペン候補が23.15%で2位、急進左派のメランション候補は21.95%で3位だった。4位のゼムール候補は7.07%、5位以下は5%未満とマクロン氏らと大きな差が開いた。得票率が過半数を超える候補がいなかったため、1位のマクロン氏と2位のルペン氏が24日、前回大統領選に続いて2度目の決選投票に臨む。前回は66.1%対33.9%でマクロン氏が圧勝。しかし、今回は両者の支持率は伯仲しており、接戦が予想される。マクロン氏優勢だが、北大西洋条約機構(NATO)離脱などを訴えるルペン氏が勝利すればユーロ急落などの混乱が予想され、1ユーロ=1.05ドルを試す展開も想定される。

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