2022年04月25日号

(2022年04月18日~2022年04月22日)

先週の為替相場

一時1ドル=129円台

 4月18日からの週、一時1ドル=129円台を付けるなどドル買い円売りが強まった。米国の積極的な金融引き締め観測がドル買いを誘い、日本の金融緩和維持の姿勢が円売りにつながった。世界的に物価が高騰する中、欧州中央銀行(ECB)も7月の政策金利引き上げを示唆するなど世界的に金融引き締め姿勢が強まっており、緩和姿勢を強く示す日本や中国などの通貨が売られた。

 先週初めはイースターマンデー(復活祭後の月曜)で落ち着いた立ち上がりを見せ、1ドル=126円台でのもみ合い。NY市場ではドル買い円売りがやや強まり、19日朝の東京市場で127円台に乗せると、同日午後に128円台へドルが買い進まれた。その後もドル高の勢いは止まらず、20日東京市場で129円40銭前後と、2002年5月以来のドル高円安となった。

 松野博一官房長官の円安けん制発言などで円買いが入る場面もあったが、ドルはすぐに値を戻した後に上値を試すなど円安の勢いが続いた。米国が積極的な金融引き締めに向かうとの見方を背景とする米国債利回りの上昇も円に対するドル上昇を支えた。

 その後ドル高が一服したが、日銀が3月末以来となる指値オペを通告すると、再び129円30銭台を付けた。

 心理的な大きな節目である130円を前に高値警戒感が広がる中、磯崎仁彦官房副長官の急激な為替変動望ましくないなどの発言をきっかけにドル高の調整が入り、短期筋の利益確定売りも交えてドル安円高に傾いた。

 主要7・20カ国(G7・G20)財務相中央銀行総裁会議を前にしたドル買いは小休止。一時2.97%台を付けていた米10年債利回りが2.85%前後まで下げたこともあり、20日NY市場午前には127円台前半まで下落し、同日朝の東京市場の高値から2円近いドル高調整となった。

 その後は128円台後半まで一時回復したが、22日午後の東京市場では127円70銭台まで調整が入るなどドル買いにもやや慎重な雰囲気が広がった。

 しかし、22日NY市場で訪米中の日銀の黒田東彦総裁が強力な金融緩和を継続する必要があると、積極的な金融緩和を維持する姿勢を改めて強調。この発言を受けて、1ドル=129円台を一時回復するなどドルはしっかりとした値動きを見せた。

 先週前半、米債利回りの上昇などから1ユーロ=1.0760ドル台まで一時下落。その後はECBの早期利上げ観測などを支えにユーロが買われた。20日にカザークス・ラトビア連銀総裁とナーゲル独連銀総裁(用語説明1)が7月利上げに言及。21日にはデギンドスECB副総裁もデータ次第としながらも7月利上げに言及したことで、1.0930ドル台までユーロ高ドル安が進んだ。

 その後はユーロ安ドル高に転じた。米債利回りの上昇などを受けたドル買いや22日発表の英国経済指標が軒並み弱めに出たことでポンド売りドル買いが入ると、欧州通貨全体に売りが広がり、1.07ドル台にユーロが下落している。

 一方、対ドルでのユーロ売りと円売りが交錯。先週前半は円売りの勢いが勝り1ユーロ=136円台半ば割れから、週半ばに139円60銭台までユーロが上昇。その後一時140円00銭前後までユーロが上値を伸ばしている。

今週の見通し

 ドル高円安の流れ継続へ。

 急速な円安への警戒感から調整売りを交えながらの展開となっているが、流れはまだドル高円安方向か。日本、中国、韓国など金融緩和姿勢を維持する国の通貨が売られやすい状態が続いている。一方、5月3、4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%利上げと、その後の複数回の大幅利上げが予想される米国を筆頭に、利上げ実施済みか近日中に利上げが見込まれる国の通貨が買われる流れとなっている。

 先週、協調介入(用語説明2)についての話が出るなど、日本の通貨当局による対応を期待する動きがある。しかし、為替変動のスピードはともかく、金融引き締めに向かう国と、状況次第では追加緩和に向かおうという国の間で資金の移動が起きること自体は自然な現象といえる。物価高に苦慮する米国が輸入物価の上昇を招く通貨安を許容する可能性は低いため市場介入のハードルは相当高いとみられ、市場の流れはまだドル高方向で、心理的な節目である130円に向けたドル上昇が予想される。

 ドル高一服の可能性があるとすれば、米物価のピークアウト観測が強まるケースが挙げられる。次回(5月3、4日)のFOMCでの0.5%利上げが確実視され、金利先物市場では今後も0.5%の利上げが続くという予想が広がっている。0.5%幅の連続利上げシナリオは思惑が先行しており、物価のピークアウト感が強まると金利先高観測が後退してドル売りにつながる可能性もある。

 流れはドル高方向で1ドル=130円超えを視野に入れた動きも予想されるが、大幅なドル高調整には要注意という展開が予想される。

用語の解説

ナーゲル独連銀総裁 ヨアヒム・ナーゲル(Joachim Nagel)ドイツ連邦銀行総裁。ECBの中でも金融引き締めに積極的であったワイトマン前独連銀総裁が昨年末で退任した後を受けて、今年からドイツ連銀総裁に就任した。1966年ドイツ・カールスルーエ生まれ。ドイツの名門カールスルーエ工科大学で経済学の博士号を取得。同大学での研究員を経て1999年にドイツ連邦銀行入り。2010年から6年間同連銀理事を務めた。国営ドイツ復興金融公庫(KfW)を経て、国際決済銀行(BIS)のバンキング部門副責任者を務めていた。独連銀でのキャリアが長く、金融政策の安定性を重視しての総裁就任となった。
協調介入 為替相場の急変動などに対応して、2か国以上の通貨当局の合意により、協調して同時に為替市場に介入すること。数か国で同時に為替市場に介入することにより、規模が大きくなることに加え、1か国だけの思惑ではなく、世界規模で市場の動向を憂慮しているというメッセージを市場に与えることが出来るため、大きな介入効果が期待できる。1985年のプラザ合意後に行われた先進5か国によるドル売りの協調介入がもっとも有名。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
4月27・28日
☆☆☆
 現状の「長短金利操作付き量的質的緩和」の維持が確定的。市場の注目は声明文と会合後の黒田日銀総裁の記者会見。市場では円安の進行もあり、声明の中の「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言を変更するとの見方が一時強まった。しかし、黒田日銀総裁が直前まで同内容の発言を繰り返していることや、日銀が20日に3月末以来となる指値オペを通告。金融政策決定会合前日となる26日までの連続指値オペも通告して緩和姿勢維持を強調しており、日銀が姿勢を変更するとの見方は後退している。米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締めに向かうとの見方が強まる中、日銀の緩和維持の姿勢が確認されることでどこまでドル高円安が進むかが注目される。1ドル=130円に向けた動きも予想される。
米第1四半期GDP速報値
4月28日21:30
☆☆☆
 2021年第4四半期の国内総生産(GDP)は前期比年率+6.9%と大幅な伸びとなった。個人消費が前期比年率+2.5%と第3四半期から伸びが強まり全体を支えた。設備投資も第3四半期以上の伸びを記録。住宅投資は3四半期ぶりにプラス圏を回復した。最も伸びに寄与したのは在庫投資で、GDP成長率に対する寄与度は+5.32%と個人消費の+1.76%などと比べても圧倒的なものとなった。今回の予想は前期比年率+1.0%と伸びが鈍化する見込み。堅調な雇用情勢などを反映して、今回は前期を超える個人消費の伸びが期待されているが、前回の反動で在庫投資の伸び悩みが予想されている。予想程度の鈍化であれば織り込み済みだが、予想以上に伸びが鈍化していればスタグフレーション(物価高の中での景気減速)への懸念にもつながってドルが売られ、1ドル=127円割れも視野に入ってくる。
米PCEデフレータ(3月)
4月29日21:30
☆☆☆
 12日発表された3月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+8.5%と1981年以来の高い伸びを示した。ガソリン価格の上昇が全体を押し上げた。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアは前年比+6.5%と2月からは上昇したが、市場予想には届かなかった。今回発表されるPCEデフレータの市場予想は前年比+6.7%、同コア前年比+5.3%。全体の数字はCPI同様に伸びが強まる見込みだが、コアは2月から鈍化の見込み。予想通りコアが鈍化すると米物価のピークアウト期待につながるだろう。5月FOMCでの0.5%利上げ見通し自体は変わらないとみられるが、今後の大幅利上げ継続予想が後退すれば強力なドル売り材料となり、1ドル=125円台に向けた動きも予想される。

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