2022年05月02日号

(2022年04月25日~2022年04月29日)

先週の為替相場

一時1ドル=131円台のドル高円安

 4月25日からの週は、1ドル=130円台を前に調整ムードが広がり、前半は上値が重かった。27日朝、一時127円を割り込んだ後、少し値を戻して、日銀金融政策決定会合の結果発表を迎えた。日銀は市場予想通り金融政策の現状維持を決定。国債を指定した利回りで無制限に購入する指値オペを基本的に毎営業日実施する方針が示されると、円売りが強まった。

 3月末に続いて4月20日から指値オペが実施され、日銀会合中も継続していたため、大きく状況が変わるわけではなかった。しかし、日銀が指値オペの常態化を通じて金融緩和政策を堅持する姿勢を強調したとの印象が円売りを誘った。

 黒田東彦日銀総裁の記者会見でも金融緩和政策の継続が強調され、円安は日本経済にプラスだとの評価は変えていないとする従来からの見解を維持した。黒田総裁会見前、円安に対して程度の警戒感を示すとの観測が海外勢を中心にあった。

 1ドル=128円台から日銀会合直後に129円台後半へドル高円安が進み、同日午前のNY市場で131円20銭台までドルが買い進まれた。

 ユーロやポンドに対してもドル買いが優勢だった。ロシアのエネルギー大手ガスプロム(用語説明1)がポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止すると発表したこともユーロ売りの材料となった。

 21日の1ユーロ=1.0930ドル台からじりじりとユーロが下落し、28日海外市場で1.05ドル台を割り込んだ。その後1.05ドル台を回復したが、29日の海外市場で1.0500ドル台から1.0590ドル台のユーロの安値圏で売り買いが交錯した。

 英CBI小売流通調査(用語説明2)の弱い数字など個人消費関連の指標の低調がポンドの対ドルレートの重石になった。英国は高インフレで家計行動に悪影響が出ており、今後の金融引き締めに影響するとの見方がポンドを圧迫した。

今週の見通し

 流れはまだドル高円安方向か

 先週、1ドル=131円台までドル高円安が進んだが、過熱感は乏しく、流れはまだドル高方向か。

 今週5月3、4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5%利上げがほぼ確実視されている。米物価の上昇が著しく、今週だけでなく、6月以降も大幅利上げが予想される。

 一方、日銀は先週の金融政策決定会合で金融緩和姿勢にぶれがないことを再確認し、ドル買い円売りの流れが強まっている。

 2002年に付けた135円台が現実味を帯びてきており、ドルは下がると買いが入る流れ。米債利回りの上昇傾向もドル高を支えている。

 米FOMCでは声明文やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見で、市場が織り込んでいる今後の大幅利上げ予想をどこまで踏み込んで認めてくるのかが注目される。

 6日には4月の米雇用統計も発表される。総雇用者数はパンデミック前の水準を回復しつつあり、小売業など新型コロナの影響を強く受けた部門でも、パンデミック前の雇用者数を上回っている。非農業部門雇用者数も前回から伸びがやや鈍化しそうだが、堅調な数字が見込まれる。

 FOMCの結果次第ではあるが、雇用者数が予想前後かそれ以上であればドルが買われ、133~135円の上値抵抗帯を明確に抜けて上昇する展開も考えられる。

用語の解説

ガスプロム ロシア政府が株式の過半数を所有するロシアの半国営エネルギー会社。天然ガスの生産・供給は世界最大。2021年の天然ガス生産量は514.8BCM(1BCM=10億立方メートル=1立方キロメートル)に達している(世界全体の生産量が2020年実績で約4000BCM)。ロシアは欧州のガス購入企業にルーブル建てでの支払いを求めており、それを拒否したポーランドとブルガリアへの供給を停止した。ロシアは既に複数社がルーブルでの支払いを済ませたとしている。
英CBI小売流通調査 英産業連盟(CBI)が150の小売・卸売業への調査を基に発表する統計。「楽観的」と回答した企業の割合と「悲観的」と回答した企業の割合を引いたもの。英国の消費支出の先行指標と位置付けられている。

今週の注目指標

豪準備銀行(中央銀行)金融政策理事会
5月3日13:30
☆☆☆
 5月の豪中銀理事会ではこれまで、政策金利据え置きの見通しが広がっていた。物価は上昇傾向があるものの米国などより上昇率が落ち着いていることや、5月21日の豪総選挙を前に大きな政策変更が回避されるとの思惑が据え置き見通しにつながっていた。しかし、4月27日発表された第1四半期消費者物価指数は、基調インフレ率が前年比3.45%と、インフレ目標(2-3%)の枠を超えたため、利上げ期待が強まっている。0.15%の利上げはほぼ織り込まれ、一部では0.40%の利上げも予想されている。早期の利上げ開始は豪ドルの買い材料であり、1豪ドル=93円台に向けた豪ドルの上昇も予想される。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月5日03:00
☆☆☆
 米FRBは前回3月15、16日のFOMCで、2018年12月以来およそ3年3カ月ぶりの利上げを実施し、パンデミック対応で2020年3月に始めた事実上のゼロ金利政策を解除した。米国の3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%と約40年ぶりの高い伸びとなっており、今後も積極的な金融引き締めが必要とみられる。前回FOMCの議事要旨では、複数メンバーがロシアによるウクライナ侵攻がなければ、前回の時点で0.5%の利上げを望んでいたことが判明している(実際には0.5%を主張したのは1人)。ウクライナ情勢はまだ深刻だが、先行き不透明感の後退や前回のFOMCから物価上昇がさらに進んだため、今回は0.5%の利上げが確実視されている。市場は次回以降も0.5%利上げの継続を予想している。金利先物が織り込む将来の政策金利見通しを示すCME FedWatchでは、6月FOMCで0.5%利上げ見通しは20%程度で、80%は0.75%利上げを見込んでいる。0.75%利上げに対し、金融引き締めを指向する「タカ派」とされるFRBメンバーでさえ慎重な態度を示しているため実現は難しそうだが、市場の利上げ予想は相当強い。利上げを0.5%にとどめた場合でも、今後も大幅利上げを継続するとの見方が強まれば1ドル=132円台に向けたドル高も予想される。今回FOMCでの決定が予想されるバランスシートの縮小(QT)にも注意を要する。3月のFOMC議事要旨では、最大月額950億ドル(米国債が600億ドル・住宅ローン担保証券=MBSが350億ドル)という方針が示されてい。債券の償還金を再投資しない方法が基本とみられるが、この方法ではMBS残高の縮小が期待通りに縮小しない可能性があり、売却に踏み切る可能性もある。もっとも、売却のケースでは金利上昇が加速する恐れがあり、債券市場の反応には注意したい。
米雇用統計(4月)
5月6日21:30
☆☆☆
 短期金利市場では今週の米FOMCだけでなく、6、7、9の各FOMCでの0.5%利上げも織り込まれてきた。こうした大幅利上げ見通しは好調な米国の雇用が支えている。市場予想は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比39万人増と前回の43.1万人増から若干鈍化しているが、水準はかなり高い。失業率は前回からさらに低下し、パンデミック前の2020年2月と同じ3.5%の見通し。
 前回NFPの内訳は、小売部門が4.9万人増と好調を維持。小売り、金融、専門及びビジネスサービス部門はパンデミック前の雇用数を上回ってきている。このところの雇用増を支えるレジャー&ホスピタリティ部門も好調さを保つ見込み。サプライチェーン問題から2月分がマイナスとなった自動車。自動車・同部品部門は前回、プラス圏を回復したものの6400人増にとどまっており、雇用正常化に向けた最後の課題となっている。全体の数字が予想を上回り、自動車部門も堅調さを維持できれば、ドル買いが強まり、1ユーロ=1.05ドルを下回るユーロ高ドル安の展開も予想される。

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