2022年05月09日号

(2022年05月02日~2022年05月06日)

先週の為替相場

ドル相場、振れ幅大きく

 先週は5月4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に一時ドルが下落したが、その後はドル高円安が急速に進んだ。

 米FOMCの結果公表までは130円を挟んでもみ合いが続いた。米10年物国債の利回りが3%を超え、ドル買い材料となったが、130円台半ばからはドルの上値は重かった。1ユーロ=1.05ドル台を中心にもみ合った。

 FOMCは市場予想通り0.5%の利上げを決め、6月1日からの量的引き締め(QT)(用語説明1)開始も発表された。

 パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC後に記者会見。冒頭で「インフレはあまりにも高すぎる」と発言すると、129円台後半から130円30銭台までドルが急上昇した。しかし、「さらなる大幅な利上げについて委員会は積極的に検討していない」「今後数回のFOMCでの0.5%利上げを検討するべき」などと次回以降のFOMCでの0.75%利上げに消極的な発言をするとドル売り優勢に転じた。

 金利先物市場が示す将来の政策金利の分布を示すCME FedWatchでは、6月14、15日のFOMCでの0.75%利上げが9割方織り込まれていた。それだけに、パウエル議長の0.5%利上げを継続するとの方針はサプライズとなった。ドルは全面安となり、1ドル=128円60銭台、1ユーロ=1.0630ドル台を付けた。

 ドル売り一服後、129円台後半までドルが買い戻されたが、5日午前の東京市場で128円70銭台を付けるなど、ドルの上値は重かった。

 しかし、ポンド売りドル買いをきっかけにドルの買い戻しが優勢になると、ドルは対円でも回復基調に入った。

 いったんドル買いポジションが整理されていたこともあって、ドル高の勢いは止まらず、6日の海外市場で1ドル=130円台半ばを超え、1ユーロ=1.0480台ドルを付けるなど、ドルはFOMC後の下落分を取り戻して全面高となった。米国債利回りの上昇などがドル買いを呼んだ模様だ。

 スーパーサーズデー(用語説明2)となった5日の英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)後は、ポンド買いが強まった。

 政策金利は市場予想通り0.25%引き上げが決まった。採決は0.25%が6人の一方、3人が0.5%の大幅利上げを主張した。3月17日の前回MPCでは据え置きを主張した1人を除く全員が0.25%利上げを支持し、今回も同様の採決が予想されていたため、金融引き締めを指向する「タカ派」色が強まったことになる。

 3月の英消費者物価指数は7.0%とインフレ目標の2.0%を大幅に上回り、英MPCのタカ派化つながったようだ。

 イングランド銀行は四半期報告で、4四半期連続で物価見通しを引き上げ、今年10-12月期に10%を超えるとの予想を示した。一方、成長見通しは2022年は前回の見通しを維持する一方、23年は前回の+1.25%から-0.25%とマイナス成長へ下方修正した。物価高予想とマイナス成長見通しの併記はスタグフレーション(インフレ下での景気停滞)への懸念を高め、ポンド売りを誘った。

 米FOMCの結果発表後はドル売りが強まって1ポンド=1.26ドル台前半までポンド高ドル安が進行。英MPCの結果判明前後で1.25ドル台後半から1.23台前半までポンドが下落。その後もポンド売りが続き、6日に1.22ドル台後半を付けた。対円では、MPC前後で1ポンド=163円00銭前後から160円台半ばまでポンドが急落した。

今週の見通し

 米物価統計にらみながらの展開。

 11日発表される4月の米消費者物価指数(CPI)をにらみながらの展開。米FOMCは5月4日、今後数回の会合での0.5%利上げの方針を示してため、CPIの結果による金融政策変更の可能性は後退しているが、米10年物国債の利回りは上昇傾向にあり、物価動向は依然として注目されている。

 米国の金融引き締め姿勢を受けて、ドル高円安基調が続いている。英国が5日に4会合連続となる利上げを決定し、ユーロ圏の早期利上げ観測も強まる中、4大通貨で唯一緩和姿勢を維持する円には売り圧力が増している。

 米FOMCの結果判明後、128円台のドル安円高に振れたことでドルの過熱感が後退しており、ドル高が進みやすくなった面もある。

 ドル円は4月28日の131円25銭を超えて132円を試す展開も予想され、その後135円に向けたドル買いの動きがどこまで強まるかが注目される。

 1ユーロ=1.04ドル台でユーロ売りが続くと、大きな節目であるパリティ(1ユーロ=1ドル)に向けたユーロ安ドル高の展開も想定される。ただ、欧州中央銀行(ECB)の早期利上げ観測が強まっており、対円に比べると対ユーロではドル高が進みにくい面もある。

用語の解説

量的引き締め(QT) QTはQuantitative Tighteningの略。量的緩和(QE: Quantitative Easing)終了後、QEによって膨れ上がった中央銀行のバランスシートを段階的に縮小させることをいう。一般に、償還を迎えた債券の再投資を行わないことでバランスシートを縮小していく。
スーパーサーズデー 英イングランド銀行は年8回ある金融政策委員会のうち、2、5、8、11月の4回、委員会の採決結果と議事要旨に加えて四半期報告も同時に発表。その後にイングランド銀行総裁が記者会見する。これをスーパーサーズデーと呼ぶ。物価や経済成長の見通し、総裁の会見などを通じて市場への説明がしやすく、スーパーサーズデーの回に大きな金融政策の変更を行うことが多い。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・4月)
5月11日21:30
☆☆☆
 前回3月の米CPIは1981年12月以来40年超ぶりの高水準である前年比+8.5%、食品とエネルギーを除いたコアは1982年8月以来となる前年比+6.5%となった。米物価は当初、2月ごろのピークアウトが予想されていたが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をうけてガソリン小売価格が前年比+48.0%となり全体を押し上げた。サプライチェーン問題も長期化しており、自動車が中古車・新車ともに大きく上昇し、物価高を加速させた。食品価格が前年比+8.8%と伸び、住居費も上昇しており、家計への影響が懸念されている。市場予想は前年比+8.1%と前回の+8.5%からやや鈍化するが、かなりの高水準だ。市場予想を超えて前回並みの水準を示すと、1ドル=132円台乗せを意識したドル高進行となりそうだ。
英第1四半期GDP速報値
5月12日15:00
☆☆
 英イングランド銀行は5日の四半期報告で2023年の経済成長見通しを従来の+1.25%から-0.25%のマイナス成長見通しへ下方修正した。今年の経済成長見通しは従来通りとしているが、ここにきて英景気の悪化が警戒されており、今回のGDPも注目される。市場予想は前期比+1.0%、前年比+8.9%。1月の月次GDPが前月比+0.8%と好調だったが、2月は+0.1%にとどまり、四半期GDPと同時に発表される3月の予想は前月比変わらずと、低調が見込まれている。予想を下回ると、英国景気の悪化が懸念されて先週に付けた1ポンド=1.2270ドル台を割り込むポンド安も予想される。
米ミシガン大学消費者信頼感指数(5月)
5月13日23:00
☆☆
 6日発表された4月の米雇用統計では、平均時給は前月比+0.3%と市場予想や前回値を下回り、前年比は+5.5%と市場予想通りとはいえ伸びは前回値を下回った。前年比+5.5%はかなりの高水準だが、消費者物価指数の伸び率(8%)には追いつかず、実質所得は低下傾向にあり、米国の消費者マインドへの悪影響が懸念される。市場予想は64.0と4月の65.2から若干の低下。予想よりも大幅に低下すると、米個人消費の鈍化に対する懸念から1ドル=130円台前半に向けてドルが売られる展開も予想される。

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