2022年05月16日号

(2022年05月09日~2022年05月13日)

先週の為替相場

週後半、リスク回避色が強まる

 9日からの週は後半にリスク回避のドル高の流れが強まったが、一方で株安と円高・ドル安にも振れた。

 週初はドル買いが優勢だった。金融引き締めを急ぐ米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢から長期金利の指標となる米10年物国債の利回りが9日に3.2%を超え、1ドル=131円台のドル高水準での展開。対ユーロでもドルが買われた。月初から1ユーロ=1.04ドル台で買いが入り、下値を支えている。

 9日のNY市場での株価の大幅安を受けて、安全資産とされる債券市場への資金逃避から米国債の利回りが低下。ドルは対円で戻り売りに押され、1ドル=130円割れを付けた。11日の4月の米消費者物価指数(CPI)公表を前に、一方的なドル売りにも慎重な姿勢が見られ、130円前後でもみ合った。一方、1ユーロ=1.0550ドル付近で米CPIの公表を待つ形となった。米CPI公表直前にはドル高を調整する流れとなり、1ドル=129円50銭台にドルが軟化する場面があった。

 4月の米CPIは前年同月比+8.3%と、3月の+8.5%に比べて伸びは鈍化したが、8.1%程度とされた市場予想値を上回った。発表直後は1ドル=130円台後半までドルが急伸したが、短時間で下落に転じ、一時129円台前半と発表前水準よりドル安に振れた。

 4月のCPIの上振れは、米FRBが積極的な金融引き締め姿勢を続けるとの見通しを強めて株安を招き、リスク回避の円買いにつながった。

 ユーロやポンドは対ドルで頭が重かった。リスク警戒の円買いと対円のドル安を除けば、ドル買いが優勢だった。

 12日にはリスク回避の動きが一段と強まった。フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請する意向を表明。西側諸国とロシアの対立がさらに強まるとの見方が警戒感を誘った。

 金融政策による米国経済のソフトランディングは難しいとの見方もあって、1ドル=127円台半ばまでドル安円高が進んだ。対円以外でドルは買われ、1ユーロ=1.0350ドル台までユーロ安ドル高が進んだ。

 週末にかけてはドルが対円で買い戻された。新しいドル買い材料が出たわけではなく、週末を前にしたポジション調整が優勢となり、129円台乗せまでドルは買い進まれた。

 米CPI発表後はドル買いが強まり、1ポンド=1.23ドル前後から1.21台後半までポンドが下落。対円では1ポンド=161円前後から155円台へポンドが大幅に下落した。リスク回避の円買いやドル買いに加え、物価高による英国経済の停滞が意識された。

今週の見通し

 リスク回避を意識。

 米ダウ工業株30種平均が5月13日に7営業日ぶりに反発するなどリスク回避の動きが一服した。ダウにナスダック総合指数、S&P500指数を合わせた米国株の主要3指数が12日に年初来安値を更新するなど米国株安が進む中、週末を前にした調整が入った形となった。依然としてリスク警戒感が残っている。

 今週は17日発表に4月の米小売売上高が発表される。先週発表された4月の米消費者物価指数ほど注目されておらず、為替市場は株式、商品、金利の各市場を見ながらの展開が予想される。リスク警戒感は根強く、対円を除いてドル高の流れが継続しそうだ。

 1ドル=129円台後半から130円でドル売りが予想され、上値の重さが意識されると127円台の円高ドル安を再び目指す可能性もある。

 FRBの積極的な金融引き締め姿勢は本来、ドル買い材料だ。しかし、今週も米国株安が見込まれるだけにリスク警戒感は強い状態が予想され、ドルも他通貨とのクロスでも対円では頭が重くなるだろう。

 4月末から先週半ばまで、1ユーロ=1.05ドル割れでユーロ買いが入る流れだったが、5月12日のドル買い優勢局面で1.05ドルを明確に割り込むユーロ安となった。1.04ドル台後半の上値はすでに重く、2017年初に付けた1.0341ドルを割り込むと、ユーロ安の加速も予想される。

 円高と対円を除くドル高の流れが強まる中、ドル以外の他通貨はドル以上に下げがきつく可能性があり、5月12日に付けた1ユーロ=132円台がユーロの下値として意識される。

用語の解説

フィンランドのNATO加盟申請 フィンランドはロシアと約1,300キロにわたって国境を接し、1917年の独立後は1939年開戦の「冬戦争」を含め旧ソ連と3度、戦火を交えている。第二次世界大戦後、国家安全保障のための中立政策を打ち出した。1989年に旧ソ連が崩壊して脅威が後退したこともあり、1995年にオーストリア、スウェーデンなどと共に欧州連合(EU)に加盟したが、NATOには非加盟の方針を堅持していた。
米小売売上高 米商務省が米国内で販売されている小売業・サービス業の売り上げを調査し、毎月発表する統計。米国のGDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費の指標として重要視される。構成項目の中で全体に占める割合の大きい自動車・同部品は、販売店のセール状況など景気と直接関係しない要因による変動が大きいため、自動車・同部品を除いたコア部分も注目される。

今週の注目指標

米小売売上高(4月)
5月17日21:30
☆☆☆
 前回は前月比+0.5%と3カ月連続でプラスだった。もっとも、エネルギー価格の上昇を受けたガソリンスタンド売上高の増加が目立ち、ガソリンスタンド売り上げを除けばマイナスだった。特に自動車・同部品はサプライチェーン問題で需要に供給が追い付いていないため、前月比-1.9%と全体を押し下げた。今回はガソリン価格が3月から下落(全米全種平均・EIA調査)しており、ガソリンスタンド売り上げによる小売売上高全体の押し上げ効果は想定しにくいが、他部門での売り上げ増加から市場予想は前回を超える+0.9%前後。公表値が市場予想以上なら米国経済停滞への懸念が後退して1ドル=130円台回復が視野に入るドル買い優勢の展開が予想される。
英物価統計(4月)
5月18日15:00
☆☆
 市場参加者の関心が高く、インフレ目標の対象でもある消費者物価指数の前年比は+9.1%と3月(+7.0%)から上昇率がさらに拡大する見込み。インフレ目標の+2%や許容上限である+3%を大幅に超えて物価上昇が加速していることが確認されれば、英イングランド銀行(中央銀行)は難しい対応を迫られるだろう。公表値が市場予想以上なら、英中央銀行が現体制下で初の大幅利上げに踏み切る可能性が強まる。
豪総選挙
5月21日23:00
☆☆
 21日実施される連邦下院選挙では、モリソン首相率いる与党保守連合(自由党・国民党)を上回る支持率を得ている野党・労働党の勝利が予想され、政権交代となれば9年ぶり。一般に政権交代は通貨売りの材料とされるが、労働党の経済政策は強硬なものではなく、為替市場への影響は限られそうだ。ただ、接戦が予想されており、両陣営がともに過半数を取れなければ、政治的空白の出現を嫌気して豪ドルの売り材料とされ、1豪ドル=87円台前半を試す展開につながる可能性がある。

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