2022年05月23日号

(2022年05月16日~2022年05月20日)

先週の為替相場

ドル相場は値幅が拡大

 5月16日からの週は後半にドル高の調整が強まった。

 5月11日発表の米消費者物価指数(4月)を受けたドル高調整などで1ドル=127円台半ばのドル安円高に振れた後はドルが値を戻し、先週は129円台で取引がスタート。128円台後半から129円台後半のレンジ取引が週半ばまで続いた。

 18日の海外市場でリスク回避の動きが強まった。17日まで3営業日続伸した米ダウ工業株30種平均が一時1200ドル超の急落に見舞われ、リスク回避ムードが強まった。1ドル=128円台半ばを割り込むとストップロス注文を巻き込んでドルが売られ、19日朝の東京市場で127円台後半までドル安が進んだ。

 その後、株価が下げ渋ると129円に迫る水準までドルが値を戻したが、ドル買い円売りは続かなかった。19日の欧州株の下落や時間外取引の米国株先物の軟化が警戒感を強め、128円割れでドル売りが勢いを増し、127円50銭台までドル安が進行した。

 20日は週末を前にしたポジション調整もあり、ドルは対円で買い戻されて128円台前半を回復。しかし、米ダウ平均が高値から800ドルを超える大幅安の中、再び127円台のドル安となった。ダウが大引けにかけての買い戻しで小幅高で取引を終えると、為替市場も落ち着きを取り戻した。

 対円以外ではドル売りが目立つ中、先週初めの1ユーロ=1.03ドル台から1.06ドル台までユーロが一時上昇した。フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟の意思表示による西側諸国とロシアとの関係悪化を懸念したユーロ売りは一服。米国債利回り低下を材料とする欧州通貨買いドル売りが支えにユーロが上昇。ポンドは先週初めの1.22ドル台前半から1.25ドル台まで上昇した。

 欧州中央銀行(ECB)で金融緩和指向が強い「ハト派」と目されるフランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁(用語説明1)が6月9日の定例理事会はECBの正常化について「決定的」なものになるだろうと発言し、早期の利上げを示唆したことがユーロ買いを誘った面もある。イタリア中銀のビスコ総裁も20日に7月の利上げがおそらく適切だとの見解を披露している。

今週の見通し

 リスク警戒感は続くが、はっきりとした方向性は見られず。

 米国の景気停滞懸念を嫌気し、米株式市場は下落基調を強めてきた。世界的にリスク警戒感がやや目立ち、ドルの対円レートを圧迫している。

 しかし、円を積極的に買い進む勢いもない。今週は米国の重要経済指標の発表予定がなく、ドル円相場はレンジ取引を延長しながら次の方向性を探る展開が予想される。

 127円を明確に下回ってドル売り円買いが進めば、ドルは大幅安となる可能性もある。

 フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請でロシアとの対立激化懸念からユーロは売りが一時的に強まったが、買い戻された。中期的に1ユーロ=1ドルも意識されたが、足元の値動きは落ち着いている。

 もっともロシアのウクライナ侵攻直前からのユーロ売りの流れは継続中とみられる。売りが出やすい1ユーロ=1.0650-1.0700ドル近辺でユーロの上昇が止まると、再び1.05ドル割れからユーロが下値を試す展開も予想される。

 オーストラリア総選挙(用語説明2)は野党労働党が与党保守連合に勝利しした模様だ。労働党の政権奪還は9年ぶり。投票日前の世論調査では労働党の優勢が予想されていた。開票前は与野党いずれもが過半数に届かず、政治的な混乱を生じることも懸念されていた。しかし、開票途中で労働党が過半数を確保する公算が大きくなると市場に安心感が広がり、豪ドルの買い材料となった。リスク動向次第だが、豪ドルは対ドルでの今月の高値1豪ドル=0.72台後半を意識する展開も予想される。

用語の解説

ビルロワドガロー総裁 フランソワ・ビルロワ・ド・ガロー(François Villeroy de Galhau)フランス銀行総裁。1959年フランス・ストラスブール生まれ。BNPパリバ銀行などの市中銀行やフランス財政監査総局を経て、2015年11月に現職。ユーロ加盟主要国ではドイツやオランダなどがインフレに対して厳しく、金融引き締めに前向きな「タカ派」色が濃い。一方、フランスはイタリアやスペインといった南欧諸国と同様にハト派寄りの姿勢を示すことが多い。
豪総選挙 豪州の連邦議会は比例代表制の上院40議席と小選挙区制の下院151議席で構成し、下院の過半数76議席を確保した勢力が首相を輩出する。任期は3年。前回2019年の総選挙は与党保守連合が77議席を獲得し勝利。労働党は68議席にとどまった。2022年の総選挙では、即日開票時点で141議席が判明し、73議席が労働党、54議席が保守連合。労働党は残り10議席のうち3議席を獲得すると過半数となる。

今週の注目指標

NZ中銀金融政策理事会
5月25日11:00
☆☆☆
 ニュージーランド準備銀行(中央銀行)はこれまで4会合連続で利上げを実施。前回は利上げ幅を0.5%に拡大し、今回も前回と同じ0.5%の利上げが確実視されている。物価高騰による景気停滞懸念が世界的に広がる中、声明文で大幅な追加引き締め見通しが読み取れるようだと1NZドル=83円に向けたNZドル高が予想される。
米FOMC議事要旨
5月26日03:00
☆☆☆
 3月15、16日会合に続いて2回連続で政策金利の引き上げを決めた5月3、4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。FOMC後の記者会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は6月14、15日と7月26、27日のFOMCでの、0.5%の連続利上げを示唆する一方、0.75%の利上げには慎重な姿勢を示した。米国の物価高が続く中、議長以外のFOMCメンバーが0.75%利上げに言及したかが注目される。米金利先物市場が織り込む政策金利の水準は、6、7月に各0.5%利上げの後、9月の利上げは0.75%と0.5%で見方が分かれている。議事要旨の公表を受けて0.75%利上げ観測が強まれば1ドル=129円に向けたドル高の可能性が出てくる。
米PCEデフレータ(4月)
5月27日21:30
☆☆
 11日に発表された4月の米消費者物価指数の伸び率は前年同月比+8.3%と3月の8.5%と比べて減速したが、市場予想を上回った。3、4月に米国内のガソリン小売価格が下がり、ガソリンスタンド売上高の伸びが鈍ったことが全体の伸びを抑える要因だった。食料品など3月から価格上昇率が高まった項目もあり、家計への厳しい影響が確認された。インフレ目標の対象であるPCEデフレータは前年比6.2%、コアデフレータは前年比4.9%と、ともに3月の6.6%、5.2%から伸びが鈍化する見込みだが、インフレ目標の2%を大きく上回る水準に相当する。市場予想以上の物価上昇が判明すると、米FRBの大幅利上げ予想を支えてドルが買われ、1ユーロ=1.04ドル台のユーロ安ドル高に振れる可能性がある。

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