2022年05月30日号

(2022年05月23日~2022年05月27日)

先週の為替相場

対ユーロ中心にドル売りがやや優勢

 5月23日からの週は対ユーロを中心にドル売りが優勢だった。

 昨年から対ドルでのユーロ売りが長期的なトレンドとなっている。3月末から5月半ばにかけてユーロの下落が加速し、1ユーロ=1.11ドル台後半から1.03ドル台半ばまでユーロ安ドル高が進んだ。その後は利益確定などからユーロが買い戻され、先週はユーロが大幅に反発した。

 先週は1.05ドル台前半で取引がスタートし、週半ばに1.07ドル台半ばまでユーロ高ドル安が進んだ。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は現行の資産購入プログラム(APP)(用語説明1)による純購入は7-9月期の早い段階で終わると考えており、早ければ7月21日のECB理事会で利上げし、7-9月期末までにマイナス金利を脱却できる可能性が高いとブログで示した。7月と9月8日の理事会で連続利上げし、現在-0.5%のECB預金金利をゼロ%へ引き上げる姿勢を示したことになり、これを受けてユーロが買われた。

 25日に公表されたECB金融安定報告(用語説明2)で、インフレと成長鈍化の中で企業の弱体化や資産市場の急激な調整のリスクが警告されると、一旦はユーロ高の調整が入った。しかし、その後もユーロ買いの流れは変わらず、週後半に1.0760ドル前後までユーロが買われた。

 ユーロ買いドル売りや、24日の東京市場からロンドン市場にかけての時間外取引で米国株が売られたことを受けたドル売り円買いから、先週前半のドル円は頭が重く、1ドル=128円台から126円30銭台までドル安円高に動いた。

 その後は週後半まで127円前後で推移した。対ユーロでのドル売りと、米ダウ工業株30種平均の続伸を受けたリスク選好の高まりによる円売りが交錯した。

 ユーロの対円レートは先週前半に先々週の高値をわずかに超える1ユーロ=136円80銭前後を付けた後、ドル安円高に押されて135円00銭近くまで調整が入るなど方向が定まらなかった。

 ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は25日、市場予想通り政策金利を0.5%引き上げた。声明文は物価が目標内に安定的に戻るまで金融引き締め姿勢を継続すると表明。追加利上げを強く示唆するものと受け止められ、1NZドル=0.6420ドル台から0.6510ドル台までNZドルが急騰。先週末には0.6550ドル目前まで上昇した。

今週の見通し

 米雇用統計など経済指標をにらむ展開が予想される。

 5月25日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3、4日開催分)では、全体の意見として6月14、15日と7月26、27日のFOMCでの0.5%利上げが適切だとする見解が示された。大方のメンバーの意見として、年内に金融引き締め効果を検証する好位置につけることが出来るとの見通しも示された。この表現を受けて、9月以降の金融政策は今後の経済動向次第であるとの見方が強まった。状況次第で9月以降も0.5%の大幅利上げが続く可能性がある半面、利上げの一時休止もあり得ると市場で考えられている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策は、二大命題である雇用の最大化と物価の安定にかかっている。7月FOMC以降に物価が落ち着けば、雇用情勢次第で利上げ幅縮小や一時休止の可能性が強まりそうだ。6月3日発表される5月の米雇用統計に、市場参加者の関心が一段と強まりそうだ。

 今週は雇用統計以外にも、1日に米ISM製造業景気指数、2日に米ADP雇用者数、3日に米ISM非製造業景気指数など、米国の重要指標の発表が相次ぐ。週前半は落ち着いた動きが続き、週の後半は米経済指標の結果次第という展開が見込まれる。

 米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが前月から鈍化する見込みだが、失業率は低下が予想され、比較的堅調となりそうだ。ただ、少し気になるのが平均時給の動向。市場予想は前年比で+5.2%と高水準だが、4月(5.5%)比では鈍化する。4月の米消費者物価指数が+8.3%だったので、給与の伸びが物価高に届いていない状況がさらに鮮明になるだろう。

 市場予想前後の結果が出て、物価高による家計行動への悪影響が懸念されるといったんドル売りが強まり、1ドル=125円に向けた動きとなる可能性があると考えている。非農業部門雇用者数や失業率の結果が注目されがちだが、平均時給も確認しておきたい。

用語の解説

資産購入プログラム ECBによる資産購入プログラム(Asset purchase programmes)とは、ECBによる量的緩和策の一つ。2015年にスタートした。コロナ危機対応のために導入したPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)が2022年3月に終了したことを受けて、従来の月額200億ユーロから一時的に増額したが、4月に400億ユーロ、5月に300億ユーロ、6月に200億ユーロと段階的に縮小し、7-9月期のどこかのタイミングで終了すべきだとの見通しが示されている。
ECB金融安定報告 ECB金融安定報告(ECB Financial Stability Review)とは、ECBが年に2回(一般的には5月と11月)、ユーロ圏の金融安定に関するリスク概要などを発表するもの。2003年にスタートした。一般的には「現状の金融システムの安定性」「起こりうるリスクとシステムの脆弱性につながる主な要因」「3つ目は現状発生しているリスクに対する金融システムの能力」の3点で構成される。今回の同報告では、ウクライナ情勢の長期化によって市場に一段の調整が入る可能性について示され、物価高や低成長を受けて企業に弱さが生じる可能性も示された。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆☆
 米国は雇用市場が堅調で個人消費も伸びているが、急速な物価上昇の家計への悪影響が予想され、企業景況感の変化が懸念されている。5月のISM製造業景気指数は54.5と4月の55.4から小幅鈍化が見込まれている。好悪判断の境目となる50をしっかり上回っているため、予想前後であれば相場への影響は限定的とみられる。しかし、予想を大きく下回った場合には要注意。構成要素のうち、米雇用統計の先行指標となる雇用部門の数字もチェックしておきたい。前回は50.9と3月の56.3から一気に鈍化した。今回は改善が見込まれているが、前回同様に弱めの数字が出てくると、雇用統計本番への警戒感を呼び、ドル売りにつながる可能性。1ドル=126円台前半に向けた動きも予想される。
米雇用統計(5月)
6月3日21:30
☆☆☆
 前回4月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+42.8万人と、市場予想の+38.1万人を上回る好結果だった。一方失業率は3.5%に低下するとの市場予想に対し、3月と同じ3.6%にとどまった。NFPの内訳を確認すると、直近の雇用増を支えているレジャー&ホスピタリティ部門(劇場・カジノなどのアミューズメント部門、ホテルなどのアコモデーション部門、レストラン・バーなどの飲食部からなる部門)が+7.8万人と好調さを維持。ヘルスケア&ソーシャルアシスタンス部門も+4.09万人としっかりとしたプラス圏。3月分まででパンデミック前である2020年2月の雇用者数水準に到達した小売業も+2.92万人と増加が続き、全体を支えた。運輸・倉庫部門も+5.2万人と好調。同部門はコロナ過が一服した際に人手不足が目立ち、サプライチェーン問題の要因の一つとされていた部門だけに、市場の安心感につながった。サプライチェーン問題で注目される自動車・同部品は2か月連続でプラス圏も、6100人と小幅増加にとどまった。半導体不足などによる自動車生産の遅れが中古車の需要につながり、物価高の大きな要因の一つとなっている中古車価格の大幅上昇につながっているだけに、やや警戒感を誘っている。
 雇用者数全体でみると1億5131万人と、パンデミック前の2020年2月比で119万人減まで回復してきた。季節調整前の数字では1億5098万人と、パンデミック前の水準を超えている。雇用市場自体は堅調だが、雇用者数の伸びは鈍化が見込まれている。
 こうした状況を受けて今回の市場予想はNFPが+30.1万人。失業率は3.5%が見込まれている。NFPの伸びは前回から鈍化も、水準的にはかなりの高水準という印象。失業率の3.5%という水準は、ほぼ完全雇用に近い水準だけに、市場予想前後の数字が出てくると、米雇用市場の堅調さが意識されるだろう。
 物価動向次第となるが、市場予想前後の数字が出てくると、9月以降の利上げ継続期待を支えて1ドル=128円台に向けたドル高が期待される。
米ISM非製造業景気指数(5月)
6月3日23:00
☆☆☆
 前回4月のISM非製造業景気指数は市場予想の58.5、3月の58.3をともに下回る57.1にとどまった。物価高を受けて仕入れ価格が過去最高の84.6に急伸したが、雇用指数が好悪判断の境目となる50を下回る49.5(3月は54.0)へ低下。先行指標として注目される新規受注も3月の60.1から54.6に低下し、昨年2月以来の低水準だった。今回の市場予想は56.5と前回を下回る見込み。サービス業は利ザヤが比較的小さい業態が多く、仕入れ価格の上昇を価格に転嫁することによる需要減などが警戒感を生んでいる。予想を超える鈍化を見せるようだと、米景気への警戒感が強まるだろう。同日の21時半に出る米雇用統計が弱めに出て、ISM非製造業も弱くなると、ドル売りが一気に進み、1ドル=125円台に向けたドル安円高も予想される。

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