2022年06月13日号

(2022年06月06日~2022年06月10日)

先週の為替相場

ドル高円安が進行

 先週(6月6-10日)はドル高円安がさらに進み、1ドル=134円台に乗せた。ここ2週間で約7円の大幅なドル高円安となった。

 米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引き締めを予想したドル買いと、粘り強い金融緩和を続ける日銀の姿勢による円安の両面からドル高円安が進んだ。

 先週前半、円売りが相場の動きを主導した。6日はポンド買い円売りが目立った。ジョンソン英首相の信任投票(用語説明1)が実施されるとの報道が、政治的混乱が一服するとの見方につながり、投票を前にポンドが買われた(日本時間7日午前5時発表の投票結果は211対148で信任)。1ポンド=163円前後から165円40銭台まで上昇する中で、対ユーロや対ドルなどでも円売りが強まった。

 その後、米10年物国債利回りが節目の3%を上回る中でドル買い円安が強まり、1ドル=132円台にドルが上昇。日本銀行の黒田東彦総裁が金融緩和を粘り強く続ける姿勢を改めて示したことも円売りの材料となった。

 豪準備銀行(中央銀行)は7日に金融政策委員会を開き、市場予想を超える0.5%(50BP、用語説明2)の利上げを決めた。6日まで0.4%の利上げが市場の見通しの大勢だったが、直前に0.25%の見通しが優勢となるなど大幅な利上げの可能性は低いとみられていた。このため、当初の予想を超える大幅な利上げが発表されると、1豪ドル=0.7180ドル台から0.7250手前まで急騰した。しかし、その後は大幅利上げの景気への悪影響に市場参加者の関心が移って上昇を打ち消し、豪ドルの値動きは不安定だった。

 先週後半、ドル高円安が一段と進んだ。黒田日銀総裁が金融緩和の継続を強調したことが、ドル買い円売りを呼んだ。金融引き締めに傾く欧米など各国中央銀行と対照的な日銀の姿勢が円売りを招き、2002年2月以来およそ20年4カ月ぶりに1ドル=134円台半ば近くまで円が下落した。

 その後はいったん円安の調整が入った。10日の米消費者物価指数(CPI・5月)発表を前にポジション調整の動きが広がったことや、10日に財務省・金融庁・日本銀行が3者会合を開き、「最近の為替市場では急速な円安進行が見られ憂慮している」「主要7カ国(G7)合意に基づき、必要であれば為替市場で適切に対応する」など、これまでよりも踏み込んだ円安けん制の姿勢を示すと、133円30銭台までドル安円高に動いた。

 もっとも円安の調整が一巡した後は再びドル買い円売りが勢いを増した。米CPI発表後はドル買いがさらに強まった。

 米CPIは市場の減速予想に反して前回、前々回を超える伸びを示した。FRBによる大幅利上げ観測の強まりを受けてドルが買われた後、金融引き締め加速を懸念して米国株が急落すると、133円台半ば近くまでドル高の調整が入った。しかし、その後はドル買いが再燃し、134円40銭台と先週の高値圏で週末を迎えた。

今週の見通し

 ドル高基調継続へ、米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が強まる。

 急激なドル高円安が進む中、6月10日発表された米消費者物価指数の上振れから、ドルの先高観測がさらに強まっている。

 米国の消費者物価は今年2月ごろのピークアウト観測もあったが、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格高騰を主因に後ずれしている。4月分は+8.3%と3月分の+8.5%を下回ったが、減速幅が小さかったため、インフレ高進に対する警戒感は強いままだ。先週発表された5月分は原油価格上昇などを受けて4月と同じ+8.3%が市場予想だったが、結果は4月どころか直近で最も高かった3月の水準を超え、約40年ぶりの高水準となる前年同月比+8.6%を記録し、インフレへの警戒感が一段と強まった。

 ガソリンに加え、食品や家賃の値上がりが目立つ一方、賃金の伸びは物価上昇に追い付かず、インフレが米国民の生活を直撃している。FRBにはより積極的なインフレ対応が求められ、市場の大幅利上げ観測につながっている。

 前回(5月3、4日)FOMC後のパウエルFRB議長会見と5月25日開示された前回FOMCの議事要旨は6、7月FOMCの各0.5%利上げに言及し、その後のFOMCで7月までの利上げ効果を確認する余地があるとされていた。このため、市場は6、7月の各0.5%利上げを織り込む一方、9月以降は利上げ幅が縮小するとの見方があった。しかし、物価上昇の加速や3日発表された5月の米雇用統計の好結果から、景気や雇用は大幅利上げに耐えられるとの見方が強まり、9月以降の0.5%利上げ継続を見越す形でドル買いが強まっていた。

 しかし、5月の米CPIの上振れから、6、7月の0.5%利上げでは不十分だとの見方が強まり、7月26、27日のFOMCでの0.75%利上げが織り込まれつつある。6月14、15日の次回FOMCでの0.75%利上げも一部で想定され、ドル高の勢いを強めている。

 15日のFOMCの結果発表に向けて、短期金利市場などで0.75%利上げの織り込みがさらに進むと、ドル高に拍車がかかりそうだ。

 一方、日銀は16、17日に金融政策決定会合を開き、金融緩和政策を粘り強く続ける姿勢を改めて強調するとみられ、対照的な日米金融政策がドル高円安をさらに進行させる可能性がある。

 2002年に付けたドルの高値135円15銭を超えてドル買い円売りが続く展開が予想される。1998年に付けた147円台は遠いが、1ドル=135円15銭を超えると目立った上値抵抗線はなく、ドル高が急加速する可能性もある。

用語の解説

ジョンソン首相信任投票 英与党保守党は6月6日にジョンソン首相の党首としての信任投票を実施した。新型コロナウイルス対策による都市封鎖中、首相が官邸内で複数回の飲酒を伴うパーティーを開いたこととや、同問題に関する下院答弁で「ルール違反はなかった」と繰り返し発言したことなどを受けて、複数の与党議員が不信任投票の実施を求めたことで今回の投票が実施された。
BP BPはベーシスポイント(Basis Point)の略で0.01%のこと。金利は0.01%を基準に表記されることが多く、債券利回りや金利の変化を表す際にBPを用いる。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月16日03:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長は5月のFOMC後の記者会見で、6、7月のFOMCでの各0.5%利上げの方針を示しており、市場も0.5%の連続利上げを既定路線としてきた。しかし10日発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が予想に反して3、4月分を超える伸びを示し、0.75%の利上げも予想されている。7月FOMCでは0.75%利上げ予想が大勢となっており、6月FOMCでの利上げ幅が従来見通しの0.5%だとしても、声明文や記者会見で示される今後の政策運営方針に注目が集まるだろう。0.75%利上げなら、136円台のドル高も予想される。
英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)
6月16日20:00
☆☆☆
 イングランド銀行は前回5月5日のMPCまで4回連続で利上げを実施し、今回も利上げが確実視されている。3月の月次GDP(国内総生産)が市場予想に反してマイナス成長だったため、従来は6月のMPCでの利上げ打ち止めが予想されていた。しかし、消費者物価指数の伸び率が4月は前年同月比9.0%に上昇し、2けたの物価上昇が懸念されると、6月MPCでの利上げ実施が予想され、次回8月MPC以降の利上げ継続によるインフレ沈静化も求められている。声明文などで今後の金融引き締め継続が示唆されれば、1ポンド=167円台のポンド高の可能性がある。
日銀金融政策決定会合
6月17日
☆☆☆
 日銀は16、17日に金融政策決定会合を開く。豪準備銀行が7日に市場予想を超える幅での利上げを決めるなど、世界各国の中央銀行は急速な物価上昇を受けて積極的な金融引き締めに傾いている。しかし、日銀は金融緩和を粘り強く続ける姿勢を堅持しており、今回の会合でも現状政策を維持するとともに、今後の緩和継続姿勢も表明する見通し。サプライズ感はなくても、欧米など他国中央銀行の引き締め姿勢と対照的な方針は円売りの材料となる可能性がある。中長期的に1ドル=140円を目指してドル高が進むきっかけとなる可能性もある。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。