2022年06月20日号

(2022年06月13日~2022年06月17日)

先週の為替相場

ドル買い強まる

 先週(6月13-17日)、主要中央銀行が相次いで金融政策を発表した。14、15日に米連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC) を開催。10日発表された5月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比+8.6%と、市場の減速予想に反して3月の+8.5%を超える伸びだったため、FOMCの結果発表前に0.75%の大幅利上げが織り込まれていった。ドルの対円レートは5月末からの上昇基調をさらに強め、1ドル=135円台半ば超えに上昇。金利先物が予想する将来の政策金利を確率で示すCME FedWatchは、米CPI発表までは0.50%をほぼ織り込んでいた。しかし、CPI後は0.75%利上げの確率が急速に高まり、週明けは0.75%利上げを97%以上織り込むなどFOMC直前に大幅利上げ予想が支配的となった。

 FOMCの結果発表前に若干の調整が入り、134円台前半でFOMCの結果発表を迎えた。利上げ幅は直前の織り込み通り0.75%。FOMCメンバーによる経済見通し(SEP)(用語説明1)のうち、将来の政策金利の予想分布を示す「ドットプロット」では、2022年末の中央値が3.25-3.50%と、3月の1.75-2.00%から大幅に上方修正された。FOMCの結果判明直後はドル買いが入ったが、すぐに反落。利益確定の売りが出たことや、パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、0.75%の利上げは明らかに異例の大きさで、この規模の利上げが頻繁に行われるとは考えていないと発言したことから、133円台半ばまでドルが下落した。

 その後、ドルは134円台後半まで買い戻されたが、スイス国立銀行(中央銀行)が16日の理事会で、政策金利引き上げを決めると、スイス買いが急速に勢いを増し、ドル安円高が進んだ。大方の市場参加者が政策金利(-0.75%)の据え置きを予想し、引き締め方向でも0.25%の利上げが予想されていたが、利上げ幅が0.5%だったことで、市場参加者に驚きを与えた。

 スイスの大幅利上げ決定を受けて、大規模な金融緩和政策を続ける日銀も緩和姿勢を後退させるとの思惑が広がり、円が買われた。日銀が採用する「長短金利操作付き量的・質的緩和(YCC)」解除への示唆や長期金利の許容変動幅拡大があるとの見方から、海外勢を中心に日本国債先物の売りや円買いに動き、1ドル=131円台半ばまでドル安円高が進行した。

 もっとも、日銀が緩和姿勢を堅持すると見方は日本勢を中心に根強く、日銀金融政策決定会合の結果発表(17日)を前に円売りが強まっていった。日銀は現行の金融緩和政策の維持を決めたと発表すると、円売りがさらに強まり、週末を前に135円台半ばまでドル高円安が進んだ。

 欧州中央銀行(ECB)は15日、臨時理事会を開いた。FOMC結果発表日でもある同日にECBが臨時理事会を開くと報じられると、緊急利上げの可能性が意識され、ユーロが急騰した。その後、直近の債券利回り急上昇や南欧諸国とドイツなどとの利回り格差拡大への対応を協議すると報じられるとユーロ買いの勢いは収まったが、1ユーロ=1.04ドル台前半から1.05ドル台に乗せるなど、ユーロは対ドルでしっかり。コロナ禍対策の資金供給策「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」で購入した債券の再投資をECBは柔軟に判断するとの方針が示されるとイタリア国債などの利回りが低下し、ドイツ国債との利回り格差が縮小した。

 英イングランド銀行(中央銀行)は市場予想通り0.25%の利上げを決めた。採決結果は前回と同じ6対3で、市場の反応は限定的だった。

今週の見通し

 米国の積極的な金融引き締め姿勢がドル買いの材料。金融緩和を堅持する姿勢を続けていたスイスが先週、市場予想を覆す0.5%の大幅利上げを決定したことで、金融緩和の手を緩めない日銀の方針が際立ち、対ドル以外の通貨でも円売りが出やすい地合いとなっている。

FOMC後、海外勢を中心に日銀の金融緩和姿勢が後退するとの見方から円買いが一時強まったことで急速なドル高円安に対する過熱感がいったん後退。ドルは上値を試しやすい流れとなっている。

 ただ、米国を中心とする世界的な株式市場の不安定な動きは円買いの材料となっている。FRBによる年内3.25%-3.50%までの利上げ見通しは、株式市場にとって大きなマイナス材料。株安がさらに進めば、円買い材料となる。

 ドルをはじめとする各国通貨の金利上昇と日本円の低金利継続との対比に基づく円売りと、株安を受けた円買いが交錯する中、次の方向性を探る展開が予想される。

 22日に予定されているパウエルFRB議長による半期議会証言(用語説明2)では、米国の積極的な引き締め姿勢に市場参加者の関心が集まる可能性があり、その際の市場の反応に注目したい。米長期国債の利回りがもう一段上昇すれば、1ドル=137円台を試す可能性があり、長期的には140円のドル高円安が視野に入る展開となりそうだ。

用語の解説

SEP SEP(Summary of Economic Projections)は、年8回開催されるFOMCのうち、3、6、9、12月のFOMCで、結果発表と同時に公表されるFOMCメンバーによる経済見通しのこと。正副議長を含むFRB理事と投票権の有無に関係なく地区連銀総裁全員による予想が示される。当年を含む数年後までの年末時点と長期のGDP成長率、失業率、インフレ率(PCEデフレータとコアデフレータ前年比)、政策金利水準の見通しが示される。各メンバーの年末時点での政策金利見通しの分布を点で表したドットプロットの注目度が高い。
半期議会証言 1978年に定められた「完全雇用機会均等法」(通称:ハンフリー・ホーキンス法)を根拠として、FRBは半期ごとに金融政策報告書(通称:ハンフリー・ホーキンス報告書)を議会に提出し、上院銀行委員会と下院金融サービス委員会でFRB議長が報告書を基に証言する義務を負う。同法は2000年に失効したが、慣例によって議会証言は続いている。上下各院委員会での証言は同じ報告書を基にするため、先に行う証言(今回は22日の上院銀行委員会での実施分)が注目される。

今週の注目指標

英消費者物価指数(5月)
6月22日15:00
☆☆☆
 英イングランド銀行は16日に金融政策委員会(MPC)を開いて政策金利の0.25%引き上げを決めた。利上げ決定は5回連続。投票の内訳は前回と同じ6対3。3人は0.5%利上げを主張。声明ではインフレ圧力が長引けば必要に応じて力強い措置を取るとして、大幅利上げの可能性を示した。5月18日発表の4月の英消費者物価指数は前年同月比+9.0%と約40年ぶりの高水準を記録。住宅関連が+19.2%と急上昇し、利上げ観測が強まった。5月分の市場予想は+9.1%と上昇幅拡大が見込まれている。予想を超える物価高騰が確認されると、英国の大幅利上げ観測が一段と強まり、19日に付けた1ポンド=1.24ドル台を試すポンド高ドル安の展開も予想される。
パウエル議長上院議会証言
6月22日22:30
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)は0.75%の利上げを決め、今後の積極的な金融引き締め姿勢も示した。パウエルFRB議長は20日にも物価安定の責務達成への強いコミットメントがドルの信認に寄与していると発言するなど今後の引き締め姿勢を改めて強調し、ドル買いにつながった。こうした中、今週はパウエル議長が半期に一度の議会証言に臨む。議長が連邦議会で発言する機会は半期議会証言と、パンデミック対策の「コロナウイルス支援、救済および経済安全保障法(通称:CARES法)」に基づくものなどに限られるため、市場参加者は強い関心を寄せる。FRB議長が議会という公的な場で、積極的な引き締めで物価安定を目指す姿勢を強調すると、1ドル=136円に向けてドル買いが強まる可能性がある。
メキシコ銀行政策金利
6月24日03:00
☆☆☆
 メキシコ銀行(中央銀行)が23日、金融政策会合を開く。前回まで8回連続での利上げを実施しており、そのうち直近4回は0.5%の利上げだった。前回は委員5人のうち4人が0.5%利上げを、1人は0.75%の利上げをそれぞれ主張した。先週、米国が1994年以来となる0.75%の利上げに踏み切ったこともあり、今回のメキシコ銀行の会合でも0.75%利上げが予想される。5月のメキシコ消費者物価指数は前年同月比+7.65%と7カ月連続で7%台と、物価高騰が大幅利上げ観測を強めている。格付け大手ムーディーズが今年のメキシコ経済成長見通しを引き上げるなど経済が比較的好調ということもあり、利上げを受けてメキシコペソ買いが強まり、6月9日に付けた1ペソ=6円87銭前後を意識する展開が予想される。

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