2022年06月27日号

(2022年06月20日~2022年06月24日)

先週の為替相場

ドル買い強まる

 先週(6月20-24日)前半はドル高が進み、後半にドル売りが強まるなど方向感が定まらなかった。先々週、スイス国立銀行(中央銀行)による予想外の大幅利上げをきっかけに、日銀が16、17日の金融政策決定会合で金融緩和後退の姿勢をにじませるとの見方が海外勢を中心に広がり、一時1ドル=131円台半ばまでドル安円高が進んだ。しかし、日銀は従来政策を維持し、今後も金融緩和姿勢を崩さない方針を示すと円売りが強まり、ドルが135円台を回復した流れで先週の取引がスタートした。

 週明け20日は米国がジューンティーンス(奴隷解放記念日・用語説明1)で休場のため取引参加者は少く、レンジ取引に終始。その後、週半ばにかけてドル買いが優勢になった。

 6月15日に付けた直近高値135円59銭前後を超えてドル高円安が進むとドル買いが勢いを増し、24年ぶりの136円台に上昇。その後もドル買いが止まらず、一時136円70銭前後までドル高円安が進行した。

 先々週に米国が0.75%、スイスが0.5%それぞれ利上げしたことを受けて、世界的な金融引き締めが加速するとの見方が広がる中で、金融緩和政策を固持する日本円が独歩安となった面もある。

 東京市場で22日朝方に直近のドルの高値となる136円71銭前後を付けた後はドル売り優勢に転じた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は同日、上院銀行委員会で半期議会証言に臨み、「ソフトランディング達成は非常に困難だ」と述べると、今後米国がリセッション(景気後退)入りする可能性を事実上認めたとの見方が強まり、ドル売りに傾いた。

 米FRBのエコノミストであるカイリー氏が22日、米国のリセッション入りの可能性が向こう四半期で50%を超え、2年で約67%とする数理モデル分析に基づく論文を公表したことや、23日に元財務官の中尾武彦氏が「為替介入の可能性排除できない」と発言したこともドル売り円買いにつながった。

 ドルは134円20銭台まで下落した後、週末にかけて135円台に乗せたが、135円台前半では売りが出るなど、上値は重かった。

 パウエルFRB議長の議会証言後のドル売り局面で1ユーロ=1.06ドル超えまでユーロ高ドル安が進行。その後ユーロ圏と加盟主要国の購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を下回ったことを受けて1.04台にユーロが売られるなど、一方向の動きにはならなかった。

今週の見通し

 米国の積極的な金融引き締め姿勢を背景としたドル買いと米国のリセッション懸念によるドル売りが交錯。次の方向性を探る展開となっている。

 ただ、世界的な物価上昇傾向を受けて、景気への悪影響をある程度許容しても利上げなど金融引き締めを実施し、インフレ沈静化を目指す流れは続きそう。日本など金融緩和を続ける一部の通貨への売り圧力は該当通貨の中長期的な下落を招きそうだ。

 ドルは対円で調整を交えながら上値を試すと予想する。米国の株式や債券市場をにらみながらドルの買い場を探る展開となりそうだ。

 下値支持線は1ドル=133円台半ばから134円にかけて。上値目標は直近高値の136円台後半だが、同水準を明確に上回って137円台を付けると、1998年以来となる140円超えが現実味を帯びてくる。ただ、136円台はドル売り注文が入りやすい価格帯で、137円は簡単に達することができる水準ではないだろう。

用語の解説

ジューンティーンス 米南北戦争時の北軍グレンジャー将軍が1865年6月19日、テキサス州ガルウェストンで奴隷身分とされてきたすべての人々は自由であるという連邦政府からの奴隷解放の宣言書を読み上げたことから、同日が奴隷解放の祝日となった。テキサス州を中心に同日を祝う習慣が始まり、2021年6月17日にバイデン大統領が署名し、正式に連邦の祝日となった。
中尾元財務官 1978年東京大学卒、同年1978年大蔵省入りし、2011年8月から財務官。2013年3月の退任後はアジア開発銀行総裁などを経て、みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長。財務官は財務省の国際金融関連業務のトップであり、為替政策の責任者となる。為替介入の決定は財務大臣の権限で実施し、財務官の影響が大きいとされている。

今週の注目指標

ECBフォーラム・パネルディスカッション
6月29日22:00
☆☆☆
 6月27-29日、ポルトガルのシントラで欧州中央銀行(ECB)フォーラムが開かれる。ECB理事らによる講演やパネルディスカッションが多数予定され、最終日29日14時(日本時間同日22時)開始のパネルディスカッションが市場参加者に注目される。参加者はパウエル米FRB議長、ベイリー英イングランド銀行(中央銀行)総裁、ラガルドECB総裁、カルステンス国際決済銀行(BIS)総支配人となっている。各国・地域の中央銀行は物価高騰に対処するため積極的な金融引き締めを求められる一方、景気悪化が懸念されており、かじ取りは難しい。特に米国は景気後退が懸念されており、パウエルFRB議長の発言が注目される。リセッション懸念を意識しながら利上げを続ける姿勢を強調すれば市場の警戒感が一段と高まり、1ドル=133円に向けてドル売りが強まる可能性がある。
米PCEデフレータ(5月)
6月30日21:30
☆☆☆
 6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.6%と予想に反して3、4月分を上回った。ガソリン価格、中古車・新車販売価格、食品価格などの伸びが著しく、米国民生活への悪影響が懸念されたことが、米連邦公開市場委員会(FOMC)による大幅利上げにつながったと見られる。今後の米金融政策動向を見極める上で物価が注目材料となっている。米国のインフレ目標の対象であるPCEデフレータは調査対象や計算方法、水準はCPIと異なるが変化の傾向は似ている。このため、PCEデフレータもCPIと同様に前回以上の伸びが予想されている。伸び率が市場予想を超えると今後の利上げ継続観測を支えてドル買いを呼び、1ドル=136円台回復に向けたドル高円安も想定される。
米ISM製造業景気指数(6月)
7月1日23:00
☆☆☆
 前回5月のISM製造業景気指数は56.1(4月は55.4)と、市場予想(54.5に鈍化)に反して上昇した。3カ月ぶりの高水準となった新規受注が全体を支えた。生産の伸びは小さく、受注残も増加し、サプライチェーン問題の影響を意識させるた。雇用部門は2020年11月以来の好悪判断の基準となる50割れ。全体では6月は55.3と5月から低下が予想される。市場予想通りの鈍化が確認され、雇用の回復も確認されなければ米国のリセッション懸念の強まりからドルが売られ、1ユーロ=1.06ドル台後半のユーロ高ドル安に向けて動く可能性がある。

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