2022年08月08日号

(2022年08月01日~2022年08月05日)

先週の為替相場

米雇用統計は驚きの好結果

 先週(8月1-5日)は前半にかけて先々週後半のドル売り円買いが継続し、一時1ドル=130円41銭を付けた。7月31日に発表された7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の弱さや、ナンシー・ペロシ米下院議長(用語説明1・2)の台湾訪問を巡る米中関係の悪化懸念などが重石となった。その後は買い戻しが優勢となった。注目された米雇用統計の好結果もあって、週末には135円台半ばを超え、週前半の安値から5円以上もドル高円安が進んだ。

 7月28日に発表された米第2四半期GDP速報値が予想外にマイナスとなったことを受けて、米景気の先行き不透明感が広がったことや、9月以降の大幅利上げに懐疑的な見方が広がったことで、先々週後半から先週前半にかけてはドル売りが優勢だった。

 中国国家統計局が31日発表した製造業購買担当者景気指数は、前回値の50.2から若干改善する50.3が市場予想値となっていたが、49.0と予想外に悪化。好悪判断の境となる50も下回ったことで、米国だけでなく世界的に景気の先行き不透明感が強まっているとの見方が広がった。

 ペロシ米下院議長の台湾訪問が報じられたこともリスク警戒感からのドル売り円買いを誘い、日本時間2日午前に130円41銭までドルが下落し、1ユーロ=1.0290台を付けるなどドルはほぼ全面安。リスク警戒の円買いも入り、1ユーロ=133円台半ば割れまでユーロ安円高に振れた。

 同日の米国市場でドルは133円台を回復し、1ユーロ=1.01台にユーロが軟化するなどドル売りの流れは続かなかった。ペロシ米下院議長が台湾に無事到着したことで、直接的な軍事衝突のリスクが後退したとの見方がドル買い円売りを誘い、1ユーロ=135円台のユーロ高円安となった。

 3日に発表された7月の米ISM非製造業景気指数が予想外の好結果となり、ドル買い円売りがさらに強まった。7月22日に発表された同系統の指標である米S&Pグローバルによる非製造業PMI速報値(7月)が予想を大きく下回る弱さを示したことで、米ISM非製造業景気指数も弱めの数字が見込まれていた。しかし結果は56.7と市場予想の53.6、前回値の55.3を上回る好結果だった。

 5日発表された7月の米雇用統計はさらなるドル買いを誘った。非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+52.8万人と市場予想の+25万人前後を大きく上回った。失業率は予想外に低下し、平均時給が予想外に上昇と力強い内容だった。

 この結果を受けて9月20、21日開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が強まった。短期金利先物が織り込む利上げ確率を示すCME FedWatchによると、米雇用統計発表前まで約66%が0.50%ポイントの利上げに縮まると見込んでいたが、発表後は約70%が3会合連続0.75%ポイントの利上げを予想している。

 1ドル=135円50銭前後、1ユーロ=1.01台前半までドル高が進んだ。リスク警戒感の後退を背景とする円売りでユーロが対円で買われた分、ユーロ円はドル円ほど値幅が大きくなら、1ユーロ=137円台後半を付けている。

今週の見通し

 関連指標の弱さから統計発表前から警戒感が強まっていた米ISM非製造業景気指数の予想外の強さと、米FRBの二大命題である雇用の最大化と密接に関連する米雇用統計の驚きの強さを受けて、米景気の先行きに対する警戒感が後退している。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は6、7月と2会合連続で0.75%の利上げを実施してきた。次回9月のFOMCでは、7月28日の第2四半期GDP速報値が弱く出た後、0.50%利上げが74%、26%が3会合連続の0.75%の利上げと、0.75%利上げ観測が後退。米ISM非製造業景気指数の強さもあり、米雇用統計発表前に66%対34%まで差を縮めた後、雇用統計発表後に32%対68%と0.75%利上げが大勢となった。

 こうした動きがドルを支える展開となっている。米利上げ観測が強まる中で米株が堅調に推移し、リスク警戒の円買いが目立たないこともドルの堅調に寄与。雇用統計が発表された5日の米株式市場は、寄り付き後に売りが強まった後、同日のダウ工業株30種平均がプラス圏で引けるなど影響は限定的なものにとどまっている。

 10日に予定されている米消費者物価指数(CPI)動向次第では、0.75%の利上げ観測がさらに強まる可能性がある。7月に入って米ガソリン小売価格が低下傾向(米EIA調査全米全種平均ガソリン小売価格は6月から7月に約7.5%低下)にあり、前回から値下がりペースはやや鈍化する見込みだが、これまでのエネルギー価格上昇の影響で、幅広い品目でコスト高からの値上げなどが見られており、期待通り下げらない可能性が十分にある。前回並みかそれ以上の物価上昇を示すと、9月のFOMCでの0.75%利上げを織り込むだけでなく、1.00%の利上げ観測もで出てくると見られ、ドル買いが加速する可能性も。

用語の解説

ナンシー・ペロシ ナンシー・パトリシア・ペロシ(Nancy Patricia Pelosi) は米国の政治家。カリフォルニア州を選挙区とする下院議員。1987年に初当選。2003年に当時野党であった下院民主党のリーダーである民主党下院院内総務に。2006年の中間選挙で下院民主党が与党となったことで、2007年より女性初の下院議長となった。その後共和党が下院で多数派となったため、民主党院内総務に戻り、2018年の選挙で下院民主党が多数派を奪い返すと、2019年より下院議長に復した。
下院議長 米連邦下院議会の議長。下院で多数派を占める党の下院議員から選出される。上下両院合同会議などにおいても、一部を除いて下院議長が主催する形となる。大統領が職務を継続できなくなった場合の大統領権限継承順位は、上院議長を兼ねる副大統領に次ぐ2位。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・7月)
8月10日21:15
☆☆☆
 米雇用統計が予想を超える強さを見せたことで、大幅利上げ継続観測が強まっている。物価高が収まらなければ大幅利上げが継続される可能性が高い。米国のインフレ目標はPCEデフレータであるが、同系統の指標で発表が早い米消費者物価指数が注目される傾向がある。前回6月の同指標は市場予想を超え9.1%と、1981年11月以来40年超ぶりの大幅な伸びを示した。ガソリン価格の大幅な伸びが上昇の材料となった。7月に入って米国のガソリン小売価格に低下傾向が見られるため、今回は伸びが鈍化すると予想されている。市場予想は前年比+8.7%。もっともエネルギーと食品を除くコア指数は前年比+6.1%と前回の+5.9%から上昇見込み。エネルギー価格の上昇がコスト高につながり、幅広い分野での価格上昇につながっている。全体の数字が予想ほど下がらず、コアが予想を超える上昇を見せた場合、物価高への警戒感が強まり、1ドル=137円台に向けたドル高円安が予想される。
英第2四半期GDP速報値
8月12日15:00
☆☆
 英国のシンクタンク、国立経済社会研究所(NIESR)は3日、英経済が今年第3四半期にリセッション(景気後退)入りし、来年第1四半期まで継続するとの見方を示した。12日に発表される第2四半期GDP速報値は前期比-0.1%と、第1四半期の+0.8%から落ち込む見通し。同時に発表される6月の月次GDPは前月比-1.1%と大きなマイナス。英国の月次GDPは、3、4月とマイナス成長の後、5月は+0.5%と予想を超える伸びを示した。これによりマイナス成長回避の期待が広がったが、6月に大きく低下し、4半期ベースでもマイナスになるとの見方になっている。予想通りかより弱い結果を示し、今後のリセッション入り懸念が広がるとポンド売りに。
米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月)
8月12日23:00
☆☆
 6月に過去最低水準となる50を付けたミシガン大学消費者信頼感指数は、7月に51.5(速報値時点では51.1)とやや持ち直した。8月は52.5とさらに改善が見込まれている。米雇用統計は強めに出たとはいえ、米景気の先行きに不透明感が残っている。今後の景気動向を見越すうえでアンケート調査による景況感関連の指標は重要視される傾向があるため注意が必要だ。予想ほど改善が見られず、前回から悪化するようだと133円台に向けたドル安円高も予想される。

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