2022年09月20日号

(2022年09月12日~2022年09月16日)

先週の為替相場

米消費者物価指数を受けてドル高進む場面も

 先週(9月12-16日)は、前半にドル買いが強まった後、調整が入る展開だった。

 先々週、一時1ドル=144円99銭と145円の心理的節目に迫るドル高の後、黒田東彦日銀総裁の円安けん制発言などに141円台を付けるなどドル買いポジションの調整が入った。先週の週明けは142円台前半を中心に推移。ドル高基調を意識するものの、短期間でのドル急伸への警戒感も強かった。

 先週最大の注目材料となったのは13日発表された8月の米消費者物価指数(CPI)。CPI発表前はポジション調整で141円台にドルがいったん軟化した。CPIは前年同月比+8.3%と前回7月の+8.5%からは鈍化したものの、市場予想の+8.1%を上回った。8月に入ってガソリン価格が大幅に低下したが、食品・住宅関連費の上昇が目立ち、家計は依然厳しい状況にあるとの印象を与えた。

 9月20、21日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想される利上げ幅は、米CPI発表直前で9割強が0.75%、1割弱が0.50%。米CPI発表後は0.50%がなくなる代わりに1.00%が浮上。一時は1.00%予想が33%前後まで増えた。

 こうした動きを受けて、14日午前の東京市場で7日に付けた直近高値に迫る144円96銭までドルが上昇した。しかし、神田真人財務官(用語説明1)が「あらゆるオプションを排除せず、適切な対応をしたい」と発言。鈴木俊一財務相も同様の発言の後、あらゆる手段には介入を含むかとの記者団の質問に「そう考えてもいい」と発言したことで、ドル高の調整が入った。同日午後、日本経済新聞が複数金融機関の話として、日銀がレートチェック(用語説明2)を実施したと報じたことで、142円台半ば近くまでドル高の調整が進んだ。

 一方、先週前半に1ユーロ=1.02ドルを試すユーロ高ドル安となった。ウクライナ軍が同国東部ハルキウ州で、ロシア軍が占拠後に軍事拠点としていたイジュームなどを奪還したとの報道が好感された。ドイツ連銀のナーゲル総裁が今後の積極的な利上げ姿勢継続に言及したことなどもユーロの買い材料となった。

 1ユーロ=1.02ドル近くから、米CPI発表後にドル買いが強まり、0.99ドル台後半までユーロが下落。その後は1.0000ドルを挟んでのレンジ取引が続いた。

今週の見通し

 今週は各国中央銀行による政策金利発表が相次ぐ。20、21日(結果発表は日本時間22日午前3時)の米連邦公開市場委員会(FOMC)では3会合連続の0.75%利上げ予想が大勢だ。しかし、13日発表された8月の米CPIの強い結果を受けて1.00%利上げ観測が浮上し、市場の警戒感を誘っている。

 10日から、米FOMC出席メンバーによる金融政策に関する発言が原則禁止されるブラックアウト期間に入り、米CPIを踏まえたFOMCメンバーの意見が確認できないことも先行き不透明感につながっている。

 大勢の予想通り0.75%利上げはこれまでドル買い材料と考えられていたが、FOMC結果発表直前に1.00%利上げ観測が強まっていれば、いったんドル売りが強まる可能性がある。

 ただ、ドル高基調は継続するとみられる。短期金利先物市場では来年3月のFOMCで4.50-4.75%まで政策金利が上昇するとの見通しが大勢。FOMC声明文やFOMC後のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見から今後も積極的な利上げが続くとの方針が確認できればドル買いの流れとなるだろう。

 直近のドルの高値1ドル=145円を意識する展開が予想される。0.75%利上げ発表を受けて市場のドル買いポジションがある程度整理され、過熱感が後退した後に上昇するとドルは上に行きやすくなる面もあり、大きなポイントである150円を意識する展開となる可能性がある。

 今週は、日本、英国、スイス、ノルウェー、ブラジル、トルコなどでも政策金利が発表される。マイナス金利の解消見通しが強いスイス、一部で利下げ見通しのあるトルコなど、注目ポイントは多く、不安定な値動きに注意したい。

用語の解説

神田財務官 財務官は財務省において為替や国際金融など、国際局が所管する業務を専担する次官級のポスト。為替介入は財務大臣の決定により実施されるが、決定に際して関連業務の官僚側トップである財務官の意向がかなり重要になると考えられている。神田財務官は主計局次長、大臣官房総括審議官などを経て、2020年7月より国際局長、2021年7月8日より財務官となっている。過去最大の介入である2003年のテイラー・溝口介入に際しては、実務を担当する財務省為替市場課の課長補佐を務めていた。
レートチェック 日本銀行が金融機関に為替相場の水準を確認すること。日銀による為替市場の相場動向についてのヒアリングは随時行われており、レートチェックといった場合は、実際に取引が可能なレートを金融機関に確認した場合に使われることが多い。そのため、為替介入の前段階とされている。前回レートチェックが行われたと報じられたのは約10年前。パンデミックによる円高が進んだ際などを含め、その後何度かレートチェック実施の噂が流れたが、確認は出来なかった。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会
9月22日03:00
☆☆☆
 20、21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、日本時間22日午前3時に結果が発表される。FRBは今年3月のFOMCでの0.25%利上げから利上げサイクルに入り、5月に0.5%利、6月と7月に各0.75%の利上げを実施した。これまでの4回の利上げを経て、米国の政策金利(FF金利翌日物誘導目標)は2.25-2.50%と今年前半時点で中立金利とされた水準に達している。今回のFOMCでの利上げ幅について、前回(7月26、27日)のFOMC直後は0.50%が大勢だった。
 その後発表された米経済指標の強さや8月末のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演での積極的な引き締め姿勢を受けて、0.75%ポイント利上げ見通しが大勢となった。複数のFRB関係者から0.75%利上げに前向きな発言が出たことや、9月に入って米雇用統計やISM景況感指数などの重要指標が堅調だったことから0.75%予想の織り込みが進んだ。
 先週13日に発表された米消費者物価指数の伸び率が市場予想を超えたことで、利上げ観測が一段と強まり、1.00%利上げ観測が浮上した。短期金利先物市場からみた利上げ割合を示すCME FedWatchでは一時約33%と、全体の三分の一が1%利上げを見込んだ。FOMC直前の現在も1.00%利上げ観測が残っている。実際に1.00%ポイント利上げが実施された場合、1ドル=145円超えに向けてドル買いが強まると予想される。
日銀金融政策決定会合
9月22日
☆☆☆
 日本銀行は今回の金融政策決定会合でも金融緩和政策を堅持する姿勢を維持するとみられる。サプライズ感はないが、直前に米FOMCで積極的な利上げ姿勢が強調されていれば、日米の金融政策姿勢の対比がドル買い円売りを招く可能性がある。会合後の黒田日銀総裁会見でも緩和維持に向けた強い姿勢が示されると予想される。円安進行もあり、海外勢を中心に緩和姿勢の後退を期待する動きが出てくれば、従来通りの緩和継続姿勢が円売り材料となりそうだ。9月20、21日のFOMC後の値動き次第ではあるが、中期的に1ドル=150円に向けた期待感を強めると予想される。
d* INDICATOR3 英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC) 9月22日20:00☆☆☆
 英中銀は前回MPC(8月4日)で、約27年ぶりとなる0.5%の大幅利上げを実施。今回も0.5%利上げの継続が見込まれる。今月14日に発表された8月の英消費者物価指数(CPI)前年比が9.9%と7月の10.1%からは鈍化したが、インフレ目標の2%をはるかに超える高い水準にあることに加え、前回会合で公表した金融政策レポートで、CPIが年末にかけて13%台へ上昇するとの見通しが示されたことなどから、今回も大幅利上げ継続がほぼ確実視されている。ただ、16日発表された8月の英小売売上高は、市場予想の前月比-0.4%、前年同月比-3.6%を超える前月比-1.6%、前年比-5.4%と厳しい結果を示しており、ここにきて英経済成長の鈍化傾向が目立ち、警戒感を生んでいる。英中銀は今年第4四半期から景気後退局面に入る見通しを示しており、今後の利上げ継続がどこまで進むのかについて、市場の見通しが分かれている。今回の大幅利上げを受けて、英景気停滞への警戒感が強まるようだと、利上げ後にポンド売りが強まり、先週下値を支えた1ポンド=1.13ドル台半ばのサポート水準を割り込む可能性がある。

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