2022年10月11日号

(2022年10月03日~2022年10月07日)

先週の為替相場

ドル円は週後半にかけて上昇

 先週(10月3-7日)半ばにかけてドル売りが優勢となった後、ドル買いの流れに戻り、政府・日銀がドル売り円買いの市場介入を実施した9月22日以来の水準にドルが上昇した。

 3日発表された9月の米ISM製造業景気指数、4日発表された8月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(用語説明1)が低調だったことを受けて、米国の大幅利上げ観測が後退し、週前半はドル売りが優勢だった。株価上昇もリスク警戒感によるドル全面高圧力の緩和につながった。週初の東京市場からロンドン市場にかけて、先々週に上値を抑えた1ドル=145円00銭手前の売りをこなして145円台に乗せたことで、上昇一服感も出ていた。

 3日の米ISM製造業景気指数は全体の数字が市場予想を下回ったことに加え、8月の同指標を支えた新規受注と雇用がともに急速に悪化し、先行きの景気悪化に対する懸念が高まった。4日発表された8月の米求人件数は1005.3万件(7月は1117万件)とパンデミック発生時の2020年を除けば減少幅は過去最大となり、米労働需給のひっ迫が沈静化に向かうとの見通しが台頭した。

 4日のNY市場から5日の東京市場朝方にかけて143円50銭台までドルが下落したが、その後はドル買い優勢に転じた。週末7日の米雇用統計公表を前に、行き過ぎたドル売りへの警戒感に加え、5日発表された米ADP雇用者数とISM非製造業景気指数が堅調だったこと、8月の求人件数減少を受けた米労働需給に対する警戒感の後退などがドルを押し上げた。

 利上げに慎重な「ハト派」として知られるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁が、市場の一部にある2023年中の利下げ見通しに否定的な見解を示したこともドル買いにつながり、週後半にかけてドル高が進んだ。

 注目された7日の米雇用統計は非農業部門雇用者がほぼ市場予想通り。失業率は0.2%低下と堅調な結果を示し、大幅利上げ期待を支える材料と受け止められ、ドルが買われた。

 トラス英新政権の減税案などを巡り、ポンドはこのところ値動きが大きい。先々週の英イングランド銀行(中央銀行)による長期債購入を受けたポンド買いの流れが続き、週前半はポンドが上昇した。財政悪化を招くとされた所得税最高税率の引き下げ法案の採決が先送りされる見通しだと報じられたことで、先週初めからポンド買いドル売りが優勢。その後英財務相が同法案の撤回を表明したことやドル全面安基調から、週半ばにかけて1ポンド=1.15に迫った。

 その後はポンド売りが優勢になった。トラス首相は与党保守党の会議に出席し、所得税最高税率引き下げ法案は撤廃するが、その他減税策は実施する方針を表明。財政赤字への懸念から週末にかけて1.10ドル台にポンドが下落した。

 4日の豪準備銀行(中央銀行)理事会が大方の0.5%利上げ観測と異なる0.25利上げを発表すると、1豪ドル=0.6500ドル台から0.6440ドル台に豪ドルが急落。いったん値を戻したが、豪準備銀が景気後退を警戒しているとの見方が広がり、週後半のドル高局面で0.63ドル台へ豪ドルが大幅に下落した。

今週の見通し

 米国の大幅利上げ期待がドル買いを誘う展開に。

 7日の米雇用統計を無難に消化したことで、11月1、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げ見通しが強まっている。米短期金利先物が織り込む金利水準を示すCME FedWatchでは、先週前半に65%前後だった0.75%利上げ確率は週明け80%を超えた。

 13日発表される9月の米消費者物価指数次第では大幅利上げ観測がさらに強まり、ドル買いが入りやすいだろう。

 ドルは9月22日に市場介入が実施された水準に近付いており、上値追いには慎重な姿勢もうかがえる。ただ、財務省は介入水準があるという見方を否定している。前回介入時は円安が急激に進んでいたが、ドルがじりじりと上昇する直近の状況では介入が入りにくいだろう。

 145円台では「神田シーリング」(用語説明2)を意識して、ドルがゆっくりとした。146円台乗せでドル買いに安心感が広がり円安が加速した場合は、市場介入が再び実施される可能性が高そうだ。一方、146円台乗せ後もドル高のペースが上がらなければ、市場介入の可能性は低く、その後もドル高円安が徐々に進み、148円に向けた動きも予想される。

用語の解説

米雇用動態調査 米労働省労働統計局(BLS)が実施する米国の雇用市場に関する調査。Job Opening and Labor Turnover Surveyの頭文字をとってJOLTSと呼ばれる。求人数、求人率、採用数、自発的離職者数などが発表される中、求人数が最も注目される。1998年の予備調査を経て、2000年4月からデータ収集を開始、2004年4月から毎月の公表を正式にスタートした比較的新しい指標となる。
神田シーリング 9月22日に約24年ぶりに実施された円買い介入が145円90銭前後から行われたとみられる。このため、通貨当局がこれ以上の円安進行を避けたい水準として、ドルの天井(シーリング)が146円手前にあるとの思惑が市場で広がっている。介入の決定権は鈴木財務大臣にあるが、実際には財務省の国際金融関係のトップである神田財務官の影響が大きいため、市場が予想する政府のドル高許容上限を神田シーリングと呼ぶ。

今週の注目指標

米FOMC議事要旨
10月13日03:00
☆☆☆
 9月20、21日の米FOMCの議事要旨が12日NY市場午後に公表される。9月FOMCでは、政策金利であるFF金利誘導目標が3.00-3.25%と市場予想通り0.75%引き上げられ、参加メンバーによる金利予想分布を示す「ドットプロット」では、年末の政策金利見通しについて4.25-4.50%が最多だった。これは次回11月FOMCで0.75%、12月13、14日FOMCで0.50%それぞれ利上げすることを意味する。2023年末の政策金利見通しは中央値が4.50-4.75%であり、来年も利上げが続くとの見通しがFOMCメンバーの大勢を占める。タカ派(積極利上げ派)な印象を受けるFOMCで、どのような議論があったかが注目される。9月のFOMC後、次回11月FOMCでの利上げは0.75%予想が大勢になったとはいえ、0.5%予想も残っている。議事要旨公表を受けて0.75%利上げ見通しが強まれば1ドル=146円に向けたドル高に動く可能性がある。
米消費者物価指数(9月)
10月13日21:30
☆☆☆
 米国の積極的な利上げ姿勢が続く中、利上げペースに大きな影響を与える消費者物価指数が今週最大の注目材料。6月分が前年比+9.1%に上昇した後、原油高一服でガソリンなどエネルギー価格が下落し、2カ月連続で伸び率が低下。前回発表された8月分は前年比+8.3%となった。ただ、食品とエネルギーを除くコア部分は、前回前年比+6.3%と7月分の+5.9%や市場予想の+6.1%を超え、米国の物価高への警戒感が継続する形で、大幅利上げにつながっている。前回の内訳ではガソリン価格の伸びが大きく鈍化した。8月のガソリン価格の前年比は+25.6%。水準は高いが、7月の+44.0%や6月の59.9%などと比べると相当低い伸びとなっている。ガソリン価格は消費者物価指数(CPI)全体の約4.82%を占める大きな項目だけに、2カ月連続の伸び率低下の主因となった。一方、食料品価格の伸びが前回も顕著だった。全体の伸びは前年比+11.4%と7月の+10.9%、6月の+10.4%から拡大している。家庭用食品はは+13.5%と高騰し、家計の負担が重くなっている。今年に入って上昇が続く住居費が前回前年比+6.2%に上昇するなど、コア部分の項目も全般に上昇が目立っていた。
 今回発表の9月分は前年比+8.1%と前回から伸びがやや低下する見込み。9月のガソリン価格(全米全種平均)が1ガロン当たり3.817ドルと、8月の4.087ドルから低下していることが全体を抑えそうだ。もっとも、食品を中心に物価高の勢いは強く、伸び率は小幅の低下にとどまると予想される。エネルギーと食品を除くコア部分は前年比+6.5%と前回の+6.3%から上昇が見込まれる。全体の数字が予想ほど減速せず、コアの伸びが目立てば、11月FOMCでの0.75%利上げ見通しが強まり、148円に向けたドル高の可能性が増すだろう。
米小売売上高(9月)
10月14日21:30
☆☆☆
 物価高の家計への打撃が推察される中、9月の米小売売上高が発表される。前回8月分は前月比マイナス予想に反して+0.3%とプラス圏を確保。ガソリン価格の下落からガソリンスタンド売上高が-4.2%と大幅に低下したが、自動車・同部品、建設資材などの伸びが全体を支えた。今回も+0.2%とプラス圏を維持する見込み。ガソリン価格は9月に入っても下落しているためガソリンスタンド売上高はマイナス圏が見込まれるが、好調な自動車販売が全体を下支えするだろう。自動車を除くコア部分は前回の-0.3%に続いて-0.1%とマイナス圏が予想される。予想前後であれば相場への影響は限定的とみられるが、物価高が家計の財布のひもを引き締め、予想外の売り上げ鈍化が判明するとドルは144円台に下落する可能性がある。

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