2022年10月24日号

(2022年10月17日~2022年10月21日)

先週の為替相場

ドルは対円で高値から一時急落も地合いは堅調

 先週(10月17-21日)は1ドル=150円の節目を超えてドル高が進む場面があった。米国債利回りの上昇などを受けて先々週後半に146円台から148円80銭台までドルが買われた流れを受け、148円台で取引がスタート。日本政府・日銀による市場介入への警戒感からドルの上値追いにやや慎重な雰囲気もあったが、押し目ではすかさず買いが入り、ドルはじりじりと上昇した。

 17日に149円台を付け、18日には直近高値を超えて32年ぶりの水準にドルが上昇。ポジション調整売りに数十銭下がっては値を戻す動きを繰り返しながら、節目の150円手前までドル高が進んだ。

 オプション取引に絡むドル売り注文が150円手前に並んでいたが、米債利回り上昇を受けたドル買い意欲の強まりから20日の海外市場で150円台に乗せた。

 11月1、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に続いて12月13、14日のFOMCでも0.75%の利上げを続けるとの見方が広がる中、150円台乗せの後もドル買い円売りが続き、21日午前のNY市場で152円手前までドルが買い進まれた。

 その後、大量の売りでドルが146円台まで5円以上急落した。政府・日銀が市場介入したとの観測が広がったが、神田真人財務官は記者団に「為替介入の有無についてはコメントしかねる」と述べた。市場ではいわゆる覆面介入(用語説明1)があったとの見方が強まった。その後、ドルが148円台まで買い戻され、147円台後半で先週の取引を終えた。

 ポンドも値動きが大きかった。財務相を解任されたクワーテング氏の後任となったハント新財務相が中期財政計画についての声明を24日に発表すると報じられたことで、発表前の同日東京市場から期待感でポンドは堅調だった。トラス首相が先週末、所得税減税法案の採決を2024年まで延期する旨を発表していたが、ハント財務相は声明で所得税減税を撤回し、その他の減税措置の大半を見直すと明言。財政悪化懸念の急速な後退がポンド買いを誘い、1ポンド=1.14台、1ポンド=170円台までポンドがそれぞれ上昇した。

 その後、ポンド売り優勢に転じた。トラス首相への退陣要求が強まったことや、19日に発表された9月の英消費者物価指数の上振れがポンドを圧迫した。

 フレーバーマン英内相の解任が決まるとポンド売りがさらに売りが強まり、1ポンド=1.11ドル台を付けた。20日にトラス首相が辞意を表明すると、英国の政治的混乱が収束するとの見方から1.13ドル台を回復。対円でもポンドが買われ、167円台半ば割れから169円台後半に上昇した。

 その後は再びポンド売りに傾いた。トラス首相辞任を受けた保守党党首選挙では、トラス首相に敗北したスナク元財務相(用語説明2)や不祥事で辞任したジョンソン前首相らが有力候補として名前が挙がる中、すぐに党勢を回復させることは難しいとの見方から1.10ドル台までポンドが下落した。

 市場介入とみられる大量の注文でドル安円高に振れたことを受けてドルは他通貨でも売られ、ポンドは1.13ドル台を回復した。対円では169円台後半から165円00銭近くまで下落した後、167円台までポンドが値を戻した。

今週の見通し

 市場介入を警戒も、基調はまだドル高円安。

 21日の海外市場に続き、週明け24日朝にも市場介入とみられるドル売り円買いでドルが急落したことで、市場では介入への警戒感が広がっている。市場介入の実施が公表されている9月22日も、政府・日銀が介入の有無を公式に認めていない21日も24日も、当日の安値から2円以上ドル高円安に振れた後での大量のドル売り円買いが入っており、急速な円安に政府・日銀が積極的に対応する姿勢が示されている。

 日本の通貨当局のこうした姿勢がドル高円安の進行を抑えそうだが、大局的にはまだドル高円安方向の流れが続いているとみられる。金融引き締めを急ぐ米連邦準備制度理事会(FRB)と金融緩和継続を強調する日銀の政策姿勢の差がドル買い円売りの底流にある構図に変化はない。

 日銀は27、27日に金融政策決定会合を開く。現行の金融緩和政策を維持する方針を確認する公算が大きく、日米金利差拡大を背景とするドル高円安基調が続きそうだ。

 市場関係者の観測を含め、介入があったのは1日のうちに円安が急速に進んだ日。ドル高円安が緩やかに進む限り、介入が入りにくいとの見方も成り立ち、ドルはじりじりと上値を試す展開が予想される。

 ポンドはこのところ値動きが激しい。週末にジョンソン前首相が保守党党首選への不出馬を表明し、スナク元財務相の次期党首・首相就任がほぼ確実となった。政局の混乱が一服するとポンド買いが予想される一方、米債利回り上昇を材料とするドル買いも見込まれ、ポンドは対ドルで上昇一服となりそうだ。対円レートは170円を超えて上値を試す可能性が意識される。

用語の解説

覆面介入 通貨当局が為替市場への介入を実施した事実を公開しないことを覆面介入と呼ぶ。介入した事実を公表すると、市場参加者が介入と同方向の注文(今回はドル売り円買い)を出し、介入効果が大きくなる「シグナル効果」が期待されるが、覆面介入では効果が小さくなる。一方、市場の一時的な変動を抑えられる。
スナク元財務相 リシ・スナク(Rishi Sunak)は英保守党の下院議員。米スタンフォード大学で修士号を取得後、米ゴールドマンサックスなどを経て、2015年総選挙で英下院議員に選出された。第2次メイ内閣で地方自治担当政務次官、第1次、第2次ジョンソン内閣で財務省主席担当官に就き、2020年2月から2022年7月5日まで英財務相。2022年7月総選挙では、保守党議員の中で最も多くの票を集めたが、党員による決選投票でトラス候補に敗れた。

今週の注目指標

ECB理事会
10月27日21:15
☆☆☆
 欧州中央銀行(ECB)は定例理事会の結果を21時15分に発表し、21時45分からラガルドECB総裁が記者会見する。前回9月8日理事会でECB初の0.75%の政策金利引き上げが決まり、今回も同幅の利上げが予想される。9月理事会後に発表された9月のユーロ圏消費者物価指数が前年同月比+9.9%を記録するなど、物価高騰が続いており、今回もインフレ沈静化を狙った急速な金融引き締めが見込まれる。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のナーゲル総裁が国際通貨基金(IMF)年次総会でインフレ見通しの上振れリスクに言及する一方、早期の利上げ停止期待に釘を刺し、追加利上げに前向きな姿勢を強調した。ECB理事会声明やラガルド総裁会見でも追加利上げに強い意欲が示されると、1ユーロ=0.99ドル台に向けてユーロが買われる展開が予想されれる。
米第3四半期GDP速報値
10月27日21:30
☆☆☆
 第2四半期の米国の実質GDPは2期連続で前期比マイナスを記録する「テクニカルリセッション」入りした。第3四半期はプラス圏への復帰が予想される。第1四半期は内需が好調な一方で、サプライチェーン問題で国内生産が停滞したため輸入が拡大し、貿易赤字が過去最大規模に膨張したことがGDPを押し下げた。第2四半期はブレの大きい在庫のマイナスに政府の新型コロナ関連対策事業に伴う財政支出減少が重なり、事前のプラス予想が覆った。このため、米景気はそれほど弱くないという観測が広がっており、第3四半期はプラス圏の回復が予想されている。ただ、住宅投資は第2四半期に前期比年率-0.7%にとどまった。9月に入り、米国で最も一般的な30年固定の住宅ローン金利が6.7%まで上昇するなど住宅ローン金利の上昇が著しく、今回も弱めの数字となる可能性がある。こうした要因から、市場予想の前期比年率+2.3%に届かない場合はドル売りが広がり、145円台へのドル高調整も予想される。
日銀金融政策決定会合
10月27日・28日
☆☆☆
 日銀は27、28日に金融政策決定会合を開く。28日昼前後に結果が公表され、同日15時半に黒田日銀総裁が記者会見を始める予定。円安が進行し、9月22日には約24年ぶりの円買いドル売り介入が実施された。金融緩和政策を続行する日銀と急ピッチの利上げを続ける米FRBの差が強力なドル買い円売り要因となっている。海外勢を中心に日銀の緩和姿勢後退を予想する動きもあるが、黒田総裁はこれまで国会答弁などで金融緩和の堅持を再三強調しており、今回も現行の金融緩和政策維持が濃厚だ。日銀の政策変更なしはある程度織り込み済みだが、海外勢を中心に緩和姿勢の一部後退観測が事前に強まっているようだと、緩和継続決定の発表後に円売りが強まり、150円台を再び超えてドルが上昇していく展開が予想される。

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