2022年10月31日号

(2022年10月24日~2022年10月28日)

先週の為替相場

週後半にかけて一時ドル安の後、週末にかけて調整入る

 先週(10月24-28日)は後半にかけてドル売り円買いが見られたが、週末を前にドルが買された。

 先々週末21日の海外市場では、日本政府・日銀による市場介入とみられる大量のドル売りで、1ドル=152円手前から146円台までドルが急落するなど値動きが大きかった。24日は1ドル=147円台後半で先週の取引をスタート。149円台後半まで買い進まれた後、先々週末と同様に市場介入とみられる大量の売りでドルは145円台まで下落した。21日に続き手政府・日銀が市場介入の有無について明言せず、149円を超える水準でのドル買いに慎重な雰囲気が広がった。

 25日発表された10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数(用語説明1)が102.5と、市場予想(105.5)や前回値(107.8)を大幅に下回ると、147円50銭台までドルが売られた。

 低調な経済指標が米国景気悪化への懸念を強め、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅ペースを鈍化させるとの見方が広がり、その後もドル売り円買いが優勢となった。米長期債利回りの低下もドル下落を後押しした。

 27日には、前日に下値支持線となっていた146円00銭割れまでドル安が進むと、投機筋のストップロス注文を巻き込んで145円11銭前後までドル安が進んだ。

 ドルはその後、買い戻しが優勢となった。日銀は27、28日の日銀金融政策決定会合で、市場予想通り金融政策の据え置きを決定した。黒田東彦日銀総裁は記者会見で、「今すぐ利上げ、出口が来るとは考えていない」と、当面の緩和維持姿勢を強調すると円売りが強まり、147円台後半までドル高円安に振れた。

 先週後半にかけて対ユーロでもドル安が優勢だった。事実上の首相選挙となる英与党・保守党の党首選をスナク元財務相が制し、政治的混乱が収まるとの見方からポンドが買われ、ユーロが連れ高したと面もある。

 27日の欧州中央銀行(ECB)理事会を前に1ユーロ=1.0090ドル台まで上昇した。ECB理事会での0.75%利上げを織り込み、週前半からユーロ買いが入りやすい地合いになっていた。

 ECB理事会は市場予想通り0.75%の利上げを決定。利上げ発表後は利益確定の売りでユーロは上値が重くなった。ラガルドECB総裁が理事会後の記者会見で、ユーロ圏の経済活動が第3四半期(7-9月期)に著しく減速した可能性が高く、2023年第1四半期にかけてさらに減速するとの見方を示すとユーロ売りが強まり、週末にかけて0.99ドル台前半までユーロ安ドル高に動いた。

 一方、英保守党党首選をめぐって先々週末、ジョンソン前首相、モーダント下院院内総務が相次いで出馬を断念し、スナク元財務相の勝利が確定的となったことで、週明けからポンド買いが優勢となった。新党首に財政規律と市場との対話を重視するスナク元財務相が選出されたことを市場は好感し、先週後半にかけて1ポンド=1.1650ドル手前までポンドが上昇した。その後、1.15ドル台前半まで下落したが、週末を前に1.16ドル台を回復するなどユーロは底堅かった。

 カナダ銀行(中央銀行)は26日の金融政策委員会で大方が予想する0.75%を下回る0.5%利上げを決定し、市場参加者にとってサプライズとなった。マックレム総裁は利上げ決定後に記者会見し、追加利上げの必要性を示す一方、「大幅な利上げになる可能性も、通常の利上げ幅となる25BP(0.25%)にシフトする可能性もある」と、利上げ幅縮小を示唆した。

 先々週後半の1ドル=1.38カナダ台半ばから1.35カナダ台前半までドル安カナダ高に振れていたが、0.5%利上げ決定が判明すると1.3650カナダ近くまでドル高カナダ安が進行した。もっともドル売りカナダ買いの基調は変わらず、週末にかけて1.35カナダ割れまでドルが対カナダで下落した。

今週の見通し

 大型イベント・重要統計発表が連続。

 今週は米、英、豪、ノルウェーの金融政策決定会合が予定され、米ISM製造業・非製造業景気指数、米雇用統計、ユーロ圏第3四半期GDP、同10月の消費者物価指数など重要統計の公表も相次ぐ。

 米、英はともに0.75%の利上げが予想され、豪、ノルウェーも利上げ継続の見込み。世界的な物価上昇が続く中、各国とも金融引き締め(用語説明2)姿勢を維持しているが、これまでの金融引き締めの景気への悪影響が懸念されている。豪準備銀行(中央銀行)は10月4日に政策金利を引き上げたが、市場予想に反して利上げ幅を0.25%に縮小した。今週は米国が4会合連続、英国が現行体制となった1997年以降で最大の0.75%利上げが見込まれるが、今後は利上げ幅の縮小に向かうとの見方が市場で広がっている。

 景気停滞と物価高に同時に対応することは難しく、為替市場は不安定な動きが予想される。金融当局の声明や要人発言によって値動き大きくなる可能性がありそうだ。

 米国の景気悪化が懸念される中、ISM製造業・非製造業景気指数や米雇用統計への関心が増すだろう。景気悪化懸念が一段と強まると、今後の利上げ幅縮小の思惑からドル売りが広がる可能性がある。

 米FOMCが市場予想通り0.75%利上げを決め、声明文やパウエルFRB議長会見で引き締めペースを緩める姿勢が確認されなければ、150円を超えてドルが急上昇する可能性がある。一方、FRBが金融引き締めの継続に慎重だと受け止められると、ドル売り要因となる。米雇用統計などが低調だった場合はドル安が加速し、145円割れが視野に入ってくるだろう。

用語の解説

コンファレンスボード消費者信頼感指数 米国の経済団体や労働組合などで構成する民間の調査機関コンファレンスボード(Conference Board:全米産業審議会)による消費者の景気マインド調査に基づく指数。5000世帯を対象に現在の景気や雇用情勢、6カ月後のこれらの見通しなどについてアンケート調査を実施し、基準年である1985年を100として指数化したもの。
金融引き締め 中央銀行が物価の安定や過熱した景気の抑制を目的に実施する金融政策。政策金利や預金準備率の引き上げ、中央銀行の保有資産の縮小などを通じて、市場への通貨供給量を減らし、景気や物価を落ち着かせる。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
11月03日03:00
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)が1、2日に開催される。日本時間3日午前3時に結果を公表し、同3時半にパウエルFRB議長が記者会見を始める。4会合連続となる0.75%利上げがほぼ確実視されているが、一部で0.5%利上げも予想されている。短期金利先物が織り込む利上げ確率を示すCME FedWatchでは0.75%利上げ予想が一時97%を超えたが、直近では83.7%に低下した。
 ごく少数派が予想する0.5%利上げの場合、ドル売りが急速に強まりそうだ。ただ、9月の消費者物価指数が前年比+8.2%、同PCE(個人消費支出)デフレーターが前年比+6.2%と、高水準で推移しているため、今回のFOMCで利上げ幅を縮小する可能性は相当に低いだろう。
 大方の予想通り0.75%利上げの場合、FOMC声明文とパウエルFRB議長の記者会見に市場参加者の関心が集まる。前回(9月20、21日)FOMCで示したFOMC参加メンバーによる年末時点での政策金利見通しは4.25-4.50%。今回のFOMCで0.75%ポイント利上げの後、12月13、14日のFOMCで0.5%に利上げ幅を縮小するとの予想が大勢だった。しかし、その後発表された米物価統計の強さから、CME FedWatchでは12月の0.75%利上げを一時80%近くの確率で織り込んでいた。その後、米景気悪化懸念が強まる中で、0.5%利上げ見通しが広がり、ここ1週間ほどは「0.5%」が「0.75%」よりも多い。市場との対話を重視するパウエル議長だけに、12月FOMCで利上げ幅を縮小する場合、声明文や記者会見で何らかの示唆を与える可能性が高い。発言次第で今回の金融引き締めサイクルで予想される金利到達点の水準が下がり、米長期債利回りの低下を伴ってドルが急落し、145円割れが視野に入ってくるだろう。
英中銀金融政策会合(MPC)
11月03日21:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)は金融政策委員会(MPC)の結果を3日に発表する。イングランド銀行が政府からの独立性を確保した1997年以降で最大の0.75%利上げが予想される。前回MPCまで7会合連続で政策金利を引き上げ、前回(9月22日)は2会合連続で0.5%の大幅利上げを実施した。前回会合で委員9人のうち3人が0.75%利上げを、1人が0.25%利上げをそれぞれ主張し、5対3対1での0.5%利上げが決まった。ベイリー総裁、ピル・チーフエコノミストら影響力の大きいメンバーは0.5%利上げを主張していた。ただ、10月19日発表された英消費者物価指数は前年比+10.1%と物価高騰が著しく、今回はベイリー総裁らが0.75%利上げを支持するだろう。一方、前回初のMPC参加で一人だけ0.25%を利上げ主張したディングラ委員やハト派姿勢が目立つテンレイロ委員らは0.5%利上げを主張しそうだ。
 今回のMPCは議事要旨が公表され、総裁会見のある「スーパーサーズデー」に当たっている。大方の予想通り.75%利上げの場合、議事要旨と総裁会見が相場に大きな影響を及ぼしそうだ。米国以上に景気悪化懸念が強く、すでに景気後退期入りしているとの観測がある中で、今後の利上げ幅縮小が示唆されると1ポンド=1.14ドル台に向けて下落する可能性が出てくる。
米雇用統計
11月4日21:30
☆☆☆
 4日に10月の米雇用統計が発表される。前回9月は非農業部門雇用者数が26.3万人増と、市場予想の27万人増を若干下回ったものの堅調な伸びとなった。失業率は8月比横ばいの3.7%予想に対して、3.5%に低下した。
 雇用者数の内訳では、レジャー&ホスピタリティ部門の8.3万人増が目立つ。同部門はパンデミックの打撃を最も強く受け、その後の回復は他部門より遅れている。米国の全雇用者数はパンデミック前の2020年2月の水準を超えて増加しているが、同部門は前回時点でまだ95.2万人も少ない。一方、小売部門と運輸・倉庫部門で雇用者が減っていた。ともに景気動向に敏感な部門だけに、先行きの景気悪化の可能性が警戒されている。
 今回の予想は19万人前後の増加。予想に近い数字にとどまると増加幅は4カ月連続で縮小し、2021年以降で最も小さくなる。ただ、パンデミック前の水準を8月時点で上回っている状況での19万人増は決して悪い水準ではない。コロナ禍で雇用市場が混乱する前の2010年から19年の10年間では、非農業部門雇用者数の増減幅は平均で18万人増となっており、19万人増はやや強めの水準に相当する。失業率は3.6%と前回の3.5%から悪化する見通しだが、こちらは8月分の3.7%が9月分に0.2%ポイント低下した反動とみられる。
 予想前後の数字であれば、12月FOMCでの利上げ幅の判断は、10月の消費者物価指数や11月の雇用統計公表まで保留されそうだ。雇用統計の内容が市場想定内であれば、米国の景気悪化が懸念される中で若干のドル高材料と受け止められ、1ドル=150円に向けたドル高も予想される。

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