2022年11月07日号

(2022年10月31日~2022年11月04日)

先週の為替相場

米FOMCなどで変動後、ややドル安円高

 先週(10月31日-11月4日)は米連邦公開市場委員会(FOMC)や米雇用統計公表と重要イベントが相次いだ。

 序盤はFOMCを前にドル買いが優勢だった。先々週後半は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの思惑から1ドル=145円10銭台を付けていた。先週に入り、著名なFEDウォッチャー(金融政策を始め、人事などを含めたFRBの動きを調査・分析している専門家)である米紙記者がターミナル・レート引き上げ観測について言及したことなどが市場の話題となり、FRBの利上げペース緩和期待が後退。1ドル=148円80銭台までドル高が上昇した。

 日本の財務省が10月31日公表した9月29日から10月27日までの約1カ月間の外国為替市場における為替介入は総額6兆3499億円と、1カ月の円買い介入額では過去最大だったことが判明。巨額の介入でもドル高円安傾向が続いていることで、投資家のドル買い円売りに安心感を与えたとの見方も出ていた。

 その後、2日の衆院財務金融委員会で黒田東彦日銀総裁が「物価目標が見通せるのであれば前段階でイールドカーブコントロール(YCC:長短金利操作)を柔軟化していくことは、一つのオプションとしてありうる」と発言したことを材料視して円買いが広がった。1ドル=148円台から146円台後半までドルが一時下落し、147円00銭前後でFOMCの結果発表を迎えた。

 FOMCは大方の予想通り政策金利の0.75%引き上げたを決めた。声明では政策金利引き上げを決定するにあたって「金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する」という表現が加えられた。市場はこの表現を、今後の利上げペース減速を示唆するものと捉え、1ドル=145円台を付けるなどドル売りが強まった。

 しかし、FOMC直後の記者会見でパウエルFRB議長は「最終的な金利水準は以前の予想よりも高いことを示唆している」と発言。利上げペース減速は「早ければ次の会合」とし、次回12月13、14日の会合で議論することも示した。ただ、労働市場や米消費者物価指数の状況から、「9月の会合で示された到達点よりも高い水準まで利上げする可能性を示唆する」としており、今後も積極的な利上げを続ける姿勢が強調された。

 これを受けて一転してドル買いが強まり、2日のNY市場終盤にかけて1ドル=148円に迫った。その後いったん利益確定のドル売りなどが出たものの、3日の海外市場でもドル買いが優勢となり、148円台半ば近くまで上昇した。

 その後米雇用統計の発表を前にポジション調整が広がり、147円台後半で米雇用統計の発表を迎えた。

 10月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を上回る伸びを見せたことに加え、前回値も上方修正されるなど雇用の強さを確認する内容だった。一方、失業率は市場予想を超えて悪化。家計調査ベース(用語説明1)の雇用者数は9月分から減少しており、事業所ベースであるNFPとまちまちな結果となった。一時148円台までドル買いが入ったが、その後はドル売りが強まり、146円50銭近くまでドルが下落して先週の取引を終えている。

 その他通貨では1日に豪準備銀行(中央銀行)が市場予想通り0.25%の利上げを実施した。10月26日に発表された豪第3四半期消費者物価指数が市場予想を上回る強めの結果だったことから、市場の一部に0.5%利上げ観測があった。このため、利上げ発表前に豪ドル買いが入り、1豪ドル=0.6400ドル前後から0.6450ドル手前まで豪ドルが上昇した。利上げ発表後は0.6410ドル割れまで豪ドルが下落し、上昇分をほぼ解消した。

 英イングランド銀行(中央銀行)は3日の金融政策委員会(MPC)で、市場予想通り0.75%の利上げを実施した。投票の内訳は7対2(0.25%と0.5%が各1人)。声明では「市場の予想通り金利が上昇すれば2年に渡るリセッション(景気後退)につながる」と警告。ターミナルレート(金利上昇の到達点)も「市場が織り込んでいるよりも低くなる」との見通しを示し、積極的な利上げ継続を示したFRBと対照的だった。声明発表前から慎重な姿勢が示されるとの見方が広がったこともあり、3日の市場では英MPC結果発表前からポンド売りが優勢だった。3日東京市場午後の1ポンド=1.14ドル台前半から発表前に1.12ドルちょうど前後までポンドは軟化。その後、少し戻して発表を迎え、発表後には1.1150ドル台を付けている。

今週の見通し

 今週も8日の米中間選挙(用語説明2)、10日の米消費者物価指数(CPI)と大型イベント・統計発表が予定されている。特に米CPIは米FRBの利上げペース決定に大きく影響するとみられる。

 これまで日本や中国など一部を除いて積極的な金融引き締めが行われたことに加え、今後もある程度の引き締め継続が予想され、世界的に景気停滞が懸念されている。米国は経済が比較的堅調なため、投資資金が集まりやすい状況にあり、中期的なドル高基調の継続が見込まれている。ただ、米CPIの結果次第で流れが急変する可能性がある。発表までは積極的なドル買いが手控えられ、上下ともにやや動きにくくなりそうだ。

用語の解説

家計調査ベース 米労働省労働統計局が毎月公開する米国の雇用統計は、事業所調査ベースと家計調査ベースの2系統の指標がある。事業所調査ベースの指標は非農業部門雇用者数、週平均労働時間、平均時給などがある。約14万社の70万近い事業所からデータを集計して発表している。家計調査ベースの指標は失業率、労働参加率などがある。約6万世帯から聞き取り調査を行っている。調査元が違うことから、雇用の大きな流れはともかく、月々の結果は強弱が分かれることがある。
米中間選挙 米国の大統領の任期は4年、連邦上院議員の任期は6年、同下院議員の任期は2年となっている。偶数年の選挙の日(11月の第1月曜日を含む週の火曜日)に行われる連邦議員及びその他公職選挙のうち、大統領選と重複しない年に行われるものを中間選挙と呼ぶ。上院議員の約1/3議席(今回は欠員の一時的な補充などがあった関係で35議席)、下院議員435議席すべての議席が争われる。

今週の注目指標

米中間選挙
11月08日
☆☆☆
 現在米国は大統領、上下両院多数派を民主党が占めている。しかし、今回の中間選挙では共和党に勢いが見られ、独立系政治サイトRealClearPoliticsによる複数の世論調査を平均値化した情勢をみると、下院は民主党が174議席、共和党が227議席、互角34議席なっており、共和党が過半数218議席を確保する見込み。上院は非改選と合わせて民主党が44議席、共和党が48議席、互角8議席と、若干共和党優勢ながら接戦となっている。大統領と議会多数派が異なる「ねじれ」が生じる可能性がかなり高まっている。これまでのFRBの積極的な利上げを受けて、米景気の停滞が懸念される中、財政面での景気支援が期待されているが、財政規律を重視する共和党が議会の多数派となることで、財政面での積極的な支援への期待が後退する可能性がある。これはドル売りの材料となる。選挙結果が即時に相場に反映するか微妙だが、中期的にドル売り材料となる点に注意したい。1ドル=150円台回復に向けたドル上昇に対する重石となる可能性もある。
米消費者物価指数(CPI)(10月)
11月10日22:30
☆☆☆
 前回9月の米CPIは前年比+8.2%と8月の+8.3%から伸びが鈍化したが、市場予想の+8.1%を上回った。食品とエネルギーを除いたコア部分は前年比+6.6%と8月の+6.3%から伸びが加速し、市場予想の+6.5%も超えた。原油価格が落ち着いたことで、9月はガソリン価格が8月より低下。前年比ベースの伸びでも8月の+25.6%から+18.2%まで鈍化しており、全体の伸びを抑えった。食品価格は前年比+11.2%と依然として高い伸びを続けている。コア部分の項目をみると、サプライチェーン問題が少しずつ落ち着いてきたことで、自動車価格の伸びが鈍化。特に新車は4月分の前年比+13.2%をピークに5カ月連続で伸びが鈍化した。一方、住居費は上昇傾向が続いている。家賃などは契約更改時のみの変更がほとんどで、他の項目に比べて変化が遅れがちのため、今後も上昇が見込まれる。
 こうした状況を踏まえて、今回の市場予想は前年比+7.9%、コア前年比+6.5%。このところ全体の伸びを抑える要因となっているエネルギー価格は、原油価格が10月に入って少し持ち直し、ガソリン小売価格の月平均も9月から上昇していることから、今回はそれほどの減速は期待できない。ただ、食品価格は落ち着きが予想され、全体では9月から若干の伸び率鈍化が予想される。コア部分も小幅ながら前回から伸びが鈍りそうだ。市場予想通り伸び率が縮小すると、12月FOMCでの利上げ幅縮小観測が強まり、1ドル=145円台に向けたドル売りが予想される。
英第3四半期GDP
11月11日16:00
☆☆☆
 英イングランド銀行は3日の金融政策委員会(MPC)で市場予想通り0.75%の利上げを決める一方、声明では今後の利上げ幅縮小の見通しを強く示した。英景気停滞への懸念が広がる中、11日に第3四半期GDPと9月の月次GDPの発表が予定されている。第3四半期GDPは前期比-0.5%とマイナス成長が見込まれている。月次GDPをみると、7月分が前月比+0.1%とぎりぎりプラス圏だったが、8月分は同-0.3%、今週発表される9月分は-0.4%が予想され、景気悪化傾向が著しい。市場予想通りまたはそれ以上のGDPの落ち込みが確認されると、追加利上げ観測が後退し、1ポンド=1.11ドル台に向けてポンドが売られそうだ。

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