2022年11月21日号

(2022年11月14日~2022年11月18日)

先週の為替相場

ドルの方向性定まらず

 先週(11月14-18日)は10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)後のドル安が一服したものの、ドルの買い戻しに勢いが見られず、方向性が定まらなかった。

 先々週後半、米CPI上昇率の市場予想を超える縮小を受けて1ドル=146円台から138円台半ばまで急激にドル安が進んだ。先週の取引を138円台後半でスタートすると、利益確定の買いなどにドルはいったんは上昇し、140円台後半を付けた。

 もっとも、米CPIが弱めに出たことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢が後退するとの見方が広がり、ドルの重石となった。米CPI発表までは次回12月13、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅について、0.5%と0.75%で見方が分かれていたが、0.5%を織り込む形でドルが売られた。CPIが弱く出た後ということもあり、いつも以上に注目を集めていた15日発表の10月の米生産者物価指数(PPI)は前年比+8.0%、食品とエネルギーを除いたコア部分では前年比+6.7%と、こちらも前回値と市場予想値をともに下回った。発表後にドル売りが強まり、ドルは先々週の安値を割り込む137円台を付けた。

 米PPI後のドル売りは続かず、その後は139円台を中心とした比較的狭い値幅での取引が続いた。140円台に乗せるとドル売りが出たが、米セントルイス連銀のブラード総裁(用語説明1)が政策金利を「最低でも5-5.25%に引き上げるべきだ」「十分抑制的な水準は5-7%になる可能性がある」などと、今後も積極的な利上げを続行する姿勢を示したことを受け、140円台に乗せて先週の取引を終えている。

 ユーロは米CPIを受けて1ユーロ=0.99ドル台から1.03ドル台後半まで上昇。さらに米PPIを受けたドル売りに1.04ドル台後半を付けた。対円と同様に米PPI後の対ユーロでのドル売りは続かず、1.03ドル台に下落したところでポーランドにミサイルが着弾し、2人死亡との報道で1.02ドル台までドルが値を戻した。

 ウクライナとは違い、北大西洋条約機構(NATO・用語説明2)加盟国であるポーランドがロシアからミサイル攻撃を受けると、NATO軍とロシア軍の直接的な軍事衝突の可能性が増すため、緊張感が広がった。主要7カ国(G7)が緊急会合を開くなど状況は緊迫したが、ミサイルがウクライナの防空システムによるものである可能性が高いと報じられると、リスク警戒感が後退。その後、1ユーロ=1.03ドル台を中心とした値動きが続いた。

 対ポンドでも対ユーロと同様に米PPI発表後にドル売りが強まり、節目となる1ポンド=1.20ドルを一時超えた。

 ドル主導の動きが続き、ユーロ円やポンド円は方向性がはっきりとせず、1ユーロ=144円台から145円台半ばで推移した。ポーランドにミサイルが着弾した直後のユーロ売り局面で143円台前半を付けたが、すぐに買い戻しされている。

 週末にかけて1ポンド=167円台を付けるなど、対円ではポンド買いがやや優勢だった。16日発表された10月の英消費者物価指数が市場予想を上回り、前年比+11.1%と約41年ぶりの高い伸びを示したことなどがポンド買いの材料となった。

今週の見通し

 上下ともにやや動きにくい展開となっている。次回12月の米FOMCでの0.5%利上げは織り込みが進んでおり、ここからの売買材料とはなりにくい。

 先週、米セントルイス連銀のブラード総裁による発言でドル買いが入ったように、FRB関係者発言などが市場参加者の関心を集めそうだ。

 ブラード総裁は地区連銀総裁の中で、利上げに積極的なタカ派として知られている。それだけに先週の5-5.25%発言について、市場の過度な反応は見られなかった。より中立に近い地区連銀総裁やFRB理事も積極的な利上げを続ける姿勢を示すとドル買いが強まるだろう。

 日本時間24日午前4時にはFOMC議事要旨(11月1、2日開催分)が公表される。12月FOMCでの利上げ幅縮小見通しが強まる中、前回FOMCの議論についてインフレ対応に積極的な姿勢が確認されるとドル買い、今後の景気停滞への警戒感が印象付けられるとドル売りの材料となる。

 1ドル=140円を中心に比較的落ち着いた値動きが見込まれる。ただ、米物価はここにきて市場想定を超えて伸び率が鈍化している。ブラード総裁発言などにも関わらず、米政策金利が5%に届かずに利上げ局面を終えるとの見通しが広がると、ドルは対円で先週の安値をトライする場面がありそうだ。

用語の解説

ブラード総裁 ジェームズ・ブラード(James Bullard)は、米セントルイス連銀の第12代総裁。米インディアナ大学で経済学の博士号を取得後、エコノミストとしてセントルイス連銀に入行。2008年4月から同行総裁を務め、現在の地区連銀総裁で最も総裁キャリアが長い。利上げなど金融引き締めに積極的なタカ派として知られている。
北大西洋条約機構 北大西洋条約機構(NATO : North Atlantic Treaty Organization)は、「集団防衛」「危機管理」及び「協調的安全保障」を中核的任務とし、加盟国の領土と国民の防衛を最大の責務とする集団防衛組織。1949年に12カ国で設立し、現在は30カ国が加盟。本部はブリュッセル(ベルギー)。

今週の注目指標

NZ準備銀行(中央銀行)政策金利
11月23日10:00
☆☆☆
 NZ準備銀行(中央銀行)は昨年10月、利上げに踏み切った。4月会合で予想外に利上げ幅を0.5%に広げ、その後は5会合連続で0.5%利上げを決めた。しかし、こうした利上げ姿勢にも関わらず、10月発表されたNZ第3四半期消費者物価指数は前年比7.2%と、第2四半期の同7.3%に続く高水準だった。今月8日公表の中銀四半期調査で示された2年後のインフレ予想も1991年以来の高水準となる3.62%まで上昇しており、NZ中銀はさらなる対応を迫られている。こうした状況から今回は0.75%の利上げが見込まれている。しかし、各国が利上げ幅縮小に向けた動きを強める中で、利上げ幅を拡大するとNZドルの買い材料となる可能性がある。1NZドル=87円を目指す可能性がある。
ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)(11月)
11月23日18:00
☆☆
 ユーロ圏及び加盟主要国の購買担当者景気指数(PMI)が23日に発表される。サービス業のPMIはユーロ圏全体、フランス、ドイツがいずれも前回から悪化する見込み。製造業のPMIはユーロ圏全体とフランスで悪化し、前回が他より弱い45.1だったドイツは45.2とわずかな改善が見込まれるが、好悪判断の境となる50は大きく下回る公算が大きく、総じて欧州の景況感の弱さを確認する内容となりそうだ。ユーロにはマイナス材料で、市場予想通りか予想より弱い結果だと、1ユーロ=1.01ドル台を目指してユーロが売られる可能性がある。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
11月24日04:00
☆☆☆
 今月1、2日に開催されたFOMCの議事要旨が公表される。12月FOMCでは0.5%に利上げ幅が縮小されるとの見通しが広がっている。今年3月に利上げに踏み切ったFRBは、5月の0.5%利上げを経て、6月から4会合連続での0.75%利上げを実施した。12月FOMCについては、今月10日に10月の米CPIが発表されるまでは0.5%と0.75%で市場予想が分かれていた。10月の米CPIが市場予想を下回る前年比+7.7%と弱く出たため、12月は0.5%利上げ見通しが強まっている。ただ、下がったとはいえ前年比7.7%は物価上昇率の絶対水準としては高い。また12月のFOMCまでには11月の米雇用統計や同CPIなど重要指標の発表を控えており、単月の数字が下がったからと言って、次回の利上げ幅が確実に縮まるものでもない。来年上半期に迎えるとみられる利上げの終着点(ターミナルレート)の見通しも分かれている中で、今後の米FRBの姿勢を確認するためにも、FOMC議事要旨が注目される。FOMC結果発表時の声明文は、物価を目標水準に戻すための利上げペースの決定にあたって、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れについて触れ、市場はこれを利上げ幅縮小に向けたハト派的な姿勢と捉えた。しかし、その後にパウエルFRB議長は記者会見で、FF金利(政策金利)は9月に示した到達点より高い水準に達する可能性に言及。利上げ停止の議論はかなり時期尚早だと発言しており、こちらは一転してタカ派的な印象を与えた。このように今後について強気と弱気が混在する状況がどのような議論の下で生じたかが注目材料となる。物価高への対応を強調し、引き締め姿勢が色濃ければ、1ドル=143円台に向けたドル高が見込まれる。

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