2022年11月28日号

(2022年11月21日~2022年11月25日)

先週の為替相場

一時138円00銭台までドル安円高

 先週(11月21-25日)初めにドル高が進んだ後、ドル安に転じ、1ドル=142円台前半から138円00銭台を付けた。

 米セントルイス連銀のブラード総裁が17日、政策金利を「最低でも5-5.25%に引き上げるべきだ」「十分抑制的な水準は5-7%になる可能性がある」などと発言し、ドル高となった流れが先週初めまで継続。140円20銭台で21日の取引が始まると、同日の海外市場で142円25銭まで2円以上のドル高円安となった。

 中国で新型コロナウイルス感染が広がり、1日の新規感染者数が過去最多を更新。首都北京で約半年ぶりに新型コロナによる死者が確認されたことなどを嫌気したドル買い人民元売りもドル全面高基調に寄与した。

 24日は感謝祭(サンクスギビング)で米国が休場。25日の米国市場は開いているものの、株式や債券が短縮取引となることもあって、週後半は米国からの取引参加者の大幅な減少が見込まれた。そのため、一方向の動きには警戒感が強く、ドルは対円での高値から少し調整が入り、141円台を中心に推移した。

 その後、23日に発表された11月の米購買担当者景気指数(PMI・用語説明1)が製造業、非製造業ともに前回値や市場予想を大幅に下回り、ドル売りが急速に強まった。製造業は2.8ポイント悪化し、好悪判断の境となる50も割り込んだ。非製造業は前回まで50割れが続き、今回は改善が見込まれていたが、予想外に1.7ポイント悪化した。速報性の高い指標だけに、直近の米経済の厳しい状況を示すものだとの認識が広がり、ドルが売られた。

 米国東部時間23日午後に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(11月1、2日開催分)で、多くの委員が利上げペースの早期減速を支持していたことが判明すると、ドル売りがさらに強まった。

 ドル売りの流れは24日まで続き、1ドル=138円00銭台を付けた。その後はいったん調整が入り、25日の海外市場で139円60銭台までドルが反発。139円台前半で先週の取引を終えている。

 ユーロやポンドに対しても対円と同様に先週初めのドル高からドル安になった。1ユーロ=1.0220ドル前後まで下落した後、1.0450ドル前後のユーロ高ドル安に転じた。1ポンド=1.1780ドル前後までポンド安ドル高となった後、1.2150ドル前後のポンド高ドル安。

 ドル主導の展開の一方、ユーロやポンドなどの対円レートは不安定だった。先週後半までユーロは対円で買いの勢いが強く、1ユーロ=146円台まで上昇。その後、ドル安円高が進むと143円台後半に下落した。一方、1ポンド=169円台までポンドが上昇した後、167円20銭前後に軟化している。

 NZ準備銀行(中央銀行)が23日、市場予想通り0.75%の利上げを実施した。声明と議事要旨で追加利上げの必要性に言及したほか、今回の会合で1.00%利上げも検討したことを明らかにするなど、積極的な金融引き締め姿勢が確認され、NZドルが買われた。

今週の見通し

 中国で新型コロナ感染が再拡大している。中国経済の停滞懸念が強まるだけでなく、先週末の北京や上海での大規模デモを受けて政治リスクも警戒されている。

 こうした流れは、中国人民元や香港ドルだけでなく、豪ドルや南アランドなど対中輸出の多い資源国の通貨の売り材料でもある。リスク回避の円買いも加わり、ドルや他通貨の対円での売り材料となりそうだ。

 先週のドル安円高局面でドルの下値を支えた1ドル=138円手前の買いを崩しに行く可能性がある。

 ただ、今週は12月1日に米ISM製造業景気指数、2日に米雇用統計の発表が控えている。また、3日からブラックアウト期間(用語説明2)に入ることもあり、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者の発言予定が多い。中でも11月30日に予定されるパウエルFRB議長の講演が注目されている。経済指標の発表やイベントの予定が週半ばから後半にかけて並んでいるため、週前半は動きが出にくく、1ドル=138円台を中心とした取引が続きそうだ。

用語の解説

米購買担当者景気指数 購買担当者景気指数(PMI : Purchasing Manager’s Index)は、企業の購買担当者に対するアンケート調査を基にした景況感を示す指数。米ISM(供給管理協会)景気指数や米シカゴ購買部協会景気指数もPMIであるが、単にPMIや購買担当者景気指数と表記してある場合は、米調査会社IHSマークイットによるPMIを指すことが多い。
ブラックアウト期間 中央銀行の金融政策会合メンバーが会合前後で金融政策に関する発言を禁じられることをブラックアウトルールと呼び、その適用期間をブラックアウト期間と呼ぶ。日本では、日銀金融政策決定会合開始の2営業日前から会合後の総裁会見終了までが適用期間となる。米FRBはFOMC開催の前々週土曜日からFOMC終了時までと、主要国中銀で最も長い。

今週の注目指標

パウエル議長 討論会参加
12月1日03:30
☆☆☆
 ワシントンに本部のある米大手シンクタンクのブルッキングス研究所が主催する経済イベントで、パウエルFRB議長が経済と労働市場に関する討論会に参加する。次回FOMC(12月13、14日)前に議長が金融政策について発言する最後の機会とみられる。次回FOMCで予想される利上げ幅は0.5%が大勢だが、0.75%予想も少なくない。議長が利上げ幅を縮小する見通しを明確に示すと0.5%予想の織り込みがさらに進み、1ドル=137円台のドル安円高を試す可能性がある。
米ISM製造業景気指数(11月)
12月02日00:00
☆☆
 前哨戦となる米製造業購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を下回り、かなり低調だったため、ISM製造業景気指数も下振れが懸念されている。前回10月のISM製造業景気指数は50.2と、9月の50.9から低下したものの、好悪判断の境となる50.0を上回った。市場が重視する新規受注、生産、雇用といった調査項目が軒並み改善したため、全体の数字は弱かったが、米景気に対する市場の見方はそれほど悪化しなかった印象がある。今回は49.8と前回から悪化するだけでなく、節目の50も割り込むと予想される。前回50を回復した雇用など含め、内訳も弱めの印象を与えるとドルが急速に売られ、1ユーロ=1.04ドル台を回復するような動きとなりそうだ。
米雇用統計(11月)
12月2日22:30
☆☆☆
 前回10月の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+26.1万人と、市場予想の+20.5万人を超えた。9月分が前月比+26.3万人から+31.5万人に上方修正された上で市場予想を超え、力強さを見せている。半面、失業率は3.7%と9月分や市場予想の3.5%から悪化した。労働参加率が0.1%低下した上での失業率上昇(一般的に労働参加率が上昇すると失業率が悪化、低下すると改善しやすい)と、厳しい結果だった。NFPは事業所調査ベース、失業率は家計調査ベースと元となるデータが異なり、家計調査ベースの就業者数は前月比-32.8万人と9月から減少している。市場はNFPの結果を見て、発表直後にドル買いとなったが、その後ドル売りに転じた。NFPと失業率を比べると、NFPの変化の方が相場に大きな影響を与えるケースが多い。しかし、現在は12月FOMCの利上げ幅が0.5%に縮小されるか、0.75%で維持されるかで、市場の見方が分かれている。FRBの経済見通しで雇用関連の数字として採用されている失業率の悪化の方が市場の反応を呼びやすかったとみられる。 
今回の市場予想はNFPが前月比+20万人。失業率が10月と同じ3.7%。前回のNFPの内訳をみると、アフターコロナで雇用が大きく伸びていた時期に全体を支えた飲食業、小売業、運輸倉庫業などで雇用者数の増加がいずれも1万人以下と、小幅にとどまっている。すでにコロナ前水準を上回っていることもあり、アフターコロナという観点からの雇用増の影響は薄れていると考えられる。コロナ流行前に20万人は好結果の目途となっていただけに、それほど弱いものではない。失業率も前回0.2ポイント悪化したとはいえ、歴史的にみると相当な低水準である。そのため、予想前後の数字が出てくると米国の雇用市場は堅調という印象を与えるだろう。12月FOMCの利上げ幅は0.5%予想が大勢の状況は変わらず、0.75%利上げ予想も残りそうだ。ただ、前回同様に失業率が悪化した場合やNFPの伸びが予想よりも急速に鈍化した場合、0.5%利上げ予想が一気に強まり、1ドル=135円割れを意識した大幅なドル安となる可能性がある。

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