2022年12月05日号

(2022年11月28日~2022年12月02日)

先週の為替相場

ドル売りが強まる

 先週(11月28日-12月2日)週半ば以降、ドル安円高が進んだ。

 先週前半は中国の新型コロナウイルス再燃や行動規制への抗議デモなどからリスク回避の動きが強まった。1ドル=139円台半ばで週取引をスタートすると、28日の海外市場で137円50銭近くまでドル安円高が進行した。

 その後はリスク回避のドル買いが優勢となり、ドルは対円での安値から買い戻され、30日には139円90銭台と節目の140円に迫った。

 30日午後の米国市場でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による米ブルッキングス研究所(用語説明1)での講演内容が報じられ「利上げペースを落とす時期は早ければ12月の会合になる可能性がある」と、次回(12月13、14日)の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%利上げが示唆された。米FOMCは過去4会合連続で0.75%利上げを決定したが、議長は「インフレ抑制に向けてどの程度政策金利を引き上げる必要があるのか、また政策金利をいつまで景気抑制的な水準で維持するべきなのかなどの問題に比べて、ペースを落とすタイミングの重要性はかなり低い」と、0.75%利上げペースの維持にこだわらない姿勢を表明した。

 この発言を受けて、同日のNY市場夕方に1ドル=137円60銭台までドルが下落。その後もドル安基調が続き、12月1日発表された11月の米ISM製造業景気指数が低調だったこともあり、2日に133円60銭台までドルが売られた。

 NY市場2日朝発表された11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者の前月比増加幅が市場予想の20万人増を大きく上回る26.3万人だった。また平均時間当たり賃金も前月比+0.6%と市場予想の+0.3%を上回った。

 この結果を受けて、来年迎えると見られるターミナルレート(利上げの終着点となる水準)が5%を超えるとの見方が強まり、一時1ドル=136円00銭近くまでドルが上昇した。しかし、週末を前にドル買いポジションの整理が広がり、NY市場午後に134円台前半を付けて先週の取引を終えている。

 ユーロは週初のドル高円高局面で、先々週末の1ユーロ=1.0400ドル前後から1.0340ドル台、1ユーロ=144円台後半から143円00銭近くをそれぞれ付けた。

 オランダ銀行(中央銀行)のクノット総裁(用語説明2)やスロバキア国立銀行(中央銀行)のカジミール総裁が相次いでユーロ圏の物価高長期化に懸念を示すと、次回(12月15日)の欧州中央銀行(ECB)理事会での大幅利上げ観測が強まり28日のロンドン市場でユーロが反発。1ユーロ=1.05ドル手前、1ユーロ=145円00銭前後までユーロがそれぞれ上昇した。

 このユーロ高は続かず、すぐにドル高・円高基調に戻った。ユーロは同日夕方のNY市場で上昇分をすべて解消して、1ユーロ=1.0320ドル台を付けた。30日に1ドル=140円近くまでドル買いが強まった局面で、1ユーロ=1.03ドルを割り込んだ。

 30日のパウエルFRB議長発言以降、流れがユーロ高へ一転し、2日の米雇用統計発表を前に1.0540ドル台を付けた。29日に中国の衛生当局が高齢者向けワクチン接種の強化を発表。30日には中国広州市の一部地域で都市封鎖措置の解除が発表されており、規制緩和期待の広りもユーロ高に寄与した。

 もっとも対円でのドル安の勢いが勝っており、議長発言前の1ユーロ=144円台後半から140円台後半のユーロ安円高に振れた。

 米雇用統計発表後のドル買いで1ユーロ=1.0420ドル台にユーロが下落した後、すぐに反発して1.0540ドル台を回復した。対円ではドル主導の展開の中で、不安定な動きを見せた後、対ドルでのユーロ買いを受けて142円台にユーロが上昇している。

 ポンドもユーロと同様にパウエル議長発言まではポンド安ドル高が優勢となり、1ポンド=1.1900ドル近くを付けた。1ポンド=165円50銭近くまでポンドが売られた後、議長発言までに対ドルでポンド高が強まったことで167円台を付けた。議長発言後ポンドは1ユーロ=1.23ドル台と対ドルで上昇したが、対円では円高の勢いが勝り1ポンド=164円00銭近辺を付けている。

今週の見通し

 直近4会合連続で0.75%利上げを実施している米FOMCであるが、今回は0.5%利上げへ利上げ幅を縮小するとの見通しが大勢となっている。先月発表された10月の米消費者物価指数が予想以上の鈍化を示したことや、先週パウエルFRB議長が利上げペース減速の可能性に言及したことなど、0.5%利上げに向けた材料が目立っているものの、0.75%利上げを継続するとの見通しが少数派ながら根強く残っており、見通しが分かれている状態。

 2日に発表された11月の米雇用統計の好結果も、大幅利上げに耐え得るほど米国の雇用情勢は堅調との思惑につながっており、0.75%利上げ見通しが残る要因となっている。

 今週も先週同様に、来週13、14日の米FOMCをにらんだ展開が続く。ただ、今月3日からFOMCを前にFRB関係者が金融政策に関連する発言を自粛するブラックアウト期間に入っている。米消費者物価指数と並んでFOMCの利上げ判断に大きく影響する雇用統計の発表が済んだこともあり、やや材料不足感がある。

 5日発表の米ISM非製造業景気指数や9日発表の米生産者物価指数(PPI)や米株式・債券市場などをにらみながら、来週のFOMC待ちの流れが予想される。中国の新型コロナ規制緩和への期待からのドル売り人民元買いもあるためドルは全般に頭が重そうだが、値幅は抑えられるだろう。

用語の解説

ブルッキングス研究所 ワシントンD.C.に本部のある米国のシンクタンク。1916年設立された。2022年ノーベル経済学賞を受賞したバーナンキ元FRB議長は14年の議長退任後、同研究所の特別研究員となった。
クノット総裁 クラス・クノット(Klaas Knot)オランダ銀行(中央銀行)総裁。グローニンゲン大学を出て、オランダ銀行に入り。国際通貨基金(IMF)などへの出向を経て、09年よりオランダ財務省に転じ、金融市場局長を務めた後、11年7月1日にオランダ銀行総裁に就いた。欧州中央銀行(ECB)で金融政策決定に携わる定例理事会メンバーのうち利上げに積極的なタカ派の代表格として知られている。

今週の注目指標

ISM非製造業景気指数(11月)
12月6日0:00
☆☆☆
 先行指標となる11月の米非製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は46.1と、10月の47.8から48.0への小幅改善予想を覆して大幅に落ち込んだ。12月1日発表された11月の米ISM製造業景気指数も市場予想を下回り、20年5月以来の50割れ。ISM製造業の内訳は新規受注や雇用など重要項目の落ち込みが目立つ厳しい結果だった。一方、米国の年末商戦は11月24日のスタートから5日間の買い物客数が前年を上回るなど明るい材料も見られる。ISM非製造業の市場予想は53.3と、前回の54.4から若干の低下が予想されているが、節目の50を上回るなど、まずまずの水準。市場予想前後の数字なら0.75%利上げ予想が補強され、ドル買いにつながる可能性がある。1ユーロ1.04ドル台に向けたユーロ安ドル高が予想される。
カナダ銀行政策金利
12月08日00:00
☆☆☆
 カナダ銀行(中央銀行)が7日(日本時間8日午前0時)、金融政策会合の結果を発表する。米国同様に今年3月に利上げを開始したカナダ中銀は、7月に市場予想を超える1.0%の利上げを敢行した。9月会合では0.75%利上げを実施。10月会合では大方の市場参加者が予想した0.75%ではなく0.5%に利上げ幅を縮小した。10月の消費者物価指数が前年比6.9%と物価高騰が続く中、12月会合で0.25%へ利上げ幅を一段と縮小するのか、0.5%利上げを続けるのか、市場の見方はほぼ拮抗している。見方が分かれている分、決定後はカナダドルを動かす大きな材料になるだろう。0.5%利上げであれば1ドル=1.30カナダを意識するドル安カナダ高となる可能性がある。
米生産者物価指数(PPI・11月)
12月9日22:30
☆☆☆
 米FOMCを前に米国の物価動向が市場の関心を集めている。最も注目度が高いのは、13日に発表される米消費者物価指数(CPI)だが、先行指標としてPPIも注目されている。前回10月のPPIは前年比、食品とエネルギーを除いた「コア前年比」ともに前回値や市場予想値を大きく下回った。前回はPPIの発表がCPIよりも遅く、すでにドル売りが進んでいたため、市場の反応はそれほど大きなものにならなかった。しかし、今回はPPIがCPIより先に発表されるため、前回のように低調だとドル売りが強まる可能性がある。市場予想は前年比+7.2%、コア前年比+5.9%と前回の+8.0%、+6.7%から大きく鈍化する見込み。予想を超える伸び率低下を見せると、ドル売りが加速し、1ドル=133円台に向けたドル安円高が見込まれる。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。