2022年12月12日号

(2022年12月05日~2022年12月09日)

先週の為替相場

ドル安が一服

 先週(12月5-9日)は、先々週後半に進んだドル安円高が一服し、ドルの反発が見られた。

 先々週末2日発表の米雇用統計や週明け5日発表の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景気指数の強い結果がドル買いにつながった。2日の米雇用統計前に1ドル=133円60銭台までドル安円高が進んだ。米雇用統計後にいったんドル買いが強まったものの、週明け134円10銭台を付けた。

 先々週後半140円近くから133円台までと6円強のドル安円高に動いたことで、流石に円買いに過熱感があり、週明けは133円トライに慎重な雰囲気が広がった。ドルの下げ止まり感が出たところに、NY市場5日朝の米ISM非製造業景気指数(11月)が予想外に前回値を超える伸びを示したことを好感してドル買いが入り、ドルは対円で大幅に反発した。

 米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが想定以上に長期化するとの思惑がひろがり、先週半ばに137円80銭台までドル高円安が進んだ。

 週明け5日の1ユーロ=1.0590ドル台から1.0450ドル割れまでユーロ安ドル高となるなど、ドルはほぼ全面高となった。

 日銀の中村豊明審議委員が7日に講演し、当面の政策の微調整や変更の必要性を否定し、金融緩和の継続を強調したことも円安につながった。

 その後、7日に公表された欧州中央銀行(ECB)調査で、消費者の今後12カ月間のインフレ期待の高まりが確認されたことや、同日のユーロ圏GDP確報値が予想外に上方修正されたことを受けて、ユーロが対ドルで反発。ドル高全般の調整につながる形でドル安円高となった。利上げ幅縮小予想が大勢となっている米連邦公開市場委員会(FOMC)を13、14日に控えてポジション調整のドル売りも加わり、9日にかけて135円60銭近くまで円高ドル安が進み、1.0590ドル台までユーロ高ドル安となった。

 9日には11月の米生産者物価指数(PPI)が発表された。前年比と食品とエネルギーを除いたコア前年比はともに市場予想ほど伸びが鈍化せず、前回値がともに上方修正される強い結果となった。同日発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(12月)が市場予想を超えたこともあり、1ドル=136円台後半までドルが反発し、1ユーロ=1.0500ドル台を付けるなどドル高が強まる形で先週の取引を終えている。

今週の見通し

 FOMCの注目点は今回の利上げ幅と来年迎えるとみられるターミナルレート(政策金利の最終到達水準)の見通し。

 11月発表された10月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想ほど伸びなかったことや、先月30日のパウエルFRB議長講演で、今回のFOMCでの利上げ幅縮小の可能性が示唆されたことを受け、利上げ予想の大勢は0.5%。もっとも、短期金利先物が織り込む利上げ割合を示す「CME FedWatch」では、一時85%を超えていた0.5%利上げ予想が75%を割り込み、25%超が0.75%利上げを見込んでいる。9日の米PPIの伸びが予想ほど鈍化せず、大幅利上げ継続観測につながった。13日発表予定の11月の米CPIも同様に強く出た場合、FOMC直前に0.75%利上げ予想がもう一段強まる形でドル買いとなる可能性がある。

 利上げ幅が大方の予想通り0.5%となった場合、今後の利上げの道筋を予想するうえで声明、FOMCメンバーによる経済見通し(SEP)(用語説明1)、FRB議長会見が市場参加者の関心を集めるだろう。

 前回FOMC(11月1、2日)の声明に政策決定から浸透までの時間差を考慮する旨の文言が加わった。12月FOMCでの利上げ幅縮小の示唆とみられた同文言は、今回も継続が予想される。来年のFOMCでは0.25%への利上げ幅縮小の予想が大勢となっており、声明でも利上げ幅縮小に向けた姿勢が確認されそうだ。

 年4回示されるSEPはFOMCメンバーによる年末時点の政策金利見通しの分布を表すドットプロットが最も注目される。前回9月のドットプロットで示された2023年末時点での政策金利見通しは4.50-4.75%が中央値だった。パウエルFRB議長はFOMC終了直後の11月2日の記者会見で政策金利が9月FOMCで示された到達点より高水準に達する可能性に言及。11月30日の講演でも同様の主張をしており、予想中央値が上方修正されそうだ。ただ、到達点であるターミナルレートついては4.75-5.00%と5.00-5.25%で見通しが分かれている。今回のドットプロットで5.00-5.25%見通しが中央値になると、今回のFOMCでの利上げ幅が0.5%にとどまったとしても、ドル買いが強まる可能性がある。

 FOMCの結果・声明・SEPなどの公表から30分後にFRB議長が記者会見する。今回のSEPや前回の会見ではかなり時期尚早だとされた利上げ打ち止めについての言及が注目される。早ければ来年3月会合で利上げ打ち止めが予想され、その見通しに沿った場合、かなり時期尚早だとの表現には違和感が生じる。今回も同様の表現が残った場合、利上げの打ち止めが5月以降になるとの思惑が広がり、こちらもドル買い材料となる。

 FOMCの結果次第だが、今後の積極利上げ姿勢が印象付けられると140円を目指すドル高が見込まれる。利上げ幅縮小を粛々と続け、来年第1四半期にターミナルレートに到達する見通しが強まると135円割れのドル安を試す可能性があるなど、上下ともに大きな値動きが予想される。

 欧州中央銀行(ECB)と英イングランド銀行(中央銀行)も政策金利の発表予定がある。ともに利上げ幅の見通しが割れており、結果次第で大きな値動きが予想される。特に英中銀の金融政策委員会(MPC)(用語説明2)に関しては前代未聞の4通りの投票となる可能性がある。大勢の見方は0.5%利上げだが、据え置き2人、0.5%利上げ5人、0.75%利上げ2人の採決が予想され、据え置きまたは0.5%見通しのうちの1人が0.25%に投票して4通りとなる可能性がある。米国以上に深刻な景気後退懸念と生活費高騰の中で、英中銀は難しい選択を迫られている。

用語の解説

SEP Summary of Economic Projectionsの略。年8回開催されるFOMCのうち、3、6、9、12月の4会合で結果発表と同時に示されるFOMCメンバーによる経済見通しのこと。FRB理事と投票権なしを含めた全地区連銀総裁による経済成長率、失業率、物価(PCEとコアPCEデフレータ)、政策金利見通しが示される。各メンバーの政策金利見通しをドットで示したドットプロットは今後の金融政策運営を予想する上での重要な材料となる。
英中銀金融政策委員会(MPC) 英中銀金融政策委員会(MPC : Monetary Policy Committee)は、英中銀の金融政策を決定する会合。正副総裁を含む内部委員5人と外部委員4人の9人で構成する。議長提案が否決されたことのない米FOMCなどと違い、総裁であっても少数派に回り、意見が通らないことがある。年8回の会合のうち、2、5、8、11月の4会合で金融政策報告が同時に発表される。また、会合後の総裁会見は基本的に金融政策報告の発表される4会合だけで実施する。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI/11月)
12月13日22:30
☆☆☆
 前回10月の米CPIは前年同月比+7.7%と、9月の+8.2%から伸びが鈍化し、市場予想の7.9%も下回った。食品とエネルギーを除いたコア指数も同+6.3%と9月の+6.6%から減速し、市場予想の6.5%を下回った。物価上昇ペースの減速が12月の米FOMCでの利上げ幅縮小見通しにつながり、ドル売りとなった。今回は11月の米PPIが先に発表されており、前年同月比+7.4%と市場予想の+7.2%を上回った。コア指数も同+6.2%と市場予想の+5.9%を上回った。また、ともに10月の前回値が上方修正されており、かなり強い結果という印象を受けた。米CPIの今回の予想は前年同月比+7.3%、コア指数は同+6.1%と10月から伸び率が縮小する見込み。米PPI同様に伸びが鈍化しても、市場予想ほど鈍化しなければ、FOMCでの0.75%利上げ予想が強まってドル買いとなる可能性があり、1ドル=138円台乗せなどが見込まれる。
米FOMC
12月15日04:00
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が日本時間15日午前4時に発表され、同午前4時半にパウエル米FRB議長が記者会見を始める。FRBは2020年に新型コロナ対応で、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標を実質ゼロ金利となる0.00-0.25%とした。今年3月に利上げを開始し、5月の0.50%利上げを経て、6月以降4会合連続で0.75%利上げを実施してきた。
 年4回公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)において、最新9月時点での見通しとして年内あと1.25%の利上げ見通しが示され、12月の0.5%利上げが示唆された。しかし、9月の米CPIが強く出たことなどから、0.75%利上げの維持が大勢となる場面があった。10月後半ぐらいからは0.5%利上げと0.75%利上げで見通しが拮抗する時期が続いたが、10月の米CPI上昇率が市場予想に届かなかったこともあり、その後は0.5%利上げが本命視されている。前回11月のFOMC声明で、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れを考慮する文言が加わったことも、0.5%利上げ見通しを支えている。もっとも、今月2日発表の米雇用統計が堅調で、大幅利上げを継続するだけの余裕が米経済にあるとの見方が広がったことや、9日発表された11月の米PPIが市場予想ほど減速せず、インフレ長期化への警戒感が増したことなどから、0.75%利上げ見通しが強まる展開となっている。大勢は依然として0.5%利上げ見通しだが、0.75%見通しが無視できない程度に残っており、どちらに決まった場合でも、相場に影響が出そうな状況だ。
 また、ここにきて市場のターミナルレートに関する見通しが分かれている。先月半ばころまでは4.75-5.00%で利上げ打ち止めとの観測が広がっていたが、その後は5.00-5.25%予想が強まり、見通しはほぼ拮抗している。今回の声明や参加メンバーによる経済見通し、パウエル議長の会見内容によって、この見通しがどちらかに大きく振れると相場も大きな影響を受けそうだ。ターミナルレートの5%超え観測が広がれば、140円を目指してドルが買われそうだ。
ECB政策金利
12月15日22:15
☆☆☆
 15日はスイス、ノルウェー、英国の各中央銀行やECBなどが政策金利を発表する。スイスとノルウェーは各0.5%利上げが予想される。英国は0.5%利上げ予想が大勢だが、投票は据え置きから0.75%利上げまで大きく分かれそうだ。ECBも大勢は0.5%利上げ予想だが、ごく一部で0.75%利上げ継続も予想されている。大方の予想通り0.5%へ利上げ幅が縮小した場合、ラガルド総裁の記者会見に市場参加者の関心が移る。市場では来年2月2日の理事会で0.5%利上げを決定し、利上げ打ち止めとするとの見方が広がっている。ただ、米国などと比べて欧州は景気停滞が強く懸念され、総裁がより消極的な姿勢を示すことで来年2月の利上げが0.25%に縮小するとの見方が強まる可能性がある。この場合はユーロ売りが広がるだろう。今回の理事会でECBが保有する国債残高の削減、いわゆるQT(量的引き締め)の計画概要が公表される予定。早期のQTを受けてユーロ圏の景気停滞観測が広がると1ユーロ=1.03台に向けてユーロが売られる可能性がある。

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