2022年12月19日号

(2022年12月12日~2022年12月16日)

先週の為替相場

主要中央銀行が相次いで利上げ

 先週(12月12-16日)は、米、英、ユーロ圏、スイスなど主要な中央銀行が金融政策会合を開き、いずれも0.5%の利上げを発表した。

 9日発表の米生産者物価指数(PPI)の上昇率が市場予想を上回ると、13、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%利上げ予想がやや強まった。短期金利先物が織り込む利上げ幅は先週初めに0.5%が4分の3と大勢を占めたが、0.75%が4分の1と無視できない程度の比率があり、波乱含みの相場が予想された。

 しかし、13日発表の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回ったことで、0.5%利上げ見通しが強まり、FOMCの結果発表直前に0.5%利上げをほぼ織り込む形となった。

 9日の米PPIなどを受けて1ドル=135円台半ばから、13日の米CPI発表前に137円台後半までドル高が進んでいたが、米CPI後は134円台までドルが急速に下落。その後もドル安円高圏で推移が続き、134円台後半でFOMCの結果発表を迎えた。

 FOMCは市場予想通り0.5%利上げを決めた。FOMCメンバーによる政策金利見通しを示すドットプロットでは2023年末の中央値が5.00-5.25%だった。市場が想定していた4.75-5.00%を予想したメンバーは19人中2人にとどまり、10人が5.00-5.25%を、7人が5.25%以上を予想するなど、市場に比べてFOMCメンバーの「タカ派」色が濃かった。

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、2023年中の利下げに否定的な見方を示し、2023年末の政策金利見通しがターミナルレート(政策金利の最終的な到達水準)となるとした。週末にかけてドル買いポジションの調整が進み、136円台後半で先週の取引を終えた。

 ECBは市場予想通り0.5%利上げを決定。これを踏まえ、ラガルドECB総裁は記者会見で、0.5%の利上げを当面続ける可能性を示した。ユーロ圏は米国以上に景気後退が強く懸念され、市場はラガルド氏が利上げ継続にやや慎重な姿勢を示すと予想していた。ラガルド総裁会見を受けて1ユーロ=1.0620ドル前後から1.0730ドル台までユーロ高が進んだが、ドル高の流れもあってすぐに発表前の水準に戻すなど、値動きは不安定だった。

 英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会の投票結果は0.75%利上げが1人、0.5%利上げが6人、据え置きが2人だった。0.75%利上げが2人以上との見方が広がっていたが、タカ派で知られるハスケル委員(用語説明1)が0.5%利上げに回り、0.75%が1人にとどまったことなどから、ハト派色がやや強いとの印象が広がり、発表後はポンドが売られた。

今週の見通し

 年内最後の大型イベントだった米FOMCが終了。クリスマスシーズンに入って市場参加者が極端に減り、相場は様子見ムードが広がるだろう。

 米FOMCはターミナルレートの見通しが上方修正されるなどタカ派姿勢が見られたが、ドル買いは続かなかった。日銀の金融緩和姿勢が後退するとの観測もあり、ドルは対円での上値トライに慎重な姿勢がうかがえる。もっともドルを売り込む材料も乏しく、年末にかけて135-138円のレンジ取引が続くと予想する。

 米国のターミナルレート見通しの上方修正を受けて、利上げ終了時期が後ずれする可能性が強まったことは、中長期的に強力なドル買い材料となる。一方、海外勢を中心に日銀の金融緩和姿勢の後退が予想されている。2%の物価目標を共有する政府と日銀の共同声明(用語説明2)を、岸田政権が見直す方針を固めたと先週一部で報じられ、円買いとなる場面があった。松野官房長官は同報道を否定したが、海外勢を中心に政策修正観測がくすぶっている。次期日銀総裁の下、金融緩和姿勢が後退するとの見方も広がっており、こちらは中長期的な円買い材料として意識されている。

クリスマスシーズン明け、ドル買いと円買いのどちらの材料が相場を主導するのか。

クリスマスシーズンは落ち着いた動きになるケースが多い。しかし、次の方向性が見えにくく、市場がやや神経質になる中で、要人発言などを手がかりとする売り買いで値動きが荒くなる可能性がある点には注意が必要だ。

用語の解説

ハスケル委員 ジョナサン・ハスケル(Jonathan Haskel)委員。英国の名門大学インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)にあるインペリアル・カレッジ・ビジネス・スクール(ICBS)教授。2018年9月より英中銀金融政策会合の外部委員を務めている。今年に入って4会合で実際の決定よりも高い政策金利水準を主張するなどタカ派として知られている。
共同声明 2013年1月に当時の安倍政権と白川総裁時代の日本銀行が発表した声明。早期のデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて政府と日銀の政策連携を強化することを表明し、物価安定の目標を消費者物価指数前年比上昇率で2%と明記し、出来るだけ早期に実現することを目指すとしている。同声明は公表以来改定されたことはない。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
12月20日
☆☆☆
 19、20日に年内最後の日銀金融政策決定会合が開催される。金融政策は現状維持が見込まれている。円安やエネルギー価格の上昇などを受けて、原材料・コスト高を背景とした値上げが相次いでおり、先月発表された10月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食料品を除くコアで前年比+3.6%まで上昇。23日に発表される11月のCPIは+3.7%とさらに上昇が見込まれる。12月のCPIは4%台に乗る可能性が指摘されている。また、12月の日銀短観で、大企業非製造業の業況判断DIがコロナ前2019年12月以来の高水準である+19まで上昇。来年の春闘での大幅な賃上げ見通しが強まる中、海外勢を中心に日銀の金融緩和政策が後退するとの見方が広がっている。
 今回の会合では緩和政策の維持が見込まれる。可能性はそれほど高くないと思われるが、声明や記者会見で緩和後退の兆候が少しでもうかがえると、1ドル=134円台に向けて円買いが強まりそうだ。
トルコ中銀政策金利
12月22日20:00
 トルコ中央銀行は8月から前回11月まで4会合連続で利下げを実施し、14%だった政策金利を9%に引き下げた。前回会合時の声明で緩和サイクル停止の方針を示しており、今回は7月会合以来となる金利据え置きが見込まれている。物価高が進むトルコでは、10月分の消費者物価指数が前年比+85.51%と24年ぶりの水準まで上昇したが、12月5日に発表された11月分は同+84.39%とわずかに鈍化している。経済成長の減速と比較の基準となる前年同月値の上昇によって、12月分からはインフレ率が低下するとの期待もあり、当面は据え置きが見込まれる。会合後の声明でこうした当面の据え置き姿勢が示されると、トルコリラの買い材料となり、1リラ=7円50銭を目指す可能性がある。
米PCEデフレータ(11月)
12月23日22:30
☆☆☆
 23日に米国のインフレ目標の対象指標である米個人消費支出(PCE)デフレータ(11月)が発表される。12月13日発表された11月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+7.1%、食品とエネルギーを除いたコアCPIは+6.0%と、それぞれ市場予想の+7.3%、+6.1%、10月の+7.7%、+6.3%を下回った。PCEデフレータの市場予想は+5.5%、同コアデフレータの市場予想は+4.7%と、10月の+6.0%、+5.0%から伸び率縮小が予想される。CPIの弱い結果も加味した市場予想だが、予想を超えて伸び率がさらに縮小するとドル売りが強まる可能性がある。1ユーロ=1.07ドル台に向けた動きが見込まれる。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。