2022年12月26日号

(2022年12月19日~2022年12月23日)

先週の為替相場

日銀金融政策決定会合を受けて円高

 先週(12月23-27日)は円高が急速に進んだ。日銀が20日、金融政策決定会合で長期金利の変動幅拡大を決めると、無風を予想していた市場参加者は円買いを急いだ。

 日銀は19、20日に金融政策決定会合を開き、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC・用語説明1)下での10年物国債利回りについて、基準となるゼロ%からの許容変動幅を従来の0.25%から0.5%に拡大することを決めた。黒田東彦総裁は会合後に記者会見し、金利変動幅拡大は市場機能のゆがみを改善するもので「利上げではない」と明言したが、市場は事実上の利上げと受け止め、短時間のうちに大幅な円高となった。

 ドル円は1ドル=137円台で日銀会合を迎え、会合の結果発表直後に133円台までドル安円高が進み、20日の海外市場で130円50銭台を付けた。

 その後はポジション調整などによるドル買い円売りが優勢となった。132円台半ばまで戻すとドルは上値がやや重くなり、米国債利回りの低下などを材料に131円台までドル安となったが、週後半にかけてドル買い円売りの勢いが強まり、クリスマス前で取引参加者の少ない23日海外市場で133円台を付けた。

 日銀会合後は対ユーロなどクロス円(用語説明2)でも円高が進んだ。1ユーロ=145円台後半で日銀会合を迎え、20日の海外市場で138円台のユーロ安円高となった。

 円主導の展開となる中、1ユーロ=1.06ドル前後で推移。ユーロは1.05ドル台後半で買いが入る一方、1.06ドル台半ば超えでの買いに慎重姿勢が見られた。

 英イングランド銀行(中央銀行)は15日の金融政策委員会で今後の金融引き締めに対してやや慎重な姿勢を示し、利上げ継続の方針を強くにじませる米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)との差異が市場参加者に意識された。日銀会合後の円高でポンドが対円でも下げたことに加え、ドルやユーロに対してもポンドが売られた。15日のECB理事会前に付けた1ユーロ=0.85ポンド台からのユーロ高ポンド安基調が継続。0.8700ポンド前後で先週の取引が始まり、週後半には0.8830ポンド前後までユーロ高ポンド安が進んだ。

 対円では日銀会合前の1ポンド=167円前後から158円台を付けた後、160円00銭前後と、ポンドの戻りは鈍い。

今週の見通し

 26日からの週は、26日がクリスマスの振替休日で日本や中国などごく一部の国を除いて休場となり、年末年始を前に日本の参加者が減ることなどから、落ち着いた値動きが見込まれる。

 年明けは4日に米供給管理協会(ISM)製造業景気指数、6日に米雇用統計の発表が予定されている。FRBは12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.75%から0.5%に縮小した。次回(1月31-2月1日)FOMCでは0.25%に縮小するという見方が広がっている。もっとも、米短期金利市場の織り込みは6割強程度にとどまり、4割弱は0.5%利上げの継続を予想している。

 米国の景況感や雇用市場の動向次第でFOMCの見通しが大きく変化すると、為替相場は年初から大きく動く可能性がある。日銀会合の影響で円高方向にやや動きやすくなっている印象があり、米指標が弱く出ると、1ドル=130円割れを試す円高に振れる可能性が十分にありそうだ。

用語の解説

イールドカーブ・コントロール 日銀が2016年9月の金融政策決定会合で導入を決めた「長短金利操作付き量的・質的緩和」のうち、短期金利と長期金利が誘導目標付近で推移するようイールドカーブ(利回り曲線)をコントロールする金融政策。2016年1月よりスタートした短期金利のマイナス金利に加えて、長期金利の指標となる10年国債の利回りが概ねゼロ%程度で推移するように金融調節し、イールドカーブを適切な水準に維持する。
クロス円 ユーロやポンドなどドル以外の通貨と円との通貨ペアのこと。外国為替の銀行間取引の約88%が「ドル円」「ユーロドル」などドルとの他通貨の組み合わせとなる(国際決済銀行2022年4月調査)。たとえばポンド円の取引を行う場合、ポンド円の買いならば、ポンドドルでのポンド買いドル売りとドル円でのドル買い円売りを掛け合わせて(クロスさせて)ドルを相殺し、ポンド買い円売りとすることが一般的だ。そうした取引の状況からドル以外の通貨と円のペアをクロス円と呼ぶ。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(12月)
1月5日0:00
☆☆☆
 前回11月の米供給管理協会(ISM)製造業景気指数は49.0と、10月の50.2や市場予想の49.7を下回った。同指数が好悪判断の基準となる50を下回るのは2020年5月以来約2年半ぶり。新規受注が47.2と前回から2ポイント低下し、3カ月連続で50を下回った。雇用は前回の50.0から48.4と6月以来の水準に低下し、今回は48.5とさらなる低下が見込まれている。予想を超える低下だと米経済成長率鈍化への懸念が強まり、大幅利上げ観測が後退して131円台に向けたドル売り円買いが予想される。
米FOMC議事要旨
1月5日04:00
☆☆☆
 12月13、14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。同FOMCは大方の予想通り、利上げ幅を0.5%に縮めた。一方、ターミナルレートの見通しは、市場の予想を超える水準まで上方修正してきた。こうした動きがどのような議論の下で生じたのかが注目される。次回FOMCでの0.5%利上げ継続見通しが強まれば、134円台へのドル上昇を試す可能性がある。
米雇用統計(12月)
1月6日22:30
☆☆☆
 前回11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比26.3万人増と、市場予想の20万人増を上回る伸びとなり、米雇用市場の堅調さが印象付けられた。娯楽・接客行の8.8万人増、教育・医療サービス部門の8.2万人増が全体を押し上げた。一方、年末商戦を控える小売業が2.99万人減、運輸倉庫業が1.51万人減となった。雇用者数変化の先行指標とされるテンポラリーヘルプサービスも1.72万人減と低調だった。事業所調査であるNFPと集計方法の異なる家計調査ベースでの雇用者数は18.6万人減と10月に続いて雇用の減少が確認された。
 今回は前月比20万人前後の新規就業者の増加が予想される。就業者数の増加率が前月から低下しても、水準は決して弱いものではないため、雇用増が予想前後だと米雇用市場の堅調さが意識されてドル買いとなる可能性がある。ただ、予想を下回る伸びにとどまる可能性も十分にある。4日発表される11月の雇用動態調査(JOLTS)による11月の求人数が10月比で大幅な減少が見込まれていることもあり、予想値からのブレに注意したい。予想を下回ると、1ドル=130円割れを試すドル安円高となる可能性がある。

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