2023年01月10日号

(2023年01月02日~2023年01月06日)

先週の為替相場

値動きの激しい展開が続く

 年末年始を挟んでドル円の値動きが激しい。日銀が昨年12月19、20日に金融政策決定会合を開き、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)下での10年物国債利回りの許容変動幅を0.25%から0.5%に拡大すると、市場は事実上の利上げと受け止めて21日に1ドル=130円台までドル安円高が進んだ。その後はいったん調整が入り、28日の海外市場で134円台半ばまでドル高円安となった。

 年末年始に再びドル売り円買いが強まった。日銀が次回金融政策決定会合(1月17、18日)で示す消費者物価指数(生鮮食品を除くコア)前年度比見通し(用語説明1)を前回10月時点から上方修正する検討に入ったと日本経済新聞が報じたことをきっかけに、年末30日の海外市場で130円台までドル安円高が進んで2022年の取引を終えた。

 日本の取引参加者が少ない1月3日の市場でもドル売り円買いが続き、129円台半ばに迫った。130円割れは2022年6月以来約7カ月ぶり。

 その後は一転してドル買いが優勢となった。6日の米雇用統計(12月分)発表などを前に、行き過ぎたドル安円高が警戒されていた。4日発表された12月の米ISM製造業景気指数は弱めに出たが、雇用部門は強めだったことや同日発表された11月末の米雇用動態調査(JOLTS・用語説明2)求人数が市場予想よりも多かったことなどがドル買いを誘った。同日米国東部時間午後に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(12月開催分)はインフレリスクを強調し、インフレがより持続的になる可能性を指摘するなど、利上げの継続を示すものだったが、ドル高が進んでいたこともあり、公表後は利益確定のドル売りが優勢となった。

 5日発表された12月の米ADP雇用者数、12月25-31日の新規失業保険申請件数がともに好結果だったこともあり、その後はドル高が再び強まり、6日の米雇用統計発表前には節目の135円をうかがう勢いを見せた。

 12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、失業率が予想外に低下と強い結果だった。しかし平均時給の伸びが予想以上に鈍り、インフレ見通しが後退。雇用統計の1時間半後に発表された米ISM非製造業景気指数が予想を大きく下回り、好悪判断の境となる50を下回ったこともあり、週末にかけてドル売りが強まった。

 その他通貨も激しい動きを見せた。年末にかけてユーロ買いドル売りが強まり、クリスマス前の1ユーロ=1.05ドル台から年末には1.07ドル台を付けた。対円では28日に1ユーロ=143円近くまで上昇したが、その後のドル安円高の勢いが勝る形でユーロ安円高となった。

 年始に1ドル=130円割れのドル安円高となる中、1ユーロ=137円台のユーロ安円高に動いた。ユーロの対ドルレートも対円でのユーロ売りに押されて1.05ドル台前半を付けている。その後は週末にかけてドル高基調が強まる中で、米雇用統計前に1.05ドルを割り込む場面があった。米雇用統計後はドル売りが急速に強まったが、ユーロ円はドル高円安の勢いが勝り1ユーロ=141円台まで上昇。

今週の見通し

 12日の米消費者物価指数をにらんだ展開が見込まれる。6日発表された12月の米雇用統計で、平均時給の伸びが市場予想に届かなかったことや、12月の米ISM非製造業景気指数の予想以上の弱さを受けて、米国の物価上昇圧力が後退しているとの見方が広がり、先週末からのドル安につながった。次回の米FOMC(1月31日、2月1日)での追加利上げ幅が0.25%へさらに縮小するのか、0.5%を維持するのか、市場参加者の見方が分かれている。物価上昇圧力が後退すれば、0.5%の大幅利上げ継続見通しが後退し、ドル売りとなりそうだ。

 こうした状況から12日の米消費者物価指数に市場参加者が強い関心を寄せている。米国のインフレ目標の対象は個人消費支出(PCE)デフレータであり、消費者物価指数(CPI)ではないが、両者の動向は似通うため、発表が2週間ほど早いCPIが注目される。

 12月に入ってガソリンを中心にエネルギー価格が下落したことから、CPIは伸び率の低下が見込まれている。前回11月は市場予想を超える減速に、1ドル=137円台から134円台へドル安円高が進むなど大きな値動きとなった。今回もCPI上昇率低下が市場予想よりも著しければ、ドル売りが一気に進む可能性がある。3日の市場で130円の節目をいったん割り込んでいることもあり、ドルは下げやすい地合いとなっている。3日の安値を割り込んでくると、先月後半からの130-135円を中心とした取引レンジが127-132円中心へ切り下がる可能性がある。

用語の解説

消費者物価指数(生鮮食品を除くコア)前年度比見通し 日本銀行は年4回(通常1、4、7、10月)の金融政策決定会合で発表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、実質GDPと消費者物価指数(除く生鮮食品)対前年度比の政策委員の大勢見通しを示す。前回10月は2022年度が2.9%、23年度が1.6%、24年度が1.6%だった。いずれも7月時点より上方修正されている。
雇用動態調査(JOLTS) 雇用動態調査(JOLTS : Job Opening and Labor Turnover Survey)は、米労働省が毎月発表している月末時点での主要産業区分別の労働需要動向を示した指標。求人、採用、離職などの項目が発表され、中でも求人数の注目度が高い。米雇用統計と同じく米労働省の労働統計局(BLS)にある雇用失業統計室が担当しているが、同室内での担当は雇用統計が雇用統計課であるのに対して、JOLTSは行政統計・労働移動課の求人労働移動調査統計室となる。

今週の注目指標

パウエル米FRB議長討論会参加
1月10日
☆☆☆
 スウェーデン国立銀行(中央銀行)が主催する国際シンポジウムにパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長、ベイリー・英イングランド銀行(中央銀行)総裁、マックレム・カナダ銀行(中央銀行)総裁らが参加する。パウエル議長は中央銀行の独立性に関する討論会に参加する。各国中銀は景気鈍化懸念が広がる中での物価高への対応という難しいかじ取りを迫られており、パウエル議長が今後の金融政策についてどのように表現するのかが注目される。今後の利上げ継続姿勢が強調されるようだと、ドル高の材料となり、1ドル=133円台に向けた動きが予想される。
米消費者物価指数(CPI/12月)
1月12日22:30
☆☆☆
 前回11月のCPIは前年同月比+7.1%と、10月の+7.7%や市場予想の+7.3%を下回った。米CPIは6月に前年同月比+9.1%と約40年半ぶりの高水準を記録したが、その後は前回まで5カ月連続で伸び率が低下している。食品とエネルギーを除く「コア」は前年同月比+6.0%と、こちらも10月の+6.3%や市場予想の+6.1%を下回った。内訳はエネルギー全体が前年同月比+13.1%、ガソリンが+10.1%と、かなりの高水準だが、一時に比べると伸び率が相当低下してきた(物価高がピークとなった6月はエネルギー全体が前年同月比+41.6%、ガソリンが+59.9%だった)。一方、家計を直撃する食品は8月の前年同月比+11.4%からピークアウトした感があるとはいえ、+10.6%とかなり高水準での推移している。このうち家計用食品は+12.0%となっている。
 コア部分を見ると、財部門全体は前年同月比+3.7%とかなり落ち着いている。財部門はサプライチェーン問題で自動車を中心に2022年前半に大きく上昇。中古車が2022年2月に+41.2%、新車が同4月に+13.2%を付けた。前回11月分は中古車が-3.3%とマイナス圏になり、新車はやや高いものの+7.2%とピーク時に比べると落ち着きつつある。一方サービス部門は前年同月比+6.8%と高い伸びが続いている。基本的に契約更新時にのみ価格が変化し物価変動に対して遅効性が強い家賃などの影響で住居費の上昇傾向が続いており、11月分が前年同月比+7.1%まで上昇してきたことが大きな要因。また、人の移動が正常化していることで、輸送サービスが14.2%と高水準で推移していることもサービス部門の高水準の物価上昇の要因となっている。
 今回の予想は前年同月比+6.6%、コアが+5.7%と、ともに11月から伸びが鈍化する見込みとなっている。11月から12月にかけてガソリン小売価格は全米全種平均で1バレル=3.799ドルから3.324ドルまで12.5%の大幅に低下した(EIA:米エネルギー情報局調査)。前回調査で前年同月比+10.1%となっていたガソリン部門が大きく下げると期待されることに加え、輸送コスト低下が全体の物価を押し下げる効果も予想されている。ただ、上述通り遅効性のある住居費は今回も上昇してくる可能性が高い。住居費はCPI全体を100とした時、32.7%を占めるかなり大きな項目だ。それけに、CPIは市場予想ほど下がらない可能性がある。その場合次回FOMCでの0.5%利上げ観測が強まってドルが買われ、1ドル=135円超えを試す可能性がある。
米ミシガン大学消費者信頼感指数(1月)
1月14日00:00
☆☆
 米国の物価高が進んでいるものの、堅調な雇用情勢もあり、2022年の年末商戦の米消費者によるオンライン支出額は前年比+3.5%増の2117億ドルと過去最高だった(アドビ・アナリティクス調査)。こうした米家計の力強い消費動向は、利上げ継続の好材料となる。市場予想は60.5と、前回の59.7から上昇を見込んでいる。ただ、年末商戦は各社の値引き戦略が支出を後押ししたとみられている。物価高の影響で消費者が支出に消極的になっているようだと、1ドル=130円台に向けてドルが売られるだろう。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。