2023年01月23日号

(2023年01月16日~2023年01月20日)

先週の為替相場

日銀会合後に大きな動き

 先週(1月16-20日)は日銀が17、18日に開催した金融政策決定会合の影響が強く出た。

 日銀は昨年12月19、20日の前回会合で長短金利操作(YCC)を修正したため、今回の会合では現状維持になるとの見通しが先々週半ばごろまで広がっていた。しかし、日銀が大規模金融緩和の副作用を点検するとの12日付読売新聞記事をきっかけに、海外勢を中心にYCCの再修正や撤廃の思惑が広がり、円買いが強まった。12日以降の円買いが継続する形で、16日に2022年5月以来のドル安円高となる1ドル=127円23銭を付けた。その後は会合の結果発表を前にした調整などから129円台までドルが反発したが、YCC再修正観測が根強い中、直前に円買いが入り、128円台前半で日銀会合の結果発表を迎えた。

 10年物日本国債の利回りは13日、日銀が許容上限とする0.5%を超えた。週明けも連日のように0.5%を超える場面があり、結果発表直前の18日東京市場前場終値は0.505%だった。

 日銀会合では共通担保資金供給オペ(用語説明1)の拡充など新たな金利抑制手段を導入し、YCCの枠組みを維持した。この結果を受けて円売りが強まり、1ドル=131円58銭前後までドル高円安が進んだ。10年物日本国債の利回りは一時0.36%台に低下した。

 高値を付けた後のドルは上値が重くなった。黒田東彦日銀総裁は会合後に記者会見し、「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要はない」と明言したが、相場への影響は限定的だった。12月の米生産者物価指数(PPI)と同小売売上高がともに予想を下回るとドル売りが強まり、127円50銭台を付けた。米物価上昇率の鈍化見通しが強まったことに加え、個人消費の減退による景気停滞懸念からドルが売られた。

 その後は128円台を中心に推移した後、週末を前に130円台を付けた。中国・香港株式が春節の長期休場を前に買われると、リスク選好の動きが広がった。

 日銀会合を受けて、ドル以外の通貨に対しても円安が進んだが、対ドルと同様にすぐに円買いが入った。1ユーロ=138円台半ば近くで日銀会合の結果発表を迎え、141円台後半にユーロが上昇した後、137円90銭台に下落した。その後はドルの対円での買い戻しや、ユーロ買いドル売りもあって、141円台に戻している。

 スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議・用語説明2)で、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が「インフレ率はあまりにも高すぎる」「路線継続は私の信念だ」などと発言。複数のユーロ加盟国中央銀行総裁がラガルド総裁の方針を支持する姿勢を示したこともあり、対ドル、対円でのユーロ買いを誘った。

今週の見通し

 日銀会合の結果発表後に円安が進んだものの、その日の内に円は値を戻し、逆に円高に動いた。もっとも、日銀会合の結果は中期的な円売りの材料として意識されている。黒田日銀総裁は会合後の記者会見で、長期金利の変動幅をさらに拡大する必要はないと明言しており、次回会合(3月21、22日)もYCCは現状維持が見込まれる。YCCの修正・撤廃があるとすれば最短で総裁交代後初の日銀会合(4月27、28日)となるため、短期的な円高圧力は後退している。

 今回の会合で導入を決めた共通担保資金供給オペの影響で、日本国債利回りに低下傾向が見られることも円安材料となる。

一方、インフレの鈍化、景気減速への警戒感が広がる米ドルも売りが出やすい。1月31日、2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利上げの織り込みが進んでいることもドル売り材料。ドル円は売り買いが交錯し、不安定な動きとなる可能性がある。

 一方、2月2日のECB理事会での0.5%利上げの織り込みが進んでおり、ユーロは対ドルで先高見通しが強い。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅縮小に向かう一方でECBは大幅利上げ継続が予想され、1ユーロ=1.10ドル台を意識する展開と予想する。ECBの0.5%利上げ観測はユーロ買い円売り材料だが、対ドルなどで円買いが進めば、ユーロは対円の上値が抑えられるだろう。

用語の解説

共通担保資金供給オペ 共通担保資金供給オペとは、日銀が金融機関から国債、社債、CPなどの適格担保を共通の担保として受け入れ、資金を貸し付ける仕組み。従来は約2週間までの短期間の貸し出しだったが、今年に入って2年物などが実施されていた。今回の拡充で金利入札方式、固定金利方式ともに期間の上限が10年となり、固定金利方式は金利を0%から貸付ごとに決定することとなった。
世界経済フォーラム 世界経済フォーラム(World Economic Forum)は政界や経済界、学術界などが連携し世界情勢の改善を目指す非営利の国際団体。本部はスイス・ジュネーブ州コロニー。1月後半にスイスのリゾート地ダボスで開催される年次フォーラム(通称ダボス会議)は中央銀行関係者、政治家、学者、企業関係者などが一堂に会し、世界中が注目する。

今週の注目指標

ユーロ圏PMI(1月)
1月24日18:00
☆☆☆
 ユーロ圏とユーロ加盟主要国の購買担当者景気指数(PMI)が発表される。2月2日のECB理事会での0.5%利上げ続行が予想され、景気への影響が警戒されている。ユーロ圏、フランス、ドイツのPMIはエネルギー価格下落などを受けた物価上昇懸念の後退もあって、製造業・非製造業ともに前回から改善が予想されている。もっともユーロ圏サービス業を除けば、好悪判断の境となる50を下回る見込み。市場予想を下回った場合はユーロ売りが強まり、1ユーロ=1.07ドル台に向けたドル高ユーロ安となりそうだ。
カナダ中銀政策金利
1月26日0:00
☆☆☆
 前回12月の会合でカナダ銀行(中央銀行)は0.5%の利上げを実施した。市場予想は0.25%と0.5%がほぼ拮抗していた。2022年3月から7カ月連続での利上げで、政策金利の引き上げ幅は合計4%となった。12月会合の声明では、それまでにあった追加利上げが必要だとの見解は示されず、金融引き締めの需要減速作用などを評価し、さらに金利を引き上げるか判断するとの表明にとどめた。この声明を受けて、今回会合では0.25%への利上げ幅縮小見通しだけでなく、一部で金利据え置きも予想されている。金利据え置きの場合、先週上値を抑えた1ドル=1.3520カナダ超えのドル高カナダ安を試す可能性がある。
米第4四半期GDP速報値
1月26日22:30
☆☆☆
 米景気はこれまでの大幅利上げの影響で、2023年前半のリセッション(景気後退)が警戒されている。今回の市場予想は前期比年率+2.7%。第3四半期GDP確報値の+3.2%から成長は鈍化するが、コロナ前2019年まで10年間の米国の成長率が年平均2.25%だったため、まずまずの水準と言える。
 前回第3四半期GDPでは、全体の約7割を占める個人消費が+2.3%と堅調だった。住宅投資は高金利の影響が出たとみられ、第2四半期の-17.8%を超える-27.1%の大きな落ち込みだった。設備投資のうち構造物が-3.6%と6四半期連続でマイナスとなっており、こちらも金利上昇の悪影響が出たもようだ。
 昨年11月初めごろまで住宅ローン金利の上昇が続いており、米国の住宅ローンで最も一般的な30年固定ローン金利(米連邦住宅金融抵当公庫:フレディーマック)は7.08%と2002年4月以来20年超ぶりの水準に上昇しており、今回も住宅投資は厳しい水準が見込まれる。
 個人消費の動向を示す小売売上高は11、12月と前月比マイナスとなっており、売上高の減少が確認されている。月次の個人消費支出も最新データである11月分が前月比+0.1%と伸び率は小さい。
 こうした状況からGDP成長率は市場予想を下回るだろう。米国の景気鈍化を印象付け結果になると、ドル売りが強まり、1ドル=127円台に向けた動きが予想される。

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