2023年01月30日号

(2023年01月23日~2023年01月27日)

先週の為替相場

一方向の動きにならず

 先週(1月23-27日)はドルの売り買いが交錯し、一方向の動きにならなかった。ドルは24日の海外市場で約1週間ぶりに1ドル=131円台に上昇した後、129円00銭近くまで下落した。ドルは売りが一服すると、130円台後半まで値を戻したが買いは続かず、129円台後半で先週の取引を終えた。

 1月に発表された米国経済指標は消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)などが弱く出て物価上昇率の鈍化傾向が確認された。ISM製造業/非製造業景気指数や小売売上高、鉱工業生産といった重要指標も弱く、景気の先行きに対する警戒感が広がっていた。一方、先週発表された1月の購買担当者景気指数(PMI)速報値や2022年第4四半期GDP速報値、耐久財受注などは強めに出ており、警戒感が後退したが、今週1月31日、2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利上げ予想を修正するほどではなく、反応は限定的だった。

 先週初め23日の東京市場は129円04銭を付けるなどドル売り優勢で始まった。先々週末20日に「タカ派」として知られるウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事が次回FOMCでの0.25%利上げを示唆すると0.5%利上げ観測が急速に後退し、ドル売りが続いた。しかし日銀が同日通知した1兆円の5年物共通担保資金供給オペに3.1兆円の応札があったことを受けて円債利回りが低下すると円売りが強まり、130円90銭前後を付けた。

 24日には円債利回りが再び上昇したことなどを受けて129円70銭台までドル売り円買いが進んだ後は、米国株安を受けてリスク警戒姿勢が強まり、18日以来の1ドル=131円台までドルが上昇した。しかし、ドル買いも続かず、すぐに129円台を付けるなど値動きは荒かった。

 その後再び130円台後半を付けたが、週後半にかけては米債利回りの低下などを受けて再びドル売りが強まり、26日に129円03銭前後を付けた。129円台を維持したことで投機筋がドルを買い戻したほか、26日発表の米第4四半期GDP速報値の強さもあって130円台後半まで上昇。その後は週末にかけたポジション調整に129円台後半までドル安となるなど、週の終わりまではっきりとした方向性は見られなかった。

 129円00銭台を付けた23日と26日のドル安円高局面で、1ユーロ=1.0920ドル台のユーロ高ドル安となった。24日発表の1月ユーロ圏製造業/非製造業PMI(速報値)の好結果もあり、ユーロ買いが入りやすかった。もっとも。ドル円と同様に一方向の動きにならず、27日海外市場では1.0830ドル台にユーロが下落。その後少し調整が入って1.08ドル台後半で週の取引を終えた。

 対円ではドル高円安もあって23日には12日以来となる1ユーロ=142円台を付け、ドル主導の展開の中で株高などを好感した円売りが出て142円30銭前後を付けた。その後はドル安円高もあって140円台へユーロが下落。140円台ではユーロに買い意欲が確認され、週末まで141円台を中心に推移した。

今週の見通し

 今週は注目材料が目白押し。1日に米ADP雇用者数、米ISM製造業景気指数、米連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表とパウエルFRB議長会見が予定されている。2日は英イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC、今回はスーパーサーズデー(用語説明1))と欧州中央銀行(ECB)定例理事会があり、週末3日には米雇用統計、米ISM製造業景気指数が発表される。またGAFA(用語説明2)など米主要企業も相次いで決算を発表する。

 相場への影響が特に大きそうなのが米FOMC、英MPC、ECB理事会といった金融政策会合と米雇用統計。

 米FOMCについては、0.25%利上げで市場の見方がほぼ一致し、声明文とFOMC後のパウエルFRB議長の記者会見に市場参加者の関心が集まっている。27日発表された12月の米PCEデフレータ前年比が市場予想を大幅に下回る+5.0%にとどまるなど物価上昇率の鈍化が目立つ中、短期金利市場が織り込むターミナルレート(政策変更後の最終的な金利水準)は4.75-5.00%。昨年12月FOMCで示されたドットプロット(FOMC委員が予想する金利の分布図)では19人中17人が5.00-5.25%以上を見込んでおり、市場とFOMC委員の見通しが乖離(かいり)しており、ターミナルレート見通しの引き下げが示唆されるとドル売りが急速に進む可能性がある。

 英MPC、ECB理事会はともに0.5%利上げの継続が予想されているが、英国もユーロ圏も景気の見通しは厳しく、利上げ幅縮小観測が根強い。声明文などで利上げ幅縮小を示唆する姿勢が確認されるとポンドやユーロの売りにつながるだろう。

 米雇用統計は前回から非農業部門の新規雇用者が減少する見込み。FOMCで景気の先行きに慎重な見解が示されてドル売りが進んだ後に、雇用統計の低調が判明すればドル売りがさらに強まる可能性があり、注意を要する。

用語の解説

スーパーサーズデー イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会(MPC)は年8回開催される。全てのMPC後に会合結果、声明文、議事要旨が公表され、このうち2、5、8、11月の4会合は四半期報告の発表と会合後のイングランド銀行総裁の記者会見があり、スーパーサーズデーと呼ばれている。
GAFA 米国のIT大手グーグル(現アルファベット子会社)、アップル、フェイスブック(2021年にメタ・プラットフォームズに社名変更)、アマゾンの頭文字をつないだ略称。ビッグフォー、Theフォーなどの別称もある。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
2月2日04:00
☆☆☆
 米FRBは、前回12月FOMCで利上げ幅を大方の予想通り0.5%に縮小した。前回FOMCで公表されたメンバーによる経済見通し(SEP)え、ターミナルレートが従来予想よりも引き上げられたこともあり、発表後は次回OFMCで予想される利上げ幅は0.25%への縮小と、0.5%維持で市場の見方が分かれていた。しかし、その後発表された低調な米物価関連指標や0.25%利上げ予想を示す複数のFRB関係者発言から、0.25%利上げを織り込み済み。
前回FOMCまでターミナルレートは4.75-5.00%が大勢だったが、前回FOMCで示された2023年末時点の政策金利見通しは、19人中10人が5.00-5.25%を、7人が5.25%以上をそれぞれ予想したことで、市場の予想も上方修正された。しかし、その後に発表された米指標の弱さを受け、4.75-5.00%をターミナルレートとする見方が再び広がりつつある。5月FOMCで政策金利を5.00-5.25%以上にするとの見通しは昨年末時点で50%を超えていたが、直近では33%程度となっている。今回のFOMC声明文やパウエルFRB議長の記者会見で物価高への強い対応が強調されればドル買いが強まり、1ドル=131円台のドル高円安が予想される。
イングランド銀行金融政策委員会(MPC)
2月2日21:00
☆☆☆
 2日21時にイングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会、22時15分にECB理事会の結果が発表される。ともに12月の会合と同じく0.5%の利上げが見込まれている。ただ、波乱があるとすると英MPCとみられる。前回のMPCでは9人中2人が金利据え置きを主張した。英国の景気停滞懸念が広がっており、MPC内でも慎重な姿勢がうかがえる。今回いきなり据え置きが多数派になる可能性はほとんどないが、利上げに慎重な委員が0.25%への利上げ幅縮小で一致する可能性は少し残っている。短期金利市場は0.25%への利上げ幅縮小を15%ほど見込んでいる。0.25%へ利上げ幅が縮小されると、1ポンド=1.21ドル台を試すポンド安などが予想される。0.5%利上げ継続でも、前回の据え置き2人に加えて、0.25%利上げ主張の委員が現れているようだと、次回以降の利上げ幅縮小観測の強まりがポンド売りを誘い、1.22ドル台に向けたポンド安ドル高が予想される。
米雇用統計(1月)
2月3日22:30
☆☆☆
 前回の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+22.3万人と、市場予想の+20万人前後を上回った。また、失業率は前回から悪化するという予想に反して0.1%ポイント低下して3.5%と、昨年9月に付けた約50年ぶりの低水準と並んだ。しかし、発表後の市場の反応はドル売りだった。平均時給の伸びが前月比+0.3%、前年比+4.6%と、ともに市場予想(前月比+0.4%、前年比+5.0%)を下回り、11月と比べても伸び率が縮小したことが嫌気された。
 前回のNFPは、娯楽・接客部門が+6.7万人と堅調さを維持。ヘルスケア・社会福祉部門も+7.44万人と力強い伸びが続いた。また、景気動向に比較的敏感な小売業が+0.9万人と小幅ながら4カ月ぶりに増加し、雇用の減少が目立っていた運輸・倉庫部門も+0.47万人と5カ月ぶりの増加に転じた。ただ、雇用の先行指標といわれるテンポラリーヘルプサービスは-3.5万人と5か月連続マイナス。減少幅は2021年4月以来の大きさだった。
 今回の予想は非農業部門雇用者数が+18.5万人、失業率が3.6%。新規雇用者の減少と失業率悪化だけを見ると厳しい数字に見えるが、水準的に+18.5万人はそれほど弱い数字ではない(コロナ前2019年までの5年間の月次平均は+19.02万人)。失業率も米国としてはかなり低い水準である。それだけに予想前後の数字であれば、インパクトは限定的だろう。雇用統計の公表前に結果が判明するFOMCで、今後の利上げに慎重な姿勢が示されていた場合、低調な雇用統計が利上げ打ち止め感を強め、ドル売りが加速する可能性がある。前回ドル売りを誘った平均時給の伸びが鈍かった場合はドル売りが加速し、節目の1ドル=125円を目指す可能性が意識される。

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