2023年02月06日号

(2023年01月30日~2023年02月03日)

先週の為替相場

週末、ドルが急伸

 先週(1月30日-2月3日)は結果公表を1日(日本時間2日)に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらむ展開となった。令和国民会議(令和臨調・用語説明1)が30日、政府と日銀に新たな「共同声明」作成を提言し、異次元緩和の象徴となっている2%の物価上昇率目標を「長期の目標」とするよう提言したことを受けて同日の東京市場で円買いが進み、1ドル=130円台前半から129円20銭台までドル安円高となった。しかし、FOMCを前に行き過ぎた動きには警戒感が強く、同日海外市場で130円台を回復するなど一方向の動きにはならなかった。31日に米第4四半期雇用コスト指数(用語説明2)の伸び率縮小を受けたドル売りが出て、130円台半ば近くから129円70円台までドル安円高となったが、この動きも続かなかった。

 1日の海外市場ではFOMCの結果発表前からドル売りが優勢となった。米10年物国債利回りの低下などを受けて30日の安値圏である129円20銭台までドルが下落し、少し調整が入って129円30銭台でFOMCの結果発表を迎えた。

 FOMCは市場予想通り0.25%の利上げを決定した。声明ではインフレ率がやや鈍化したとの表現が見られたが、政策金利の目標レンジの継続的引き上げが適切だと予想しているとの表現で追加利上げを示唆し、発表直後は129円台後半を付けるなどドルが買われた。しかし、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長があと数回の利上げを検討しているなどと発言すると、ドル売りが強まった。

 パウエル議長は年内の利下げ観測を否定するなど一定のタカ派姿勢を継続したが、財のディスインフレ(インフレ鈍化)プロセスが始まっていることなどに言及したため、従来ほどタカ派姿勢ではないとの見方が広がり、2日の東京市場で1月19日以来のドル安圏となる128円18銭前後を付けた。その後129円台を一時回復したが上値は重く、2日の海外市場で128円09銭を付けている。

 1月の米雇用統計発表を128円台前半で迎えると、予想を超える好結果からドル買いが急速に強まり131円台で先週の取引を終えた。

 米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想の前月比+19万人前後をはるかに超える+51.7万人となった。前回値も上方修正された。失業率は前回が良好だったため、今回は若干の悪化が予想されていたが、予想外に改善し、1969年5月以来およそ53年ぶりの低水準だった。平均時給はほぼ市場予想通りだった。

 市場ではパウエルFRB議長会見後に年内利下げ観測が強まっていた。しかし、1月の雇用統計を受けて年内利下げ観測は後退。金利据え置き予想が目立っていた5月2、3日のFOMCでは、約60%が追加利上げを見込むなど引き締め観測が広がり、ドル買いにつながった。

 ユーロの対ドル相場はFOMC後のドル売りなどに先週前半の1ユーロ=1.0800ドル近くから節目の1.10ドルを超え、1.1030ドル台まで上昇した。

 欧州中央銀行(ECB)は2日の理事会で、市場予想通り0.5%の利上げを決定し、声明では次回理事会(3月16日)での0.5%利上げ方針を示した。しかし、3月理事会時点でその後の金融政策の道筋を評価するとしたことで、市場は利上げサイクルが近く終了する可能性が高いとの見方を強め、1.08ドル台までユーロ安ドル高となった。米雇用統計後のドル買いでユーロはさらに下落し、1.07ドル台で先週の取引を終えた。

 ユーロの対円相場はドル主導の展開の中、1ユーロ=141円台を中心に推移した後、ECB理事会後のユーロ売りに140円割れ。FOMCの結果発表後はユーロ安ドル高よりもドル高円安の勢いが勝り、142円台のユーロ高円安に動いた。

今週の見通し

 日本経済新聞が6日午前2時、電子版などで政府・与党が雨宮正佳日銀副総裁に次期総裁就任を打診したと報じたことを受け、円売りが一気に進んで週の取引が始まった。雨宮氏は日銀のエースとして次期総裁の有力候補とされてきただけにサプライズ感はない。金融政策の企画・立案を担う企画畑を中心にキャリアを積み、企画担当理事として黒田日銀総裁による異次元緩和や量的・質的緩和政策を支えてきたことから、黒田路線の継続が見込まれるとして、円売りの材料となったとみられる。同報道後、鈴木俊一財務相が自宅前で報道陣に対して「何も聞いていない」と述べ、磯崎仁彦官房副長官は午前の記者会見で「そのような事実はない」と発言した。しかし、雨宮氏はもともと総裁の最有力候補だったため、何らかの進展があったという見方が市場に広がり、円売り材料となった。

 3日の米雇用統計を受けたドル高と、次期日銀総裁を巡る思惑からの円安、両面からドル円は上を意識する展開。

 米雇用統計を受け、5月FOMCでの利上げ続行見通しが少数派から多数派に転じ、年内の利下げ観測は後退した。中期的にドル高の流れが継続する場合でも、短期的には行き過ぎ感などから調整が入る可能性がある。日銀次期総裁人事の思惑も絡み、かなり不安定な値動きとなりそうだ。

 ハト派とされる雨宮氏が総裁に指名された場合、ある程度の円売りが見込まれる。総裁人事案と同時に国会提出が見込まれる副総裁候補に、浅川雅嗣アジア開発銀行総裁(元財務官)などある程度タカ派とされる人物が指名された場合、影響は限定的または円買いとなる可能性がある。

 流れ的にはドル高方向で、1月6日に付けた134円77銭がターゲット。

用語の解説

令和国民会議(令和臨調) 経済界、労働界、学識者などの有志が「日本社会と民主主義の持続可能性」をキーワードに2022年6月設立した団体。日本生産性本部会長の茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長兼取締役会議長)、同副会長の佐々木毅(元東京大学総長)、増田寛也(日本郵政取締役兼代表執行役社長)、小林喜光(東京電力取締役会長)が共同代表となって発足した。今回の提言は翁百合日本総合研究所理事長と平野信行三菱UFJ銀行特別顧問が共同座長を務める同会議の財政・社会保障部会が検討したもの。
米雇用コスト指数 雇用コスト指数(ECI:Employment Cost Index)とは、賃金・給与と福利厚生費など賃金以外で雇用にかかわる費用を含めた、企業が実際に負担する雇用コストを示した指数。全体の約7割を賃金・給与が占める。米労働省労働統計局が四半期ベースで集計し、計測期間の翌月末前後に発表する。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
2月7日12:30
☆☆☆
 オーストラリア準備銀行(中央銀行)金融政策理事会は0.25%の利上げ見通しが大勢となっている。利上げを実施した場合、昨年5月以来9会合連続となる。米、ユーロ圏、英、日本など多くの主要中銀の金融政策会合は年8回だが、豪中銀は年11回(基本毎月で1月だけ夏休み)と頻度が高く、昨年10月時点と比較的早くに利上げ幅を0.25%に縮小した(会合の回数が多い分、大幅利上げを続けると短期間に金利が上がり過ぎる)。その後0.25%利上げが3回続いたこともあり、前回の会合後、市場では利上げの打ち止めを期待する動きがあった。ただ、1月が金融政策会合のない月であり、2月会合が2カ月ぶりということや、1月25日に発表された第4四半期消費者物価指数(CPI)が前年比7.8%と33年ぶりの高い伸びを記録したことなどから、利上げ継続予想が大勢となっている。第4四半期CPIが物価高のピークになるとの見方が広がっており、今後の利上げの打ち止めが期待されているだけに、結果よりも声明でどこまで引き締め姿勢の後退を示すかが注目される。ただ、12月単月のCPIが前年比+8.4%と10月の+6.9%、11月の+7.3%から上昇しており、物価のピークを確認するためにも、声明では利上げ継続姿勢を崩さないとする見方もあり、声明の姿勢次第となっている。利上げ継続姿勢が確認されると、1豪ドル=93円台に向けた豪ドル高が予想される。
パウエルFRB議長 インタビュー
2月7日
☆☆☆
 パウエルFRB議長がワシントンDCのエコノミッククラブで、同クラブ会長のルーベンスタイン(カーライル・グループ共同創設者・共同会長)によるインタビューに応じる。歴代議長や政財界要人がエコノミッククラブで発言しており、同所での発言は注目度が高い。金融引き締めに積極的な姿勢を強調してくると1ドル=133円台に向けてドル買いが強まると予想される。
英第4四半期GDP速報値
2月10日16:00
☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)は2日の金融政策委員会(MPC)でインフレ警戒についての記述を前回委員会(昨年12月15日)よりトーンダウンした。ベイリー総裁はMPC後に記者会見し、インフレが峠を越えた最初の兆候が見られた、インフレは今年引き続き低下し、下半期にはさらに急速に低下するとみられるなどと発言。市場は英中銀の利上げ打ち止めの織り込みを進めている。第4四半期GDPは前期比変わらずと、第3四半期のマイナス0.3%からの回復が見込まれている。予想を下回り、2期連続マイナス成長となった場合、利上げ打ち止め観測が一段と強まり、1ポンド=1.18ドル台に向けてポンドが売られるだろう。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。