2023年02月20日号

(2023年02月13日~2023年02月17日)

先週の為替相場

1ドル=135円台までドルが上昇

 先週(2月13-17日)はドル高円安が進み、一時1ドル=135円台を上回った。

 週明け13日からドル高円安となった。日銀総裁への起用が報じられた植田和男共立女子大学教授(元日銀審議委員、東京大学名誉教授)が記者団に「緩和の継続が必要だ」と発言すると円が売られた。植田氏は日銀審議委員としてゼロ金利や量的金融緩和を理論的に支え、速水優日銀総裁(用語説明1)下でゼロ金利解除が決まった際に反対票を投じたことがあり、「ハト派」姿勢が見られるとの認識が広がった。

 14日発表された1月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は「総合」「食品とエネルギーを除くコア」がともに12月を下回ったが、市場予想を超え、ドルを押し上げた。15日発表された1月の米小売売上高も市場予想を上回り、ドル高が続いた。米小売売上高は全13分野で売上高が増加した。16日発表の1月の米生産者物価指数(PPI)も上昇率が市場予想を大幅に上回り、ドル高継続の材料となった。

 米連邦準備制度理事会(FRB)関係者のタカ派発言もドル高につながった。クリーブランド連銀のメスター総裁(用語説明1)が利上げ幅を0.25%に縮めた前回(1月31日、2月1日)の連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%利上げに説得力ある経済的論拠があったと発言。セントルイス連銀のブラード総裁は次回(3月21、22日)FOMCで0.5%利上げを支持する可能性を排除しないと述べている。

 13~17日に1ドル=131円台前半から135円台へドルが上昇し、134円台で先週の取引を終えた。

 一方、欧州委員会が13日公表した冬季経済予測で、欧州連合(EU)27カ国の2023年実質経済成長率見通しを+0.8%と前回秋季経済予測の+0.3%から上方修正したことを受けて、先週前半はユーロ高となった。経済予測は、前回想定以上に健全な状態で2023年を迎え、景気後退局面を脱することができそうだとした。

 14日の米CPI発表直後に1ユーロ=1.08ドル台までユーロ高ドル安が進んだ後はユーロ売りが広がり、週後半にかけてドル全般の上昇基調もあり1.0600ドル台にユーロが軟化した。

 13、14日にドル高円安とユーロ高ドル安に動いたこともあって値動きは大きく、東京市場13日朝の1ユーロ=140円10銭台から142円40銭台を付け、週半ばから再びユーロ高円安となり143円台半ばを付けた。

今週の見通し

 2月に入って発表された米国の主要経済指標の強さからドル高が継続している。2月時点で大勢だった3月FOMCでの利上げ打ち止め観測は大幅に後退し、0.5%への利上げ幅拡大も予想されている。大方の予想する0.25%利上げでも、利上げは6月まで続くとの見方が広がっている。年内利下げ開始予想は1月時点で9割を超える織り込みを見せていたが、現在は少数派となり、金融引き締めの長期化観測がドル高材料となっている。

 利上げ局面の長期化や利下げ開始の後ずれ観測は中長期的にドルを支え、当面はドル高円安が意識されそうだ。昨年1ドル=152円近くからのドル安がいったん止まった138円前後がターゲットとなる。

 ただ、今月2日の128円09銭から2週間弱でドルは7円あまり上昇しており、短期的な調整も警戒される。ドル高調整局面で133円台の値固めが進むかがポイントとなりそうだ。

用語の解説

速水優日銀総裁 第28代日銀総裁。東京商科大学(現・一橋大学)卒業後、日銀入り。国際畑を中心にキャリアを積み、1978年に日銀理事。1981年に理事を退任し、日商岩井(現・双日)取締役を経て社長、会長を務めた。双日会長時代に経済同友会代表幹事。1998年に大蔵省(現・財務省)・日銀スキャンダルの影響で、次期総裁が確実視されていた福井俊彦日銀副総裁(当時)が退任したこともあり、速水氏が総裁に指名された。速水総裁下の1999年2月、日銀は世界初のゼロ金利政策を導入し、翌2000年8月に解除。ITバブル崩壊などもあり、2001年に世界初の量的金融緩和政策を導入した。日銀総裁退任後は東京女子大学理事長などを務めた。2009年死去。
メスター・クリーブランド連銀総裁 ロレッタ・メスター(Loretta Mester)米クリーブランド連邦準備銀行(地区連銀)第11代総裁。コロンビア大学卒、プリンストン大学で経済学修士・博士号を取得後、フィラデルフィア連銀入りして上級副総裁を経て、2014年6月からクリーブランド連銀総裁。現在の地区連銀総裁ではブラード・セントルイス連銀総裁に次いで総裁歴が長い。インフレ対応を重視し、金融引き締めに積極的なタカ派的な姿勢が知られている。

今週の注目指標

米FOMC議事要旨
2月23日04:00
☆☆☆
 米国市場で22日午後(日本時間23日午前4時)、前回(1月31日、2月1日)米FOMCの議事要旨が公表される。前回FOMCは市場予想通り利上げ幅を0.25%に縮め、パウエルFRB議長は記者会見で、財のディスインフレ(インフレ沈静化)プロセスが始まっているなどと発言し、市場は従来よりタカ派姿勢が弱いと捉えてドル売りが広がった。市場が認識した以上にタカ派な印象が示されると、1ユーロ=1.05ドル台に向けたユーロ安ドル高が予想される。
植田日銀新総裁候補所信聴取
2月24日09:30
☆☆☆
 次期日銀総裁候補として政府が国会に提示した経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏について、衆議院議院運営委員会は24日午前9時半から所信聴取を行う。副総裁候補の氷見野良三前金融庁長官と内田真一日銀理事は同日午後、所信聴取の予定。植田氏は総裁候補として報道された後、記者団に「緩和の継続が必要だ」と発言するなど金融緩和政策を維持する姿勢を示したが、長短金利操作(YCC)には言及していない。YCCの修正・解除に向けた姿勢がうかがえると1ドル=132円台に向けて円買いが進むだろう。
米PCEデフレータ(1月)
2月24日22:30
☆☆☆
 1月の米個人消費支出(PCE)デフレータが24日に発表される。同指標の前年比が米国のインフレ目標の対象となっている。同系統の指標である1月の米消費者物価指数(CPI)が14日に発表され、前年比+6.4%と12月の+6.5%から伸び率は縮小したが、市場予想の+6.2%を上回った。変動の大きいエネルギーと食品を除いたコアCPIも+5.6%と12月の+5.7%から鈍化したが、市場予想の+5.5%を上回った。CPIは10月が前月から0.5%ポイント、11、12月がともに前月から0.6%ポイントと上昇率の大幅な縮小が続いたが、1月は0.1%ポイントと小幅だった。
 CPIの推移を受けて、PCEデフレータの市場予想は前年比+4.9%、コアPCEデフレータが前年比+4.3%と、ともに12月から0.1%ポイントの伸び率縮小が予想されている。ただ、CPIとPCEは対象となる地域や項目、計算方法などが異なり、両者は必ずしも連動しない。特に1月のCPIで伸びが目立った住居費はCPI全体の34.4%を占める一方、PCEでは16.4%(2022年12月)と全体に占める割合が小さく、乖離(かいり)が生じやすい。伸び率が市場予想を下回った場合、1ドル=132円台に向けたドルの下落が予想される。

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