2023年03月13日号

(2023年03月06日~2023年03月10日)

先週の為替相場

週末にかけてドル安進む

 先週(3月6-10日)半ばまで米国の大幅利上げ観測からドル高が進んだ後、週末はドルが急落した。

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は7日、上院銀行委員会で半期議会証言(用語説明1)に臨み、「正当化されるならば利上げスピード加速の用意がある」「利上げの到達水準は想定より高くなる可能性が高い」などと発言した。次回3月21、22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利引き上げ幅が0.5%に再び拡大するとの観測が強まり、米国債利回りは10年物が一時4%を超えたほか、政策金利の動向に敏感な2年物が2007年以来の5%台に上昇した。

 翌8日の東京市場でも米国の大幅利上げ観測が強まり、米2年債利回りが5.08%台まで上昇する中で、1ドル=137円90銭までドルが上昇した。米金利先物が織り込む将来の政策金利は、3月FOMCでの0.5%利上げの確率が70%を超え、政策金利の到達水準が5.5%を超える確率は80%を超えた。

 パウエル議長は8日の下院金融サービス委員会での議会証言で「利上げペースについて何も決定してない」と述べ、市場の大幅利上げ観測を牽制したことでドルが売られた。

 10日の日銀金融政策決定会合の結果発表と米雇用統計(2月)の発表を前に、ドル買いポジションの整理が進み、1ドル=136円割れのドル安円高となった。日銀会合では金融政策の現状維持が決まった。黒田東彦総裁下では最後となる会合で次期総裁の政策運営を円滑にするため、利回り曲線の歪みが解消されるとの見方が海外勢を中心に広がっていたため、政策変更なしが判明すると1ドル=137円近くまでドルが上昇し、1ユーロ=144円割れから145円手前までユーロが買われるなど、円が全面安となった。

 その後はドル安に転じた。日本時間10日夜発表された2月の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を上ったが、失業率が上昇し、平均時給の上昇も低調だったため、ドルが売られた。

 信用不安説が流れていた米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)(用語説明2)について、米連邦預金保険公社(FDIC)の経営が破綻したと発表。他の銀行への波及が警戒されて金融株が売られる中でドルは急速に下落し、一時134円10銭台を付けた。

今週の見通し

 SVB破綻が先行きの不安材料となっている。米財務省などは全預金者を保護する形で破綻処理を完了する措置を承認したとの声明を発表し、金融システム不安を払しょくするため姿勢を強調した。SVBと同様にIT企業への融資が大きかった中堅銀行のファーストリパブリックバンクは、市場で不安が広がり、10日に株式が一時取引停止となっていたが、FRBや米銀最大手JPモルガン・チェースから追加の与信枠を確保したと発表するなど流動性への対応も進んでいる。

 リーマンショック時のようなパニック的な動きは回避できると期待されている。ただ、今回のSVB破綻の原因のひとつにFRBによる急速な利上げを受けた保有債券の値下がりがあり、3月FOMCでの0.5%利上げは難しいとの見方が急速に広がっている。3月FOMCでの金利据え置き予想もドル売りにつながっている。

 今後の株式や債券市場やSVB救済の進展度合いによっては、為替市場が大きく動く可能性がある。

 米国の大幅利上げ観測が後退したため、流れはドル安方向とみられ、132円台に向けてドルが下落しそうだ。ただ、今後発表される米消費者物価指数(CPI)や小売売上高のデータ次第で流れが大きく変化する可能性にも注意したい。

用語の解説

半期議会証言 FRB議長が半年に一度、上下両院で経済情勢や金融政策運営について証言する。1978年に成立した「完全雇用均衡成長法」(ハンフリー・ホーキンス法)に基づき、FRBは半年に一度議会に向けた報告書を作成し、FRB議長が報告書の内容を議会へ証言することが義務付けられた。同法律は失効しているが、慣習として議会証言は続いている。
シリコンバレーバンクシリコンバレーバンクは、SVBフィナンシャルの傘下にある商業銀行。設立は1983年。本社は米カリフォルニア州サクラメント。昨年末の総資産額は約2090億ドル、預金規模は約1754億ドル。IT企業などのスタートアップ投資やスタートアップ投資を行うベンチャーキャピタルへの融資を事業の中心としてきた。2008年にイスラエル、12年に中国で合弁会社をそれぞれ設立し、グローバルにIT企業向け金融を展開していた。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(2月)
3月14日21:30
☆☆☆
 米国のインフレ目標の対象は個人消費支出(PCE)デフレータだが、同指標より発表が約2週間早く傾向も似ている消費者物価指数(CPI)に市場参加者が関心を寄せる傾向がある。特に今回は2月PCEデフレータの発表が3月31日と、FOMCの1週間以上後のため、最新の物価状況を示す指標としてCPIが重要視されるとの思惑がある。前回1月分は市場予想を上回る伸びとなり、3月の米FOMCでの0.5%利上げ観測を補強した。その後1月PCEデフレータがCPI以上に物価の伸びを示したことで、0.5%利上げ観測が市場の見方の大勢となる場面があった。しかし、先週末に発表された米雇用統計で、失業率の悪化や平均時給の伸び鈍化が確認されたことで利上げ観測がやや落ち着いたほか、米シリコンバレーバンクの破綻から大幅利上げは難しいとの思惑が広がり、週明けは0.25%利上げ見通しが大勢となっている。一部で金利据え置きの観測もある。米CPIが強く出た場合、金利据え置きは難しいとの見方からドル高となる可能性がある。弱い伸びとなった場合は、金利据え置き期待から1ドル=130円に向けたドル売り円買いが意識されるだろう。
米小売売上高(2月)
3月15日21:30
☆☆☆
 2月15日に発表された1月の米小売売上高は前月比+3.0%と12月の-1.1%から急速に改善し、市場予想の+2.0%も上回った。変動の激しい自動車を除いたコア部分も前月比+2.3%と強い結果だった。前日の14日に発表された1月の米消費者物価指数の上昇率が市場予想を超えたこともあり、米小売売上高の発表後はドルが上昇した。
 今回は前月比+0.2%、自動車を除くコアが前月比-0.1%とやや低調な数字が見込まれている。2月の新車販売の大幅な減少が全体を押し下げそうだ。家具や衣料なども2月の販売は低調だったとみられ、全体に弱めの数字が見込まれている。市場予想通りさえない伸び率にとどまった場合、1ユーロ=1.08ドル台に向けたドル高調整が予想される。
欧州中央銀行(ECB)理事会結果発表
3月16日22:15
☆☆☆
 欧州中央銀行(ECB)は2月2日の定例理事会で2会合連続となる0.5%利上げを決めた。声明文が3月の0.5%利上げ見通しを示したことに加え、複数のECB関係者が0.5%利上げを支持する姿勢を示している。ただ、米国の利上げ観測が急速に後退する中、ECBがタカ派姿勢をどこまで維持できるのかが注目される。声明などが今後の利上げ幅縮小を示唆すると、1ユーロ=1.05ドルに向けたドル高ユーロ安が予想される。

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