2023年03月20日号

(2023年03月13日~2023年03月17日)

先週の為替相場

金融不安へ警戒続く

 先週(3月13-17日)は、金融不安を背景に不安定な相場だった。10日に米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)が、12日にシグネチャーバンクがそれぞれ経営破綻した。その後、スイスの金融大手クレディ・スイス(用語説明1)の経営状態が不安視され、市場の先行き不透明感が強まった。

 SVB破綻を受けたドル売り円買いが週明け以降も続いた。東京市場の週明け13日朝(現地時間12日)、SVBとシグネチャーバンクの預金を全額保護する方針を米金融当局が発表すると135円台にドルが反発したが市場の警戒感は解消されず、ドル安円高基調に戻った。米金融機関が21、22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送り観測を打ち出したこともドル売りにつながった。SVB・シグネチャーバンクに次ぐ要警戒先と市場で目される米ファーストリパブリックバンクの株価急落も警戒感を増幅した。

 スイス金融機関大手クレディ・スイス・グループが14日、財務諸表の報告手続きに「重大な弱点」があったと発表したことも不安材料となった。

 もっとも、米金融当局の預金保護に向けた動きは素早く、13日の132円20銭台から15日の135円10銭台まで3円弱のドル高円安となった。

 しかし、15日の海外市場でリスク回避の動きが再び強まった。クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル銀行の会長が「追加の流動性支援の要請があっても、これ以上の支援を行うことは絶対にない」と発言したことなどがきっかけとなった。クレディ・スイス株は15日の市場で一時25%安となり、上場来安値を更新した。安全資産への資金逃避による米国債やドイツ国債などの価格上昇(利回り低下)やリスク回避の円買いが見られ、1ドル=132円20銭台へドル安円高が進み、1ユーロ=145円近くから139円50銭前後のユーロ安円高となった。スイスとの距離の近さもあってユーロは対ドルでも下落し、15日東京市場の1ユーロ=1.0760ドル前後から1.0520ドル前後までユーロ安ドル高となった。

 クレディ・スイスがスイス国立銀行(中央銀行)から最大500億フラン(約7兆1000億円)の借り入れ計画を発表したことや、金融不安による利上げ幅縮小観測を覆して欧州中央銀行(ECB)理事会がこれまでのコミット通り0.5%利上げを決定したため、いったんユーロ高となった。また対円でのユーロ買いもあってドルの対円レートもしっかりとなる場面があった。

 JPモルガンやシティグループといった米大手11銀行が16日、米ファーストリパブリックバンクの支援方針を示すとリスク警戒の動きがいったん後退したが、週末にかけてリスク警戒の動きが再び広がった。ファーストリパブリックバンクの株価が軟調に推移するなど市場の警戒感が強い中、一時131円50銭台までドル安円高となり、131円台後半で先週の取引を終えた。

今週の見通し

 スイス当局が主導し、同国金融大手UBSは約300億フラン(約4300億円)でクレディ・スイスの買収を決定した。スイス当局はこの買収を受けて流動性支援などの姿勢を示し、懸念解消に動いている。ただ、買収額はクレディ・スイスの純資産額に全く届いていないとみられる。クレディ・スイスの発行したAT1債(用語説明2)約160億スイスフラン(約2.3兆円)相当が無価値となったことなどかなり強引な買収となっており、問題の根の深さを市場に印象付けるとともに、他の金融機関への影響についても不透明さを残している。

 米国金融機関の経営状態へ不安感も根強く、今週も先週同様に投資資金の安全資産への逃避が強まる中で、米国やドイツの国債などへの資金流入が強まり、ドルやユーロの利回り低下が予想される。リスク回避の円買いで1ドル=130円割れ強く意識する展開が予想され、ユーロも対円で下落しそうだ。リスク警戒感の強まりから敬遠されやすい新興国通貨売りも予想され、円の独歩高となる可能性がある。

用語の解説

クレディ・スイス クレディ・スイス(Credit Suisse Group AG)は1856年に設立されたスイスを代表する金融機関の一つ。本店はチューリッヒ。1978年に米大手投資銀行ファーストボストンを買収したこともあり、グローバルな投資銀行業務にも力を入れている。日本では1977年に東京支店を設置している。
AT1債 バーゼル規制に基づく銀行の中核的な資本(Tier1)のうち、普通株式等Tier1(Common Equity Tier 1:CET1)に含まれないその他Tier1(Additional Tier1)資本を満たすための債券。実質破綻時の損失吸収条項に加え、CET1比率が一定以下になった場合に元本が削減される仕組みをとることで、実質破綻前に損失を吸収する仕組みを持つ。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月23日03:00
☆☆☆
 21、22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利は現行の4.50-4.75%から4.75-5.00%へ0.25%の利上げ見通しが一時広がっていたが、直前の予想は「据え置き」と「0.25%利上げ」が拮抗している。
 1月の米個人消費支出(PCE)デフレータ前年比が総合、コアともに12月を上回り、米国の物価上昇ペースの減速が一服したことから、一時は0.5%利上げ予想が大勢だった。FOMCメンバーも大幅利上げ姿勢を支持し、特にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が7日の上院銀行委員会の議会証言で「利上げペースを加速する用意がある」と発言したため、0.5%利上げをほぼ織り込む場面が3月第2週までに見られた。しかし、10日の米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)破綻で金融システム不安が広がり、大幅利上げ観測は急速に後退。14日に金融機関大手クレディ・スイス株が急落し、金融システム不安が欧州に飛び火したことで利上げ観測は一段と後退し、金利据え置き観測が大勢となる場面があった。
 ECBは16日の理事会で、従来のコミット通り0.5%の利上げを決定すると、FOMCでの0.25%利上げ観測が再び強まり、米金利先物は17日時点で85%前後の割合で0.25%利上げを織り込んだ。20日時点では金利据え置きと0.25%利上げの見通しがほぼ拮抗している。見通しが分かれているため、どちらに決まった場合でも相場に大きく影響しそうだ。今後の金融政策についてはかなり慎重な姿勢が見込まれ、1ドル=130円割れに向けてドル売りが強まるだろう。
スイス中銀政策金利
3月23日17:30
☆☆☆
 スイス国立銀行(中央銀行)は前回に続いて政策金利を0.5%引き上げる見込み。6日に発表された2月のスイス消費者物価指数(CPI)は前年比+3.4%と、1月の+3.3%から+3.1%に縮小するとの市場予想を覆してインフレが加速したため、大幅利上げがほぼ確実視されている。ただ、直前になってクレディ・スイスの経営難が警戒感を強めたため、大幅利上げは困難だとの見方もある。今回は予想通り0.5%利上げを実施した場合でも、今後の慎重姿勢が強調されるとスイスフランが売られ、1スイス=130円割れが意識されそうだ。
イングランド銀行政策金利
3月23日21:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)の金融政策委員会(MPC)の結果が23日公表される。政策金利は0.25%利上げが見込まれている。前日22日に2月の英消費者物価指数(CPI)が発表される。前回1月分は前年比+10.1%と2けたの物価上昇だった。1月の英小売売上高や鉱工業生産の弱さなどから英景気の減速が懸念されるが、物価高騰から英中銀は利上げを続けると予想されている。注目は声明と投票の内訳。6対3での0.25%利上げが見込まれているが、予想より現状維持が強くなった場合、今後の利上げ一時休止観測から1ポンド=157円台に向けたポンド安が予想される。

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