2023年03月27日号

(2023年03月20日~2023年03月24日)

先週の為替相場

不安定な展開続く

 先週(3月20-24日)は、10日に起きた米商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)の破綻をきっかけとした金融不安を背景に不安定な展開が続いた。

 経営が不安視されていたスイス金融大手クレディ・スイスの同国首位のUBSによる買収がスイス金融当局主導で19日に決定。日本時間20日朝には、日、米、欧州、英、カナダ、スイスの6つの中央銀行が協調してドルスワップ協定(用語説明1)に基づくドルの流動性供給強化を発表した。しかし、市場の警戒感は根強く、20日に1ドル=130円50銭台と2月10日以来のドル安円高となった。

 その後はドルはいったん反発。クレディ・スイスの無秩序な破綻や米地銀の連鎖倒産といった最悪の事態に進展する可能性は低いとの見方から、リスク警戒で急伸してきた円に調整が入った。

 22日発表された2月の英消費者物価指数(CPI)(用語説明2)は1月の前年比+10.1%から減速するとの市場予想に反して+10.4%と加速。対円でのポンド高がユーロやドルの対円レートを押し上げる形で133円台の円安に動いた。

 22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表以降はドルが下落した。FOMCは市場予想通り0.25%の利上げを決定。FOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、2023年末時点での政策金利見通しの中央値が前回12月と同じ5.00-5.25%となった。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見し、「年内利下げは見込んでいない」「想定より高い水準への利上げが必要であれば実施する」など従来からの強気姿勢を維持した。しかし、パウエル議長が利上げ停止の検討を認めたことや、12月想定より物価高が進む中で2023年末の政策金利見通しを上方修正しなかったことを材料にドルが売られた。

 週末にかけて1ドル=129円60銭台と2月3日以来のドル安円高となった。UBSによる買収決定に際してクレディ・スイス発行のAT1債が無価値とされたことを嫌気して他の金融機関が発行したAT1債に売りが広がって市場が混乱。さらに劣後債の早期償還を発表したドイツ銀行株が20日に一時14%安と急落し、リスク回避の円買いが進んだ。

 ドルは安値から反発して130円台後半で先週の取引を終えるなど、週末まで荒っぽい値動きが続いた。

今週の見通し

 SVB破綻を契機とした金融不安への当局の積極的な対応もあり、リーマンショック時のような混乱は避けられるとの見方が広がっている。しかし、各国の利上げ観測は大幅に後退している。特に米国の利上げ観測の後退が著しく、ターミナルレート(政策金利の最終的な到達水準)の見通しはSVB破綻前の5.50-5.75%から低下し、現行の4.75-5.00%での利上げ打ち止め観測が大勢となった。パウエルFRB議長は22日の記者会見で否定したが、市場は7月利下げ開始の織り込みを進めている。

 欧州中央銀行(ECB)はあと1回で利上げ打ち止めが予想され、英イングランド銀行(中央銀行)は現行金利での利上げ打ち止めかあと1回の追加利上げかで市場の見方が分かれている。3月初めごろまでの世界的な金融引き締めムードは急速に後退した。日銀は3月初め時点で金融緩和を続ける姿勢を維持していたため、状況の変化の少ない日本円が買われやすく、ユーロを筆頭に対ドルなどで円高が見込まれる。

 金融システム不安がくすぶる中、円買いが入りやすい地合いもあって、ドルやユーロなど他通貨は対円での上値が抑えられそうだ。ただ、先週の129円台トライなどはやや行き過ぎの感がある。大幅な状況の変化がなければパニック的な円買いが入る局面ではなく、1ドル=130~132円を中心にドルは下方向を試す機会をうかがう展開となりそうだ。

用語の解説

ドルスワップ協定 ドルも含めた通貨スワップ協定(Currency Swap Agreement)は、各国中央銀行が自国通貨と相手国通貨を事前に設定したレートで融通し合うことを定めた協定のこと。各中央銀行が金融機関のドル需要に十分に対応できるようになり、金融不安の軽減につながる。
英消費者物価指数(CPI) 英国家統計局(ONS)が発表する物価統計。2003年より同指標の前年比+2%を英国のインフレ目標としている(1992年10月に同政策を始めた際の対象指標はモーゲージ利払いを除いた小売物価指数)。CPIの目標との乖離(かいり)が1%を超えた場合、英中銀は乖離の理由や対応策、目標回帰までの予想期間などをまとめた書簡を財務相に提出する義務がある。

今週の注目指標

米上院銀行委員会公聴会
3月28日23:00
☆☆☆
10日の米シリコンバレーバンク(SVB)破綻以降広がった金融システム不安は預金の全額保護など米当局による積極的な対応である程度落ち着いてきたが、市場の警戒感はくすぶっている。今回の公聴会は最近の銀行破綻と連邦規制当局の対応をテーマとして、28日に上院銀行委員会で、29日に下院金融サービス委員会でそれぞれ開かれ、追加開催の可能性もある。28日の公聴会には米連邦預金保険公社(FDIC)のグルーエンバーグ会長、米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融監督担当)、米財務省のリャン国内金融担当次官の証言が予定されている。
 今回の公聴会で当局の積極的な対応が確認され、警戒感が後退すると、1ドル=132円台に向けたドル高円安が予想される。
ドイツ消費者物価指数(3月)
3月30日21:00
☆☆☆
 前回2月のドイツ消費者物価指数(EU基準HICP)は前年比+9.3%と、伸び率は1月の+9.2%を上回り4カ月ぶりに加速した。ECBの積極的な金融引き締め姿勢を受けて景気鈍化懸念が広がる中、幅広い項目で物価の上昇傾向が強まり、市場の警戒感を誘った。今回の市場予想は前年比+7.5%と大幅な減速が見込まれている。クレディ・スイスの経営問題から金融システム不安が強まり、追加利上げには慎重な見方が広がっている。物価高騰下で引き締め姿勢を緩めると物価上昇が加速する恐れがあるため、市場予想通り伸びが鈍化するかが注目される。全ドイツの統計に先行して主要州の数字が発表される。前回はドイツ連邦州で人口が最も多く、経済的に重要な位置を占めるノルトライン・ヴェストファーレン州で物価の上昇が加速し、市場は全体の数字の発表前にユーロ高で反応した。今回も同じ日の14時半に発表される同州の結果に注意したい。
米個人消費支出(PCE)デフレータ(2月)
3月31日21:30
☆☆☆
 市場予想は前年比+5.1%と1月の+5.4%から減速が見込まれる。一方、食品とエネルギーを除いたコア指数は1月と同水準の前年比+4.7%の見込み。2月の消費者物価指数(CPI)で医療サービスは前年比マイナスだった。PCEデフレータは医療費の構成比がCPIよりかなり大きく、市場予想よりも伸び率が縮小する可能性がある。この場合、ドル売りが急速に強まり、1ドル=129円割れが視野に入りそうだ。

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