2023年04月10日号

(2023年04月03日~2023年04月07日)

先週の為替相場

週半ばにかけてドル売り、その後買い戻し

 ドルは先週(4月3-7日)半ばにかけて対円で下落した後、買い戻された。

 週明け3日はOPECプラス(用語説明1)による予想外の減産発表を受けて原油先物が急騰。インフレ懸念から米国の追加利上げ観測が強まり、ドルはほぼ全面高となった。先々週末終値の1ドル=132円70銭台から133円70銭台まで約1円のドル高円安となったほか、1ユーロ=1.0840ドル台から1.0780ドル台へ、1ポンド=1.2340ドル前後から1.2270ドル台へそれぞれドルが上昇した。

 同日発表された3月の米ISM製造業景気指数が市場予想や前回値を下回ると、一転してドル売りが強まった。市場が重要視する新規受注や雇用も低下し、全体の数字に加えて中身も弱いと受け止められた。

 4日に発表された2月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は993.1万件と2021年5月以来の1000万件割れとなり、ISM製造業景気指数に続いて市場予想と前回値を大幅に下回った。失業者1人に対する求職は1.67件と前回の1.86件から低下し、労働需給が緩和に向かっているとの印象を与えた。ただ、新型コロナ流行前の2020年1月は1.24件であり、1.67件は決して弱い数字ではない。

 この結果を受けて次回5月2、3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ観測は後退。ドル売りが強まって133円前後から131円台後半のドル安円高となった。

 5日発表された3月の米ADP雇用者数と米ISM非製造業景気指数も市場予想と前回値を下回ったためドル売りが勢いを増し、130円60銭台を付けた。

 その後はドル買いに転じた。7日金曜日はグッドフライデーで世界の多くの市場が休場。米国では国の祝日ではないため、米雇用統計は発表されるが、株式・商品が休場、債券は短縮取引だった。10日月曜日もイースターマンデーで欧州などが休場となり、取引参加者が極端に減ることからポジション調整のドル買いが入った。

 取引参加者が少ない中で発表された3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)がほぼ市場予想通りの前月比+23.6万人。失業率は市場予想と2月の3.6%から3.5%に低下した。

 失業率の予想外の低下などを好感し、132円台を回復するドル高円安で先週の取引を終えた。

今週の見通し

 4月に入って米主要指標の弱い結果が続き、次回5月FOMCでの金利据え置き見通しが一時大勢となった。しかし、3月の米雇用統計が比較的しっかりとした結果だったため、次回FOMCでの追加利上げ見通しが再び強まった。

 3月のシリコンバレー銀行(SVB)破綻後の金融不安は沈静化しており、リスク選好の動きが期待される。

 ただ、12日発表される3月の米消費者物価指数(CPI)次第で流れが大きく変わる可能性がある。2月のCPIは1月と比べて伸び率が小幅に縮小。その後発表された2月のPCE(個人消費支出)デフレータが市場予想を下回るなど、ここにきて物価の上昇ペースが鈍っている。

 今回は市場予想が前年比+5.1%と2月の+6.0%から急減速が見込まれているが、食品とエネルギーを除くコアの前年比は+5.6%と2月の+5.5%から上昇が加速する見込み。

 予想を超えてコアの伸びが強まると、5月の追加利上げ観測が高まるとともに早期利下げ開始観測が後退し、1ドル=135円に向けてドルが買われそうだ。利下げについては、3月のFOMC後の記者会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が年内の利下げ開始を改めて否定したにも関わらず、市場は7月のFOMCでの利下げ開始と年内複数回の利下げを予想している。

 一方、コアの伸びが前回を下回れば早期利下げ開始観測を支える形となり、130円台に向けたドル売りが予想される。12日発表の米CPI次第で今後の流れが大きく異なりそうだ。

用語の解説

OPECプラス サウジアラビア、イラン、イラクなど中東を中心に12カ国が加盟するOPEC(石油輸出国機構)にロシア、メキシコなどOPEC非加盟産油国で構成。協調して石油需給を調整し、価格の安定を目指す。2016年12月設立。
イースターマンデー キリスト教でのイースター(復活祭)翌日の月曜日。イースターはキリスト教の重要な宗教行事であり、カソリックではイースターから翌日曜日までの8日間をイースターオクターブとして重要な祝祭期間と定めている。中世までこの8日間を長期の祝日としていたこともあり、その名残りもあってイースター翌日のイースターマンデーは世界の多くの国で祝日となっている。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(3月)
4月12日21:30
☆☆☆
 前回2月の米消費者物価指数は前年比+6.0%、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+5.5%だった。ともに1月から小幅に鈍化したが、市場予想と一致しており、発表後の相場への影響は限定的だった。
 今回の市場予想は前年比+5.1%。エネルギー価格、特にガソリン価格の伸び鈍化から前回から上昇ペースが減速する見込み。住居費や航空運賃の高騰が続くと予想されていることから、コア部分は前回より強い伸びが見込まれる。前回全体を押し下げた中古車価格は前回ほどの大きなマイナスは見込まれていない。
 こうした状況からコアの伸びが市場予想を超えた場合、5月のFOMCでの利上げ継続観測が一段と強まるだろう。短期的に1ドル=133円台後半、中期的には135円超えを視野に入れた動きとなりそうだ。
米FOMC議事要旨(3月21、22日開催分)
4月13日03:00
☆☆☆
 3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。3月初めごろまで0.5%利上げが想定されていたが、SVB破綻などによる金融不安もあり市場では一時据え置き見通しが大勢になった。その後金融不安は落ち着いたが、積極的な利上げの継続は難しいとの見方が広がり、0.25%利上げで市場見通しが一致。FOMCは全会一致で0.25%利上げを決めた。声明は追加的な金融引き締めの可能性に言及した。もっとも、1月FOMCの声明は目標レンジの継続的な引き上げが適切だとして追加利上げの必要性を強調しており、3月FOMCでは利上げ姿勢が後退した。FOMCメンバーによる2023年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)の中央値は12月と同じ5.125%だった。
 パウエル議長は会見で利上げ停止の可能性を議論したことを認めた。追加利上げの可能性にも言及したが、早期の利上げ終了を市場に印象付けた。
 議事要旨では利上げ停止についてどのような議論が出ていたのかが注目される。また、パウエル議長は記者会見で年内の利下げ開始に否定的な姿勢を改めて示したが、市場は7月FOMCでの利下げ開始を織り込んでいる。
 同日発表の米CPIの伸び率が市場予想を下回ったところに議事要旨でFOMCによる慎重な姿勢が確認されて利下げ開始観測が強まると、1ドル=130円台を目指してドル安円高が進む可能性がある。
米小売売上高(3月)
4月14日21:30
☆☆☆
 前回2月は市場予想通りの前月比-0.4%。1月に+3.2%と急伸した分の反動や自動車部門の落ち込みが全体を押し下げる形となった。今回も前月比-0.4%と弱めの数字が予想される。自動車を除くコアは前回の-0.1%から-0.4%と落ち込みが厳しくなる見込み。SVB破綻を受けて一時広がった金融不安の影響が表れそうだ。ただ、悪化が予想された3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が2月を上回る強さを示したことで、消費者マインドの底堅さが意識されている。小売売上高と密接に関係する米雇用統計の強さもあり、小売売上高は市場予想ほど落ち込まない可能性がある。予想を覆して前月比で売上高が増加すると、1ドル=134円台に向けたドル高円安となりそうだ。

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