2023年04月17日号

(2023年04月10日~2023年04月14日)

先週の為替相場

ドル安と円安

 先週(4月10-14日)は1ドル=134円台とドルが対円で上昇した。一方、1ユーロ=1.1070ドル台と昨年4月1日以来のユーロ高ドル安を付けるなど対円以外でドルは下落した。ドル以外の通貨に対する円安も進み、昨年11月以来の1ユーロ=147円台のユーロ高円安となった。

 10日はイースターマンデーでオセアニア、香港、欧州、英国が休場だった。本邦輸入企業の実需絡みの注文とみられるドル買いに支えられ、取引参加者の少ない東京市場朝の131円80銭台から午後に132円80銭台までドルが上昇した。前日に就任した日銀の植田和男新総裁が記者会見で、長短金利操作とマイナス金利を柱とする現行の金融政策を継続する必要性を強調したことを材料に円が売られ、133円台後半までドルが大幅に上昇した。

 その後は133円台を中心に推移した。12日に日経平均株価の上昇を好感したリスク選好のドル買い円売りに134円台までドルが買い進まれたが、すぐに利益確定の売りが出て133円台に押し戻された。

 12日発表された3月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+5.0%と市場予想を下回った。もっとも、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は市場予想通りの前年比+5.6%と、2月の水準を超えた。この結果を受けて市場では次回5月2、3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利上げ終了予想と年内の利下げ開始観測が広がり、ドルが売られた。

 13日発表された3月の米生産者物価指数(PPI)は総合、コアともに市場予想と前回値を下回ったため、132円00銭近くまでドル売りが続いた。

 

 その後は14日の海外市場でドルが133円台後半まで上昇した。金融引き締めに積極的な「タカ派」で知られる米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が引き締めの継続や市場予想より長期の引き締め維持に言及すると、市場はドル買いで反応した。同日発表された3月の米小売売上高(用語説明1)で自動車、ガソリン、建材、外食を除いたコア売上高が市場予想ほど低下しなかったことやミシガン大学消費者信頼感調査(用語説明2)で1年先のインフレ見通しが4.6%と市場予想(3.7%)や前回値(3.6%)を大幅に上回ったこともドル高につながった。

 一方、10日の海外市場でのドル高に1ユーロ=1.0830ドル台までユーロが下落した後、14日に1.1070ドル台を付けるなどユーロが対ドルで上昇した。1.10ドルの節目を13日の市場で明確に超えたことで、ユーロ買いに勢いが出た。その後はドル高円安もあり、1.10ドル割れにユーロが軟化して先週の取引を終えた。また、日経平均が14日までで6営業日続伸するなどリスク選好が回復し、ユーロなど外貨買い円売りにつながった。

今週の見通し

 5月2、3日のFOMCでの利上げ観測がドル高につながっている。月初に発表された米ISM景気指数や米雇用動態調査(JOLTS)が低調だったため、金利据え置き予想が一時大勢となったが、その後発表された米雇用統計や消費者物価指数などがほぼ市場予想通りの結果に落ち着き、利上げ観測が盛り返した。インフレ懸念が根強い中で追加利上げが必要だとの見方が広がっており、5月の追加利上げが織り込まれつつある。

 植田日銀新総裁が金融緩和政策を続ける姿勢を示す一方、米国の追加利上げ観測が再び強まっており、日米の金利差を狙った取引によるドル高円安の流れはまだ続くと見られる。

 最速で7月25、26日のFOMCでの利下げ開始が予想される中、3月の米シリコンバレーバンク(SVB)破綻前に付けた138円近くまでドル高はやや厳しそうだが、節目の135円を超えて136円近くまでのドル上昇は十分に考えられる。

 先週の取引で1ユーロ=1.1070ドル台までユーロ高ドル安に動いた後、週末のドル高で1.09ドル台へユーロが軟化したが、対円に比べると対ユーロではドル高の勢いは弱い。欧州中央銀行(ECB)による追加利上げ観測も広がっており、金融緩和を継続する姿勢を示す日銀との違いがドルの対ユーロ、対円の値動きの違いを生んでいる。

 3月半ばからのユーロ高ドル安の流れが短期的なユーロ安を交えながら続きそうだ。対円では世界的なリスク選好を支えに1ユーロ=150円を中期的な上値目標としたユーロ高基調が予想される。

用語の解説

小売売上高 米商務省センサス局が米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を調査、集計した指標。速報時点で約5000社が対象。米国はGDPに占める個人消費の割合が約7割と他の先進国より高い。日本は2022年第4四半期で約55%。
ミシガン大学消費者信頼感調査 ミシガン大学のサーベイ・リサーチセンターが実施する消費者のマインド調査。結果を指数化した消費者信頼感指数と同指数の内訳として現況指数、将来の期待指数、1年後と5-10年後のインフレ予想が同時に公表される。指数は1964年時点を100として算出。速報値時点で420件の回答を目標とし、確報値は約600件の回答を反映したものとなる。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI)(3月)
4月19日15:00
☆☆☆
 前回2月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年比+10.4%と1月の同10.1%を上回り、2022年10月以来4カ月ぶりの物価上昇加速となった。悪天候による野菜不足などの影響で食品・非アルコール飲料が前年比+18.0%と大幅に伸び、全体を押し上げた。
 今回は+9.8%と物価上昇がやや落ち着く見込み。同時に発表される生産者物価指数(PPI)の仕入れ部門の予想が前年比+7.0%と前回の2月の+12.7%から急減速が見込まれ、英国の物価上昇はある程度の落ち着きが予想されている。ただ水準は依然としてかなり高く、インフレ目標であるCPIの前年比+2.0%はかなり遠いため、市場予想に沿った物価上昇ペースの鈍化が確認されても英国の追加利上げ観測は継続しそうだ。前回と同様に物価上昇率が市場予想を超えると、利上げ局面の長期化観測が広がり、先週上値を抑えた1ポンド=1.2550ドルを超えるポンド高ドル安が予想される。
ユーロ圏PMI(4月・速報値)
4月21日17:00
☆☆☆
 21日に4月のユーロ圏全体とユーロ圏主要国のPMI(購買担当者景気指数)が発表される。ECBは次回5月4日の理事会での追加利上げが予想されているが、これまでの利上げによる景気減速懸念などから米国と同様に利上げ打ち止めが近いとの見方があり、PMIはECBの金融政策に影響する景気動向を読む手掛かりとなる。
 21日16時半にドイツPMIが発表される。前回3月の製造業PMIが44.7と2月の46.3から低下。景気の拡大・縮小の分かれ目とされる50を大きく下回った。ドイツ製造業PMIは昨年7月以来50割れが続いている。サービス業PMIは53.9と3カ月連続の50超えだった。
 17時に発表されるユーロ圏PMIでも3月の製造業PMIは47.3と低調だった。こちらも昨年7月以来の50割れが続いている。サービス業PMIは55.0と好結果だった。
 今回の予想はドイツ製造業PMIが45.6、ドイツサービス業PMIが53.2。ユーロ圏製造業PMIが48.0,サービス業PMIは54.5。製造業はともに小幅改善ながら50割れが継続する見通し。サービス業は好調な水準を維持する見込みで、サービス業がけん引する形でユーロ圏景気が支えられているとの印象だ。製造業の弱さはサプライチェーン問題の落ち着きによる入庫遅延や仕入れ価格改善による部分があり、数字ほどの弱さではないとの見方がある。それだけに、予想前後の結果が出てくると、次回のECB理事会での追加利上げ観測を強め、先週の高値1ユーロ=1.1070ドル台を意識する展開となりそうだ。
米PMI(4月・速報値)
4月21日22:45
☆☆☆
 前回3月の米PMIは製造業が49.2と2月の47.3から改善した。ユーロ圏と同様にサプライチェーン問題改善を受けた原材料コスト低下による投入コスト指数の低下や入庫遅延指数の低下の影響を考えると、50割れでもそれほど弱い数字とは受け止められなかった。サービス業は52.6、全体を合わせたコンポジット(総合)指数は52.3と強めの結果だった。サービス業の伸びは需要拡大を反映したものとの印象を与えた。
 今回は製造業が49.0、サービス業が51.5ととも小幅の鈍化が予想されている。3月に発生したSVBなど複数の米国地方銀行の破綻の影響も気になるところで、予想を下回れば、5月の利上げ観測が後退し、132円台に向けてドルが売られる可能性がある。

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