2023年04月24日号

(2023年04月17日~2023年04月21日)

先週の為替相場

米、欧、英に追加利上げ観測

 先週(4月17-21日)半ばにかけてドル買い円売りが強まり、19日には3月15日以来の1ドル=135円台を付けた。その後は対ユーロでのドル売りなどで133円50銭台まで調整したが、21日発表された4月の米PMI(購買担当者景気指数)速報値の上昇を受けて134円台を回復して先週の取引を終えた。

 

 12日発表の米消費者物価指数(CPI・3月)と13日発表の米生産者物価指数(PPI・3月)がともに下振れしたことを受けて、13日に132円台までドル安円高が進行。14日はウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事(用語説明1)による金融引き締め継続に向けた「タカ派」発言などをきっかけとして、海外市場で133円台後半までドルが反発し、ドル安一服で先週の取引が始まった。

 5月2、3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利上げを織り込む形で17日に134円台後半へドルが上昇。その後は5月利上げの織り込みに加え、6月13、14日のFOMCでの追加利上げ観測が広がる中、19日の海外市場でドルは135円台に乗せた。

 週後半はいったんドル安円高となった。20日発表の米フィラデルフィア連銀景気指数(3月)(用語説明2)や米中古住宅販売件数(3月)が市場予想を下回り、ドルが売られた。21日発表された日本の消費者物価指数(生鮮・エネルギー除くコアコア・3月)が前年比+3.8%と41年3カ月ぶりの高水準だったことで、日銀が金融緩和姿勢を修正するとの思惑から円が買われた。

 1ドル=133円50銭台までドルが軟化した後、21日発表の米PMI(4月速報値)が製造業、サービス業ともに低下するとの予想を覆して上昇したことを受けて、134円台半ば近くまでドルが急伸し、134円台を維持して先週の取引を終えた。

 

 ユーロの対ドル相場は先週初め、米国の追加利上げ観測などを受けたドル買いが優勢となり、1ユーロ=1.0900ドル台を付けた。もっとも1.09ドル台を維持したことでユーロが買い戻され、その後は1.09ドル台で推移した。

 週後半のドル安円高局面で1.0990ドル台までユーロが上昇。米PMI発表後に1.0940ドル台までユーロは軟化したが、その後1.0990ドル台を回復するなど底堅かった。一方、1.10ドル超えでのユーロ買いに慎重な姿勢がうかがわれた。

 ユーロの対円相場は対ドルでのユーロの堅調もあって4月6日の1ユーロ=142円50銭台からのユーロ高基調が継続し、週後半に147円80銭台を付けた。ドル高円安の調整からいったん146円40銭近くまでユーロは下落したが、ドル買い円売りが再び強まると、1ユーロ=147円台後半まで買い戻されて週の取引を終えた。

今週の見通し

 米国、欧州、英国の追加利上げ観測の強さが当該国・地域の通貨を支えている。一方、9日に就任した植田和男日銀総裁は現行の金融緩和政策を当面維持する姿勢を示し、円安につながっている。予想される金融政策の方向が米欧や英国の中央銀行と日銀で異なることが外貨買い円売りにつながっている。

 日銀は4月27、28日に植田新総裁下で初の金融政策決定会合を開く。市場は金融政策の現状維持を確実視するとともに、声明などでも従来姿勢の維持が予想される。ただ、前回3月まで金融政策決定会合の前に、長短金利操作(YCC)修正の思惑から海外勢を中心に円買いを入れており、今回も同様の動きに注意したい。日銀会合前に円高が進んでいれば、日銀声明や総裁記者会見で大方の予想通りに現状維持姿勢が確認されると円売りが出る可能性がある。

 節目の1ドル=135円に向けたドル高円安が見込まれるが、28日の日銀金融政策決定会合の結果判明までは円買いが一時的に強まる可能性が意識され、133円台前半のドル安円高に振れる可能性も十分にありそうだ。

 ユーロやポンドは対円に加えて対ドルでもしっかりとした値動き。欧州中央銀行(ECB)と英イングランド銀行(中央銀行)はともに物価高の継続から年内あと3回程度の政策金利引き上げが予想される。28日発表される3月の米PCE(個人消費支出)デフレータの結果などによって6月の追加利上げ観測が後退すれば、欧州と米国の金利差が縮小するとの見方からユーロやポンドが対ドルで上昇しそうだ。

用語の解説

ウォラーFRB理事 クリストファー・J・ウォラー(Christopher J. Waller)氏は米連邦準備制度理事会(FRB)理事。ノートルダム大学教授などを経て2009年からセントルイス地区連銀のエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントを務めた。2020年12月から現職。FRBメンバーの中で物価高対応に積極的なタカ派の代表格として知られる。
フィラデルフィア連銀景気指数 地区連邦銀行であるフィラデルフィア連銀が管轄区域(ペンシルベニア州の一部とニュージャージー、デラウェアの両州)の製造業の景況感や経済活動状況を指数化したもの。新規受注、在庫、出荷、支払い価格、雇用などの項目について、1カ月前との比較と半年後の予想を「増加または好転」「変わらず」「減少または悪化」から選択する形で回答を求める。プラスが好況、マイナスが不況となる。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
4月27・28日
☆☆☆
 植田総裁は4月10日の就任記者会見で、これまでの金融政策について「全体を総合的に評価して、今後どう歩むべきかという観点から点検や検証があってもいい」と述べた。日銀による2016年の「総括的な検証」と2021年の「点検」は、ともに約1月半かかった。今回の点検・検証はさらに長期間となる可能性が高く、今回の金融政策決定会合で何らかの評価や政策判断が確定するものではなさそうだ。ただ、点検・検証が今後の金融政策正常化観測を強め、ドル安円高が進むリスクを意識しておきたい。
 一方、植田総裁は就任会見で金融緩和政策を継続する姿勢を強調しており、マイナス金利と長短金利操作を組み合わせた現行政策の維持が予想される。
米第1四半期GDP速報値
4月27日21:30
☆☆☆
 米第1四半期GDP速報値の市場予想は3四半期連続のプラス圏となる前期比年率+2.0%。米FRBによる積極的な金融引き締めによる景気停滞が懸念されているが、堅調な雇用などが個人消費を支える形で米経済の底堅さを確認する結果が予想されている。
 前回発表の2022年第4四半期は前期比年率+2.6%だった。GDPの約7割を占める個人消費が+1.0%と低い伸びにとどまったほか、住宅投資が-25.1%と、第3四半期の-27.1%に続いて大幅に落ち込み、利上げの悪影響が懸念された。ただ、設備投資の確報値が+4.0%(速報値+0.7%)へ上方修正され、在庫投資とともにGDP全体を支えた。
 今回は個人消費の高い伸び(市場予想+4.0%)が全体を支えそうだ。ただ、住宅投資の減少が続いている上に連続利上げによる設備投資の落ち込みも懸念されている。前回は強く出た在庫投資は変動幅が大きいこともあり、今回発表される第1四半期GDP速報値は市場予想に届かない可能性がある。
 個人消費を支えに市場予想通りGDPの堅調な増加が確認されると、5月に続いて6月FOMCでも利上げが続くとの見方から1ドル=136円台に向けたドル高円安となりそうだ。GDP増加率が市場予想を下回れば5月の利上げ観測は続いても6月の利上げ観測は急速に後退し、5月FOMCを最後に利上げが打ち止めになるとの見方から132円台に向けてドル売り円買いが強まるだろう。
米PCEデフレータ(3月)
4月28日21:30
☆☆☆
 PCEデフレータと同系統の指標である米消費者物価指数(CPI)は12日に3月分が発表され、エネルギー価格の下落などから伸び率が市場予想以上に縮小した。13日発表された3月の米生産者物価指数(PPI)の伸びが市場予想を下回ったこともあり、PCEデフレータ次第では今後の利上げ打ち止め観測が強まる可能性がある。
 PCEデフレータの市場予想は前年比+4.1%(前回+5.0%)に減速し、コアPCEは前年比+4.5%と(前回+4.6%)と上昇ペースが鈍る見込み。ただ、FRBがインフレ目標とする2.0%はまだ遠く、予想を大幅に下回らない限り、5月の追加利上げ期待が継続するとみられる。ただ、弱めの数字が出た場合、このところ強まってきた6月の利上げ続行観測が後退し、132円台に向けたドル売りが予想される。

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